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第一章 再会
第25話
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──それっきり。
先生とは、会わなくなった。
あの朝以来、一度も連絡は取っていない。
最初の数日は、先生からの連絡を待っていた。
スマホを何度も確認して、着信がないかチェックして——
でも、何もなかった。
私からも連絡しようとした。何度も。
でも、できなかった。
連絡をしないということに、意味があるんじゃないか——
そんなふうに思うことで、納得しようとしていた。
でも、本当の理由は違う。
私は怖かったんだ。
先生が婚約破棄したことで、何か大きな代償を背負ったことは分かっていた。
私は、先生が私を選んでくれたことがただ、嬉しかった。
でも、それは誰かの犠牲の上にあった。
決して、祝福される関係ではなかった。
それでもよかった。
私は——
先生がその後どうなったのか、私は知らない。
家族や相手の方と、色々あったのかもしれない。
けれど、私はその中に踏み込むべきじゃない。
……そう思った。
次に会ったら、先生が何を言うのか。
もう私を必要としないと言われるのが、怖かった。
だから、連絡できなかった。
でも——
忘れられなかった。
どれだけ離れても、どれだけ時間が経っても。
私の中には、あの人がいた。
新しい恋をしようとした。
大学で、バイト先で、男の人から声をかけられる事もあった。
でも無理だった。
誰と話していても、どこかで先生と比べてしまう。
先生はもう、私の中に根を下ろしていた。
遠くにいるのに、いまだに私を縛っていた。
だから私は、今——
母校にいる。
"教育実習生"として。
教師を目指したいという気持ちがなかったわけじゃない。
先生の影響で、教員に興味を持ったことも確かにある。
でも、本当の理由は……。
先生に、会いたかった。
そんなこと、正直に言えるはずがない。
それでも、もう一度だけ……会いたかった。
先生が今、どうしているのか知りたい。
* * *
三年ぶりの校舎は、少しだけ狭く感じた。
先生と過ごした一年、再会した後の日々、 全てが蘇る。
私は職員室の前に立って、静かに扉を開ける。
その奥に——
懐かしい背中が見えた。
「……先生」
私の声に、先生が振り返る。
一瞬、驚いたような表情。
それから、ゆっくりと笑顔が浮かんだ。
「まさかお前が、こんな形で来るとは思わなかった……」
その声に、涙が溢れそうになった。
先生はあの時より少し落ち着いた雰囲気だった。
教員としての経験を積んだからだろうか。
「来週から三週間、宜しくお願いします!」
先生の隣に立つ。
ちゃんとした理由で。
今度は、対等な立場で。
私達の物語が、再び動き出す。
先生とは、会わなくなった。
あの朝以来、一度も連絡は取っていない。
最初の数日は、先生からの連絡を待っていた。
スマホを何度も確認して、着信がないかチェックして——
でも、何もなかった。
私からも連絡しようとした。何度も。
でも、できなかった。
連絡をしないということに、意味があるんじゃないか——
そんなふうに思うことで、納得しようとしていた。
でも、本当の理由は違う。
私は怖かったんだ。
先生が婚約破棄したことで、何か大きな代償を背負ったことは分かっていた。
私は、先生が私を選んでくれたことがただ、嬉しかった。
でも、それは誰かの犠牲の上にあった。
決して、祝福される関係ではなかった。
それでもよかった。
私は——
先生がその後どうなったのか、私は知らない。
家族や相手の方と、色々あったのかもしれない。
けれど、私はその中に踏み込むべきじゃない。
……そう思った。
次に会ったら、先生が何を言うのか。
もう私を必要としないと言われるのが、怖かった。
だから、連絡できなかった。
でも——
忘れられなかった。
どれだけ離れても、どれだけ時間が経っても。
私の中には、あの人がいた。
新しい恋をしようとした。
大学で、バイト先で、男の人から声をかけられる事もあった。
でも無理だった。
誰と話していても、どこかで先生と比べてしまう。
先生はもう、私の中に根を下ろしていた。
遠くにいるのに、いまだに私を縛っていた。
だから私は、今——
母校にいる。
"教育実習生"として。
教師を目指したいという気持ちがなかったわけじゃない。
先生の影響で、教員に興味を持ったことも確かにある。
でも、本当の理由は……。
先生に、会いたかった。
そんなこと、正直に言えるはずがない。
それでも、もう一度だけ……会いたかった。
先生が今、どうしているのか知りたい。
* * *
三年ぶりの校舎は、少しだけ狭く感じた。
先生と過ごした一年、再会した後の日々、 全てが蘇る。
私は職員室の前に立って、静かに扉を開ける。
その奥に——
懐かしい背中が見えた。
「……先生」
私の声に、先生が振り返る。
一瞬、驚いたような表情。
それから、ゆっくりと笑顔が浮かんだ。
「まさかお前が、こんな形で来るとは思わなかった……」
その声に、涙が溢れそうになった。
先生はあの時より少し落ち着いた雰囲気だった。
教員としての経験を積んだからだろうか。
「来週から三週間、宜しくお願いします!」
先生の隣に立つ。
ちゃんとした理由で。
今度は、対等な立場で。
私達の物語が、再び動き出す。
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