転生特撮ヲタ、異世界でダークエルフの霊にそそのかされてパワードスーツの開発をして、世界を救うことに。俺は特撮フィギュアが作りたいだけなのに。

椎名 富比路

文字の大きさ
12 / 42
第二章 猛将と、闇の博士

第12話 竜胆一家、家を買う

しおりを挟む
 先日の戦闘から一夜明けて、小国ライコネンはそれなりに活気づいている。奪還されたばかりなので、まだ完全とは言わないが。

「どうだ、街は?」
「こんな賑やかなところは、初めてです!」

 里しか知らないレクシーは、活気づく街に興味津々である。

「おかえりなさいませ」

 やはり、人の数だけが少ない。人だけ追い払って、魔物たちで活用するつもりだったようだ。

「王都を攻める際の、拠点にするつもりだったんだろうね」
「その線が妥当か」

 ニョンゴの推測に、オレもうなずく。

 ともかく、街は回復しつつあった。フローレンス姫とジーンの元へ急ごう。

 姫はジーンと共に、負傷者の治療を行っていた。

 何も言わずに、オレたちも手伝う。

「私もお手伝いします」

 レクシーもケガ人に魔法で治癒を行い、炊き出し作りにも参加する。

「大丈夫だ、みんな。レクシーも、気持ちだけ頂いておくよ」
「よろしいのですか、ジーン様?」
「大変なのは、お互い様だ。モモチと一緒に、街を回ってらっしゃい」
「ありがとうございます」

 何かを察したジーンが、オレに顔を向けた。

「用事があってきたんだろ? 話してくれ」
「ああ。実は」

 さっそく、事情を話す。

「竜胆の騎士様がこちらに居を構えなさるのは、大歓迎ですわ。商業ギルドに話を通しておきます。ご要望は?」

 オレがこっちに移住すると聞いて、フローレンスは喜ぶ。

「小さくていい。できれば目立ちたくないので、隅っこの方に開いている物件があれば」
「承知いたしましたわ」

 フローレンスは、ポシェット型のアイテムボックスからまさぐった。そこから、受話器のような杖を取り出す。自身の身分証を、杖のスロット部分に差し込む。ゴールドカードだ。やはり王族は違うな。

 電話のように、杖の先端を耳に当てた。この世界の携帯電話か。あれは便利そうだ。

「ええ。そうです。特別いい物件を見繕ってくださいな」

 姫が、通話を切る。

「商業ギルドは、こちらから歩いて五分ほどです。身分証を。レクシー様も」

 フローレンスに、オレたちは身分証を差し出す。

 さっき使っていた受話器の末端を、オレとレクシーの身分証に押し付ける。

 ライコネンの紋章が、身分証の左隅で輝いた。なるほど、スタンプにもなると。

「これで正式に、あなた方はこの地の名誉住民です。ある程度は、自由に動けます」
「それはありがたい」
「では、商業ギルドへよろしくお伝え下さいな」

 手を振るフローレンスに見送られ、続いて商業ギルドへ。

 役員の熟年女性が、土地のある場所まで案内してくれた。

 それは、よかったのだが。

竜胆の騎士ジェンシャン・ナイト様、いかがでしょう?」

 三階建ての豪華すぎる屋敷を見せられて、オレたちは困惑した。

「派手だな。立地がよすぎる」

 これでは、確実にマークされる。いかにも「騎士が住んでいる」と思われてしまう。これでは、レクシーがかわいそうだ。

「買いま……せん」
「では次の物件へ参りましょう」

 別のお屋敷を見せてもらった。できれば二階建てでと、要望も伝えておく。

「では、こちらを」
「大きすぎます」

 レクシーが即答した。

 二軒目は、やたら横に広い屋敷である。ショッピングモールかっての。
「敷地内で野球もできます」とか。いらないから。

 しかし……ところどことに、孤児たちがいるなぁ。家族や家を、なくしたのか。

「落ち着かない。買いません。次の物件はどうだ?」

 他にも回らせてもらったが、めぼしい場所は見つからない。

「ん?」

 オレとレクシーが、一件のボロ屋を目撃した。

 といっても、それなりの屋敷だが。貴族の別荘といえばいいか。

 各店舗とも近い。買い物には最適だし、どこでも見渡せる。

「そこはもう、二〇年以上も買い手がついていないお屋敷でして! あらまあ!?」

 役員おばさんの静止も聞かず、オレたちは屋敷の内部に入った。

「レクシー、どうだ?」
「貴族様の別荘というだけあって、キッチンが使いやすいです。オーブンのあるお家って、いいですね! お庭も広くて、ムギたちも喜んでいます」

 レクシーが、お供のムギたちを召喚して走らせる。はしゃぐムギたちを見ながらお料理って、素敵だな。

 ここはいいんじゃないか?

「こんないい建物が、どうして売れなかったんだ?」
「経済的に、ライコネンの土地は中途半端でして」

 この世界の貴族は、「ライコネンに住むなら、王都へ行くよね」という金銭感覚らしい。二本の若者の一部と、同じ発想だな。その手の人は、大都市以外に関心がない。

「ここに決めた! 買います。いくらだ?」
「ありがとうございます。お代は、フローレンス姫殿下よりいただくことになっております」

 オレは、ぶったまげた。だから、お高い屋敷ばっかふっかけてきたのか? なんともいい性格してるぞ、このギルドおばさんは。

 しかし、全額出してくれるとはなぁ。

「受け取っておこうよ、モモチ」
「そんな。悪いぜ」
「強い騎士様に、住んでもらいたいのさ」

 街を守った恩も、感じているのだろう。そんなの、いいのに。

「よし、買った。家具類はこっちの金で揃える、って伝えといてくれ」
「かしこまりました。お買い上げありがとうございます」

 簡単な手続きだけを済ませて、お引っ越し作業を開始する。

「それでは、パワワーッと」

 ニョンゴが、ボロ屋に光を当てた。

 屋敷の二階が、ラボへと変化する。

「一階は、二人の寝室とか生活空間ね。ワタシは、二階に住まわせてもらう」
「こんなことができるんだな?」

 感心しながら、オレとレクシーは一階の掃除を始めた。

「建物のレベルに応じて拡張が可能だから、家さえアレばそこへ空間を作ればいい」

 建築物にラボのデータを移せば、その建物がラボになるという。どんなボロ屋であろうと。

「こんなことができるなら、レクシーに片付けさせなくてもよかったのでは?」
「ううん。ラボは汚いままだったよ」

 散らかった部屋のデータを転送するから、部屋は当時のままになってしまう。広い家に移動すれば、より汚くなっていた可能性も高い。

「ありがとうね、レクシー」
「いいえ」

 後は、食器と家具類だ。

「レクシー、街へ出よう」

 オレが言うと、レクシーは少し待ってくれという。

「モモチ、街へお出かけする前に、着替えをしたいです」
「わかった。待ってるよ」

 レクシーが、着替えをしまってある寝室へ向かった。 

 お着替えと言えば、だ。

「話は変わるが、このヨロイのデザインは、どうも浮いている感じがしてならない」

 場違い感が、想像以上だ。異世界なんだから、もっと馴染むと思っていたのに。

「異形っぽくありつつ、オートマタっぽくないからいいんじゃないかな?」
「そこは意識した。あまりにも鉄の塊って感じは出したくなかったからな」

 西洋甲冑をヒロイックな着色にして、派手にしてみただけなんだが、なんだか白々しいんだよな。モンスターの素材を随所に扱っているのは、いいアイデアだと思うのだが。軽さもいい。

「バイオアーマー風にしたほうが、ウケたかな?」

 そっちのほうが、異世界においてはしっくりきそうだ。

「さらに魔物感が増すだけだと思うよ」
「たしかになー。映画でも、そういうキャラいたわー」
「なんだよ急にそんな話をし始めてさ。レクシーの着替えを気に姉妹としているのがバレっバレなんですけどー」
「ち、違うっての!」

 ニョンゴにからかわれ、オレは反論した。

「はぐらかさなくていいよ。街でやりたいことがあるんだろ?」

 さすがだな。やはり察していたか。

「街を回ったとき、野球場付きの物件を見せてもらったろ? あれを購入したい」
「なんのために?」
「孤児院にしたいんだ」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...