底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

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第一章 底辺配信者、スライムを拾う

第6話 コメント返し

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 今日は冒険をお休みして、動画についたコメントに返信していく。

「こんにちは。ワラビのマスター、ツヨシです」

 スマホに向けて、ボクは話しかけた。

 ちなみに、こういった質疑応答系の配信者には、顔出し防止の観点から、公式運営から「アバター」が支給される。
 普段は棒人間みたいな簡素過ぎるアバターなんだけど、スケルトンキングを倒した特典で、いいアバターをいただいた。

「では長話もなんなので、ワラビに対する質問を受け付けます。どうぞ」

 生放送なので、過去のコメントを拾いつつ質疑応答も行うことに。
 質問は「モチマキ」という形式でさせてもらう。
 ボクたちが、質問者に対してモチをまく、お正月イベントのようなスタイルだ。

「えっと、『ワラビちゃんかわいいですね』、ですか。どうもありがとうございます。話すこともできて、かわいさは倍増していますよ」

 ワラビを撫でて、コメントに返信をする。 

「ファンアートまでいただきました。ありがとうございます」

 イラストを公開し、ワラビが感謝のコメントを返す。幼稚園児が書いた夏休みの絵日記みたいな絵だが、涙が溢れそうになった。
 ワラビ、愛されているなあ。倒さないで拾ってきて、よかった。

 質問を受け付けている間、ボクはコルタナさんが作ってくれたビーフシチューをワラビと食べる。料理が得意というだけあって、コルタナさんのシチューはお店で食べるような味がした。

 
『なんか、仲間が増えているけど?』

 
 最初はワラビではなく、コルタナさんとセンディに質問が集まった。
 ちなみにコルタナさんのアバターは画面上ではSD化した本人を形作っており、センディさんはTシャツ短パン姿のイラストになっている。

 自己紹介の後、二人はあいさつをする。

「こう見えて、元は冒険者用ホテルの料理人だったの。冒険者のお話を聞いているうちに、憧れのほうが勝っちゃった。それで、まだ駆け出しだったセンディと旅をしているわけ」

 意外にも、コルタナさんから声をかけたそうだ。

「二〇〇年も生きていると、羞恥とは無縁になっちゃうのよね。トラブルどんとこいなワケ」

 当時を振り返り、コルタナさんはコロコロと笑う。

「オレはツヨシと同じで、脱サラ組だな。ツヨシみたいにブラック企業に嫌気が差したーってわけじゃなくて、親父の事業を継いだだけで終わりたくなかったんだ」

 ボンボンさんだったのか、センディさんは。

 センディさんは冒険者になる際に、事業を父親の部下に一任したらしい。会社が残ることこそ大事だったので、会社を大事にしてくれる人材を社長に任命したのだ。

「で、スケルトンキングを倒した縁で、オレたちは正式にパーティを組んだんだよ」

「といっても、やっつけちゃったのはツヨシとワラビちゃんなんだけど……ツヨシ、質問が来たわ。ワラビちゃんに」

 ワラビに、質問が来ている。
 ボクたちは、雑談を打ち切った。

 
『【ワラビ】ちゃんは、かんじでかくと、どんな字ですか?』

 
 質問者は、小学生かな? 漢字が少ない。

「ワラビは本来、【蕨】と書きます。ですがマスターツヨシは『かわいくないっ』と一蹴し、【和楽美】と当て字を用いて登録していますね」

 質問者は納得したのか、「ありがとうございました」と丁寧にあいさつをして退席した。

 コメント返信でわかったけど、どうもワラビは小さい子どもに人気があるらしい。
 

『マスターのどんなところがスキ?』

 
「ワタシのようなモンスター相手でも、対等の関係を望むところです」 

 そこは、ボクも意識しているところだ。
 

『どんな食べ物がスキ?』

 
「マスターツヨシが発生させる、『アミロイドβ』です」

 それって、認知症を誘発する物質だよね?

「実はワタシ、マスターツヨシが寝ている間に、アミロイドβを除去しております」

「そうなんだ」

「はい。口の中に忍び込んで」

 マジで!?

「マスターツヨシの口内に分身を浸透させ、歯の磨き残しや老廃物を取り込むのです。ワタシはその間にマスターツヨシをマッサージして、リンパを流しております」

 だから、毎朝快適に過ごせいたんだな。

「中でも、マスターツヨシのアミロイドβは、かなりの味でして」

 これ以上はホラーになりそうだ。コメントも若干引いているな。 
  
  
『うちで飼ってる使い魔は、しゃべらないんだけど? ちなウルフ』

 
「オオカミを使役していらっしゃるのですね? 使い魔としてこういう言い方をしてしまうのも問題かと思いますが、コミュニケーションの仕方が関係しているのかもしれません」

 ボクとワラビは、パートナーとして対等の立場で過ごしている。
 対して、コメントの文面からして、質問者は使い魔にペットのポジションを望んでいるようだ。

「会話が必要か、にもよりますね。ペットという関係がいいなら、それでもOKかと。十分、信頼関係を築けていると思いますよ」

 
『ありがとう。パートナーは妻がいるので、ペットとして扱いたい。でも、家族とは思っているよ』

 
 なるべく質問者を刺激しないように、ワラビは相手を尊重する話し方をした。
 そんな気遣いができるなんて。
 ボクが答えていたら、きっと角が立っていただろう。


『マスターに質問、なんかワラビちゃん、大きくなってない?』


「そうなんですよ。このアパートも、手狭になってきました」

 ワラビは最初こそ枕サイズの大きさだったが、今ではソファくらいに成長している。

「もうちょっとお金が貯まったら、引っ越そうかと。ではいい時間なので、コメント返信と質疑応答はまた次回。さよならー」
 


 だが翌日、ボクたちは引っ越すことになった。
 農地を開拓していいことになったのである。

 開拓はギルドからの依頼だ。
 とはいえ土地を用意してくれたのは、センディさんたちである。

(第一章 完)
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