ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

七転び八起き

文字の大きさ
30 / 30
第二章 三年後

第30話

しおりを挟む
 だんだんと、担当しているクラスの生徒たちにも馴染めてきた。

 なんだかんだで、教育実習は残り一週間。
 あっという間だった。

 先生と同じ場所にいられるのも、あと一週間かと思うと気持ちが沈んだ。

 今日やる事を終えて、職員玄関から出て帰ろうとした時、中山先生に声をかけられた。  

「水島さん、俺も帰るところだから駅まで送ろうか?」

 中山先生と二人──

 少し不安だけど、今日は少し疲れてるし、お願いしようかな。

「ありがとうございます、お言葉に甘えて宜しくお願いします」

 私は中山先生の車に乗った。

 車の中では、中山先生が学校の裏話をいろいろ教えてくれた。

 教員って、思った以上に大変なんだな……。
 ちょっと、自信がなくなってきた。

 夏雄先生に会いたくて……いや、先生みたいな教師になりたくて始めた実習だけど、やっぱり私には向いてないのかもしれない。

 そんなことを悶々と考えていたら——

 気づいた時には、知らない場所にいた。

 え……?

 あたりに人気がまったくない。  
 嫌な予感がした。

「水島さんさ……昨日、夏雄先生と教室で抱き合ってたでしょ?」

 ——バレていた。
 何も言えなかった。

「実習中にあれはまずいよね」
「すみません……」

 怖い。

「夏雄先生さ……卒業生に手を出してるって噂になってるんだよね」

 心が凍りついた。
 ショックで、身体が動かなかった。
 先生が……私以外にも……?

 その時、中山先生の手が私の手に触れた。

「俺ならそんな事しないし、水島さんの事、大事にできると思う」

 突然言われた言葉に頭が真っ白になった。
 そんなふうに中山先生に思われていた事に全く気が付かなかった。

 少しずつ中山先生の顔が近づいてきて、唇が触れそうになったその瞬間——  

 私は反射的に顔を背けた。

「夏雄先生は諦めなよ。水島さんで遊んでるだけだから」

 ……そんなはずない。
 私と先生は、そんな関係じゃない。

 その時、助手席のシートが倒された。
 中山先生が覆い被さってきて、力強く抱き寄せられた。

 怖い……!

 力を入れても全く動かない。
 これじゃ逃げられない。

 いつの間にか首元がはだけていて、中山先生の唇が肌に触れた。

「やめてください……!」

 中山先生はじっと私を見た。

「男の車に一人で乗るって、許してるって思われても仕方ないよ?」

 え……?

「そういう無防備なところに、惹かれるんじゃないかな」

 そんなつもりはなかった。
 ただ信じていた。

「そうやって嫌がってるふりしてるけど、本当は期待してたんでしょ?」
「違います!」

 だんだんと身体を侵食されていって、逃げようとしたその時——

 誰かが、ドアをノックした。

 息を切らせた夏雄先生がそこに居た。
 中山先生は驚いて、私から離れた。
 その隙に、私は勢いよく車から飛び出した。

「中山先生、今日のことは誰にも言いません。でも、同じことがあったら容赦しません」

 夏雄先生の怒りが、言葉の奥から伝わってきた。

 中山先生は、すぐに去っていった。

「先生、どうしてここがわかったんですか?」
「お前らが車に乗るのが見えたんだよ。学校から」

 追いかけてきてくれたんだ。
 嬉しい。

 ──でも。

「先生は……私以外にも、卒業生といろいろあるんですか……?」
「は?」

 先生が嘘をついてるようには見えなかった。

 ——よかった。

 そのあと先生の車に乗って、家に送ってもらう道中叱られた。
 二度と他の男の車に乗るなと。

 落ち込んでいると、信号待ちの間、先生が手を握ってくれた。
 とても温かかった。
 やっぱり先生が、大好き。

 あと一週間なんて。
 その先、私たちはどうなるんだろう。

 でも、何があっても、私はずっと先生が好き。
 それだけは変わらない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

逃げても絶対に連れ戻すから

鳴宮鶉子
恋愛
逃げても絶対に連れ戻すから

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...