家庭菜園物語

コンビニ

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2章

2-20 妖精②

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 さて、問題の「ご飯を食べない妖精」をどう助けるかだ。
 人が苦手というなら、積極的に顔を出すわけにもいかない。

「姉さん、なんとかなりませんかね?」
「にゃーん」

 知るか、とでも言いたげな冷たい反応を返して、姉さんは席を外してしまった。

「モモ、書物には何を食べるとか載ってなかったのか?」
「人と変わらない、とか。あとは樹液や果汁とか……曖昧なのばっかり。スイカもお肉もダメだったの」
「そうなのか……妖精って言えば、花の蜜ってイメージあるけどな」
「花を食べるのか?」

 ガンジュさんが「そんな馬鹿な」と言わんばかりの目で俺を見る。
 モモも「さすがに花はないと思うよ」とフォローしてくれる。……でも、花の蜜ならワンチャンあるか?

 養蜂とかできないのかな。とりあえずハチミツだけでも試すか。
 台所に食材を並べ、妖精さんが自分で選べるように準備してみる。モモと大福以外は部屋を出て、外から様子を伺う作戦だ。

「向日葵が……」
「もしかしたら、向日葵の蜜も吸うかもしれないしさ」

 向日葵を切って持ってきた俺を見て、エリゼちゃんは大ショック。
 大事に育ててたのを知ってるだけに申し訳ないが、妖精さんのためだ。

 蜂ならともかく、本当に蜜を吸えるのかはわからないけど。
 そこへ姉さんが戻ってきて、台所のテーブルに「ポトン」と何かを落とした。

 小人の女の子。背中に羽があり、髪は短いショートカット。光を浴びると髪がきらめいて、幻想的に輝いている。
 これが——妖精かって、姉さん! まさか咥えて連れてきたの!?

 妖精の子は何か文句を言っているのか、必死に姉さんへ抗議しながら暴れている。
 お腹が減って弱っていると聞いたけど……思ったより元気そうじゃないか。

「にゃーん」

 姉さんは「まどろっこしいから連れてきた」とでも言いたげ。
 モモと大福の配慮も少しは考えてくださいよ……。

 敵意むき出しで元気そうには見えるけど、よく見ると少し震えてもいる。

「にゃーん」

 姉さんは「自分が側にいれば問題ない」と言わんばかりの態度。
 理不尽な彼氏ムーブをナチュラルに決めてくる。

 しかも妖精さん、姉さんの背にひょいっと乗って——猫ライダー爆誕。なにこれ、めっちゃ可愛い。

「部屋に小箱を用意していたんだけど、出てきてくれてよかった。ここにいる人は危害を加えないから、心配しないでね」

 出て来たというか、姉さんに連れ去られて来たんだけどな。
 モモが優しく声をかけると、妖精さんは「触るな!」とばかりに指を跳ね除けた。
 でも少し照れた様子を見せる……ツンデレか?

 モモも姉さんも大福も意思疎通できているようで少し羨ましい。
 エリゼちゃんは「可愛い!」と呟きながら、手をわきゃわきゃさせている。

「にゃーん」

 人が多すぎても緊張するだろうと、モモと大福、姉さんの説得で俺も台所に迎え入れてもらえた。
 エリゼちゃんは少し残念そうだったが……触りたい圧がすごかったので仕方ない。


 妖精さんは姉さんの背に乗ったまま、食材を吟味。しかしどれもイマイチの反応。
 姉さんがテケテケと食材を回って歩くと、ある一か所で妖精さんが強く反応し、姉さんの耳を引っ張りはじめた。

「お花?」
「お、やっぱり妖精と言えば花だよな!」
「にゃーん」
「すんません」

 俺が調子に乗った瞬間、姉さんから「うるさい」と怒られた。

 妖精さんは大輪の向日葵に座り込む。
 すると花が淡く光り、妖精さんの手に水がにじみ出て、それを口に運んで飲んだ。

 二つ用意した向日葵はあっという間に萎れてしまい、さらに妖精さんが触れると粉末になってしまった。
 けれど、その直後に空を飛び回り、大きなジェスチャーでモモに何かを伝えている。

「ふんふん。お父さん、これまで体験したことがない素晴らしい味だと喜んでます。それと、枯らすまで吸い尽くしてごめんなさいって。粉末は植物に撒いて使ってほしいそうです」
「この粉が植物にいいのかー」

 花から養分を吸って、粉末を肥料にする……益虫みたいな存在?
 でも妖精さんに「虫」とか言ったら絶対怒られるだろうな。

「お礼なら、その花を育てた子に言ってくれ」

 俺がそう言うと、妖精さんはこくりと頷く。
 機嫌を良くしたのか、今度はパタパタとリビングまで飛んでいき、ガンジュさん達の前に姿を見せた。

「警戒心解くの早すぎない? ……それが個体数減った理由なんじゃ……」

 俺が呟くと、妖精さんはふむふむと周囲を見渡し、最後にエリゼちゃんの頭にちょこんと座った。

「その子が花を育てたんだよ」

 俺が紹介すると、妖精さんは「よくやった」と肩をポンポン叩き、エリゼちゃんの頭に落ち着いた。

「可愛い! けど見えない!」

 出会った頃のエリゼちゃんなら「羽虫が!」って握りつぶしてただろうな。
 子供達も「触りたい!」と大興奮で飛び跳ねている。

「にゃーん」

 姉さんが「小さくて弱い存在には優しくせよ」と注意喚起する。自分達が家族に大切にされているように、妖精にも優しくするように、と。

 だが妖精さんは「弱い」扱いが気に入らないのか、ブンブンと腕を振って抗議。
 その後、子供達に向かっていきなり飛び蹴りをお見舞いした。

 子供達は「何が起きた!?」と一瞬きょとんとしたが、すぐにキャッキャと笑い声を上げる。
 妖精さんは「勝った!」とばかりにエリゼちゃんの頭の上に再び鎮座。が、すぐさま姉さんに咥えられて隅っこで説教されていた。
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