家庭菜園物語

コンビニ

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42 豊作②

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★ガンジュ視点

「そうビビるなガンジュくん。八割くらいしか怒っていない」
「ウケる! さくらお姉様、それめっちゃ怒ってるやつじゃないですか」

 竜王様と和気藹々としているが、こっちは生きた心地がしない。
 悠め、口止めしていたのに……。

「悠には口止めしていたようだが、酒を飲ませたら口が滑らかになった。直接、君から説明を受けたとは明言しなかったが、君が如何に素晴らしい人物かと語っていて……ウザかったよ」
「申し訳ございません」
「流石はこの国でも“慈愛”とかの二つ名がある人物だな。人をたらし込むのも上手い」
「恐縮です」

 下手な回答をしたら、どうなるかわからんな。
 ヒガシ殿が竜王様に「喋るな」と注意されたのも頷ける。

「さくらお姉様は、何用でいらっしゃったんですか?」
「用がなければ来てはダメなのか?」
「用がなければ姿を現す方ではないじゃないですか」

 あの竜王様が、まともな会話をしている!

「そうだな。一つは、お前たちがあの実りをどう扱うか見たかった、というのもある」
「ほう……それで我々は合格ですか?」
「そこのガンジュの提案に救われた感はあるがな。二つ目の目的は、その男の人となりを見極めたいと思ったからだ」
「随分、悠という人物を気に入っているのですね」
「ふん、念のためだ。あそこには私以上に怖い姉様がいるからな。あの御仁に滞在を認められた人物なら、まぁ杞憂だったということだ」
「さくら姉様以上に怖いって……どんな人なんですか?」
「美しい黒猫殿だよ。それで熊くん、帝国に行くのであれば、これを持っていくといい」
「はい」

 さくら様がサカイに手紙を手渡す。紹介状だろうか。

「これで皇帝には会えるだろう。あいつも、そう長くはない。急いで行ってきなさい」
「わかりました。ありがとうございます」

 サカイが、許可を求めるように竜王様を見る——竜王様もそれに応えるように、ひとつ頷かれ、サカイは急いで会議室の外へと出ていく。

 出ていく間際に、俺の肩を「あとを頼むぞ」と言わんばかりに叩いて出ていった。勘弁してくれ。

「貴女が表舞台に出てくるとは、本当に意外ですよ。学校の件も」
「もう感知していたのか? お前と私の仲だ、数名であれば受け入れてもいいぞ」
「さくら姉様に教えを乞うことができるとは……私が行きたいところですね」

 ダメですよ竜王様!

「熊のいぬ間に、と思いましたが、そこの狼が許してくれそうにありません。妹と、そこの愚弟をお願いできますでしょうか」
「いいぞ。ちょうど建設に人手も欲しかったのだ。存分にこき使ってやろう」

 ヒガシ殿が口をぱくぱくとさせている。
 拒否権はない、頑張ってくれ。

「ありがとうございます。あとは帝国や王国はいいとして、問題は聖国ですが……あそこは我々の隣ではありますが、癖も強く。飛び抜けた力を持つ者もいますから、色々と厄介なんですよねー」
「ああ、頭がおかしい連中が多いからな。なんでも“神の啓示”があったとかで、【武神】が悠のいる森方面に動き出している。悠のことだ、なんらかのアクションは起きるだろうし、今回はそれ待ちでもいいだろう」
「巻き込まれ体質なんですか、その子は」
「まぁな。“嫁が欲しい”とか言ってたし、神とまた一悶着あったのではないか?」
「多様性の時代ですから、それもアリなんですかね?」

 たぶんではあるが、悠と神との間に大きな誤解が発生している気がする。

 だが【武神】といえば、聖国でも特級の資格を与えられた存在。
 かなりの武闘派と聞いている。
 人間では数少ない、竜王様とも良い勝負ができる人物ではないだろうか。

 そんな人物が悠のところに……杏殿も大福様もいらっしゃる、万が一は起きないだろうし、大丈夫か。

「今回の豊作の件を含めて、礼をしなければならん。彼の森には人を送りたいが、熊がいないのでトヨナカを出すわけにはいかなくなった。任せられる者はいるか?」

 エリザベスに任せたいところだが、俺が抜けるとなると、彼女がいないと仕事が回らない。
 アダメは騒がしい。ドナルは口数が少なく使者向きではないが、悠とは不思議と意思疎通ができていたので問題ないか。

「以前に同行していた者の一人に任せたいと考えています」
「竜王様、僕も同行してよろしいでしょうか?」
「ヒラカタかー。うーん」

 竜王様が、「こいつ大丈夫か?」みたいな目配せをしてくる。

 ヒラカタは料理全般、食材や生育にまで詳しく、畑仕事にも精通している。
 悠の力になるだろうか?
 しかしながら、性格が少し尖っている。うーむ、問題ないだろうか。

 サカイが残ってくれれば、俺が行くという選択肢もあったのだが。

「使者として礼を述べるのであれば、使者の格も必要です。畑関連は私も任せられる部下がいますし、彼の地を私が見ることで分かることや、持ち帰れることも多いと考えます!」
「建前としては最もだのうー。まぁいいか。いいぞ」
「竜王様、少し雑ではないですか……ヒラカタ、あの家族には礼を持って接しろよ」
「勿論だよ!」

「なかなかに面白いネズミだな! 心配はない。お前が問題を起こしても、飛ぶのはお前の首とガンジュくんの首くらいのものだ!」

 俺の首も飛ぶのか……さくら様の言葉が冗談であることを祈りたい。
 頼んだぞ、ドナル。
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