家庭菜園物語

コンビニ

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50 プレゼント

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 クルークさん曰く「言い出すタイミングがなくて言えませんでした」とのこと。
 理由を聞けば、「だってカイラ様は絶対暴れるもん」と、いい大人が子どものような言い訳をしていた。

 しかし、その予想はいい意味で外れた。
 カイラちゃんはモモに慰められながら泣きつつ、トンカツを八枚も平らげ、暴れることはなかった。

 泣き疲れたのか、お腹いっぱいになったのか、カイラちゃんはそのまま寝落ち。ドナルさんに抱えられ、寝室へと運ばれていった。

「あの暴れん坊のカイラ様が大人になったものです……」
「カイラ殿はモモ殿と仲が良かったですから、寂しいのでしょう。気持ちはわかります。自分もプロテインと別れると思うと、涙が止まらなくなります」

 牛乳で割ったプロテインを片手に、ドヤ顔で語るソーズさん。
 悪いけど、モモたちの友情をプロテインと並べて語らないでほしい。

「モモ、カイラちゃんとは少しお別れになっちゃうし、お土産でも用意しようか」
「はい!」

 何がいいかな……これから寒くなるし、モモとお揃いで色違いか柄違いのマフラーなんていいかもしれない。

「モモ、こんなマフラーなんてどう? 赤いマフラーで犬柄と猫柄があるんだ」
「いいんですか? 高くないですか?」

 ああ、子どもにこんな心配をさせるなんて……普段から「金が金が」と言ってる自分のせいだ。
 確かに一本一万円とマフラーにしては高いが、このくらいなら全然——

「このくらいなら値段なんて——ん? 姉さん、どうしました?」
「にゃーん」

 当然と言わんばかりに猫柄を推す姉さん。
 もちろん、大福もモモの太ももに顔を乗せて「ワフワフ」と甘え始める。

 ……これ、俺のチョイスのせいで戦争が起きるパターンじゃないか?

「モモ、やっぱり柄なしの——」
「にゃーん」
「わん!」

 ど、どうやらもう引き返せないところまで来てしまったらしい。
 ドナルさん、ソーズさん、クルークさん! のんびりトンカツ食ってないで助けてくれ!

「いやはや、家族間の問題ですからね」
「兄貴」
「間を取ってプロテインにしましょう」

 お前ら……。

「私は猫さん柄がいいです!」
「わん……」

 姉さんが勝ち誇ったようにモモの肩に乗り、大福を見下ろす。
 大福を煽らないであげてぇ、

「お父さん、我が儘を言ってもよいでしょうか?」
「なんだい、モモ?」

 モモが指差したのは、同じシリーズの犬柄手袋。
 お値段五千円とこれもなかなか。

「こっちの犬さん柄の手袋も欲しいです」

 ほんと優しい子だな。

「わん!」
「じゃあ、手袋は犬さん柄、カイラちゃんには猫さん柄の手袋と犬さんのマフラーで柄違いにしようか」
「にゃーん」

 姉さん、その「妥協してやるか」じゃないんですよ。
 モモと俺の財布を困らせないでください。

 手袋とマフラーを購入し、簡単にラッピングしてモモに手渡す。
 モモは袋をギュッと抱きしめて「ありがとうございます」と言い、戸棚にしまって大福と姉さんを連れ寝室へ。

「モモ殿は優しい子ですな」

 ソーズさんの言葉にクルークさんとドナルさんが頷く。
 ……いい感じにまとめようとしてますが、今日の裏切り、俺は忘れないぞ。許すまじ。

 明日で皆とお別れだというのに、今夜ビールを飲めないのは残念だ。

 
 ——翌朝。
 皆で焼きたてパンと目玉焼き、燻製肉とサラダというスタンダードな朝食を囲む。

 カイラちゃんの目は少し赤かったが、モモと楽しそうにパンを頬張っている。
 きっと昨夜、寝室で女子トークでもしていたのだろう。

 意外だったのは、ソーズさんが泣き喚かなかったことだ。
 大好きなプロテインとしばしの別れになるというのに、実に潔い態度。

 帰りは大福との約束で、森を抜けるまでは徒歩。
 戦力的に不安があるため、今回も大福が護衛につく。
 カイラちゃん、強そうだったのに……やっぱこの森、相当やばい。

 玄関前で家族全員が見送りに出る。
 モモは昨日買ったマフラーと手袋を着用。
 カイラちゃんが羨ましそうに見ている。よし、これはきっと喜んでくれるだろう。

「カイラちゃん、元気でね」
「うぬ! 暫くはさくら様の所で手伝いと勉強だ。次に会えるのはモモが学校に来る頃かな」
「私も勉強や特訓、料理や動物のお世話、頑張るから」
「あたしだって負けない」

 がっちり握手を交わし、離れ難そうに話し続ける二人。

「モモ、そろそろお別れをしようか」

 手を離そうとしないモモに、用意していたプレゼントを手渡す。

「はい……カイラちゃん、これ仲良くしてくれたお礼です」
「ありがとう。開けてもいいのか?」

 出てきたマフラーと手袋を見て、モモの装いと見比べる。

「柄違いのお揃いです」
「綺麗な絵柄だ。杏様と大福様だな」

 モモはマフラーを取り、巻き方を教えながらカイラちゃんの首に巻いてあげる。
 そしてギュッと抱きしめ、「元気でね」と。

 ……泣ける。

 ドナルさんとクルークさんも俺に握手を求めてくる。

「兄貴」
「悠殿、また来ます」
「他の種も上手く育つように願っています。ガンジュさんにもよろしく」

 三人と大福が森へ消えていくのを見送る……三人? あれ、ソーズさんがまだいる。

「ソーズさんは帰らないんですか?」
「総選挙は春です。それにモモ殿にはまだ体術など教え途中。投げ出すわけにはいきません!」

 いや、総選挙ならもっと余裕を持って帰ってもいいのでは……?
 本音はプロテインが飲みたいだけだろ。

 こんな筋肉至上主義男と運命共同体状態の王坂国……大丈夫か?

 今日も筋肉は笑顔でプロテインを流し込む。
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