異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

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おかえりただいま※アユム視点

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 雨の中をエイシオさんと歩く。
 エイシオさんは『良かった。帰ろう』とだけ言って、俺の手をひいて先を歩く。
 暗い夜道を先導してくれるように少し先を歩いてるから、背中しか見えなくて……。
 でも、俺の右手を優しく握ってくれて温かい。

 こんなにびしょ濡れにさせて……エイシオさん、走り回って探してくれたんだ。
 ……とんでもない迷惑者だよな。

 呆れてしまってるよね。
 でもこんな優しく握ってくれる左手……いつだってエイシオさんは優しい。

「アユム……ごめんね。ラミリアと二人きりにさせて」

「えっ……そんな、楽しかったです」

 雨音のなかにエイシオさんの言葉が混ざる。
 楽しかったら、どうして飛び出したんだよ……って思うよね。

「色々と失礼なことを言ったんだと思う。あの子は夢だの野望だの……他人にもそれを求める癖があるんだ。誰しもが冒険者になりたいわけじゃない。誰もが派手に目立つことが好きなわけじゃない……そういうことがわからないんだ」

 生まれた時から美人でお金持ちで頭も良くて……そうなっても仕方ないよね。

「……それにしたって、俺は情けなさ過ぎるなって思いました」

 力なく半笑いで言っちゃう、情けない俺。

「アユムの何が情けない事がある!?」

「えっ」

 雨に濡れたエイシオさんが、酷く傷ついた顔をする。
 どうして、エイシオさん……そんな顔を。
 まだ家は遠いだろうけど、立ち止まって俺達は向かい合った。

 俺を見つめる真剣な瞳――。

「アユムは美味しい御飯を作れる」

「え」

「朝御飯も弁当も夕御飯も最高に美味しい。部屋もいつもピカピカで僕はすごく清らかな気持ちで毎日を過ごせるよ」

 エイシオさんは優しく微笑む。
 真っ暗で、びしょ濡れでもエイシオさんは綺麗だ。

「そ、それは……普通というか」

「普通じゃないよ。僕にはできない」

「す……すみません」

「謝ることはないよ……行こう」

 エイシオさんは、また歩き出す。
 手は握ったまま。

「美味しい野菜を作れるし、布団もシーツもいつもふんわりだ」

「エイシオさん……」

「お風呂もいつも気持ちいい。服もいつもいい香りだ」

 そんな風に思ってくれてただなんて……。

「アユムと話すと、すごく楽しいんだ。毎日が楽しい」

 俺もです。
 なんか、すごく泣けてきちゃった。
 こんな雨だもん。泣いてもバレないかな……。

 歩きながらエイシオさんは、コーヒーを淹れるのが上手だ。とか些細な日常のことを褒めてくれる。
 俺なんか、なんの役にも立てないって思ってたのに……。
 
「家でアユムが帰りを待ってくれてると思うと、僕はいつも頑張れる」

「は……はい、俺もエイシオさんが、か、帰ってくるって……ひくっ……思ったら……うれしくてっ」

 あぁ泣いてるのバレる。

「お、俺……エ、エイシオさんのっ邪魔なんじゃないかなって……ひくっ」

 バレちゃうって我慢しなきゃって思ったら逆に想いが溢れちゃった。

「邪魔!? 邪魔なわけがないよ……アユム、何もかも嫌になった僕を君が救ってくれたんだ」

 え……?
 エイシオさんが、何もかも嫌に……?

「あの日、僕は死んでもいいと森を彷徨ってたんだ」

「え!? そ、そんな」

「……あの日の僕を救ってくれた」

 転移して魔物に襲われてた俺を助けてくれたのは……エイシオさんなのに?

「救ってくれたのは、エイシオさんで……」

「心を救ってくれた」

「俺が……?」

「うん。だから僕の命は、アユム。君のためにあるんだ」
 
「エイシオさん」

 目の奥が、心臓がジリジリと痛むような切ないような……熱い。
 なんだろう、この気持ちは……。
 感情が追いつかないよ。
 
「さぁ僕達二人の家に着いたよ」

 静かに家に入ると、いつもの家の匂いがする。

「おかえり、アユム。ただいまアユム」
「おかえりなさい、エイシオさん……ただいまですエイシオさん……」
 
 エイシオさんはまた俺を抱き締めてくれた。
 エイシオさんの腕の中が、すごく安心する……。
 すがりつくように、俺もエイシオさんを抱き締めてしまう。

 男なのにごめんなさい。キモくて情けなくてごめんなさい。

 ザピクロスの腕輪が光り輝いて、炎のような温もりが俺達を包んでくれた。


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