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第24話 もう隠さない
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朝起きると雨が降っていた。
雨の日の出勤は憂鬱。
「雨だな」
「困りましたね~」
二人で迎える朝はどんな天気でも平和だ。
「一緒に車で行くんだから関係ないだろ」
「いえ、私は電車で行きます」
「なんでだよ……」
また河内さんが落ち込んでしまった。
「特別扱いされるのはもう嫌なんです」
「俺たちは恋人だろ。特別だ」
河内さんの目に迷いはない。
「でも仕事では特別扱いはだめですよ」
裏秘書みたいな状態だけど、もうコソコソするのも罪悪感があって嫌だった。
「じゃあお前は今日、雨の中電車で行くのか?」
「はい」
呆れて先に準備をして、河内さんは行ってしまった。
そして……ついにきてしまったこの時が――
「藤田さん、結局“企画開発部”って何?藤田さんしか配属されてないんでしょ?本当は副社長に囲われてるんでしょ?」
前の部署の先輩に公然と質問されてしまった。
昼休憩中だったから、前の上司もいないし、社員もまばら。
でも見られている……。
「どんな事したら、そんないい仕事ができるの?羨ましい。何もしてなくても給料もらえて」
“何もしてない”……?
この人だけには言われたくなかった。
「私はやってます仕事を。この部署にいた時、あなたに仕事を押し付けられてもやってました」
私は前を向いた。
「私は今もちゃんと自分のやるべきことをやってます!ちゃんと副社長の秘書業務をやってます!」
………言ってしまった。
勢い余って……。
「秘書……!?」
フロアがざわついた。
まずい……これは……。
「……やっぱり副社長と仲良しなんじゃない。でもあの人、秘書と昔トラブルがあって、もう秘書を置かないって聞いてたけど?」
え……?
私の唖然とした顔に、クスッと先輩は笑った。
「勘違いしない方がいいわよ」
……そんなトラブルがあったの?
寝耳に水だ。
でも――
「勘違いはしてません!」
私の隣には永瀬さんがいる。
昼休み中に会いにきてくれた。
「最近二人がどうなったか気になって来たのに、どうしたの?」
「前の部署の先輩に、河内さんが昔秘書とトラブルがあったって言ってて」
「あーなんかあったかも。あまり知らないけど」
胸がザワザワして、嫌な感情が渦巻く。
「でも、ちゃんとまだ恋人なんだね。安心した」
「私も永瀬さんと話せて、気持ちが楽になりました」
私たちの関係を唯一ちゃんと知っている人。
「わからない事は本人に聞きなよ。考えてても仕方ないし」
「うーん」
それを聞いたからといって、特に今の関係が変わるとは思わないけど……。
「ストレス発散したいです!」
「あーじゃあ仕事終わったらカラオケいこう!」
永瀬さんがのってくれた。
そして、仕事が終わった後、カラオケで二人でたくさん歌って笑ってスッキリして出てきた。
「永瀬さんありがとうございます!」
その時、永瀬さんの表情が固まった。
嫌な予感がした。
振り返ると……また河内さん。
「何をしているんだお前らは」
「なんで突然いつも現れるんですか!!」
河内さんは永瀬さんの方に行った。
「優美に何もしてないよな?」
「あの子のあの様子で何かあったと思う?」
永瀬さんはやや呆れている。
二人ともお酒を飲んでフラフラした私を見ている。
「飲めないんだろお前!?」
「ストレス発散したくて飲んじゃったんです。なんか体痒いです!」
私は急いで河内さんの家に連れて行かれた。
河内さんのベッドで横になった。
「何かあったのか?」
「……前の秘書の方と何かあったんですか?」
河内さんは少し驚いた後、冷静な表情になった。
「ああ。恋愛感情を持たれていて、強く迫られて、ややストーカー気味になって、秘書をやめさせた」
そんな事があったんだ……。
「それは大変でしたね……」
河内さんに睨まれた。
「誰から聞いた」
「前の部署の先輩です……。秘書の仕事してるって言ってしまって、そしたらそれを言われました」
河内さんはため息をついた。
「わざわざ“企画開発部”を作った意味がない」
「そんな事ないです!今は何か言われても言い返せますけど、あの時は無理でした……」
私はあの時からだいぶ変わったと思う。
「逞しくなったな。もう秘書と言ってしまった以上、堂々としてろ。お前はちゃんと仕事をしてる」
「……私、役に立ってます?」
河内さんの目の色が変わった。
何……?
「優美が一生懸命仕事する姿に俺はやる気をもらえる。と同時に……崩したくなる」
「崩す……?」
怪しげな瞳が私を捉える。
「俺にしか見せない表情を見たくなる」
服のボタンが外されていった。
「河内さん、私……」
「なんだ」
「全身痒いんです……」
アルコールアレルギーのせいで全身蕁麻疹が出ていた。
「一生飲むな……」
悔しそうな河内さんを見て、申し訳なかった。
暫く落ち着くまで二人で夜景を見ていた。
「あ、言うのを忘れていた。今度出張で遠くに行く。優美にも同行してほしい」
「え、私も?」
「ああ」
出張に同行!
私は期待してワクワクしていた。
あんな事が起こるとも知らずに――。
雨の日の出勤は憂鬱。
「雨だな」
「困りましたね~」
二人で迎える朝はどんな天気でも平和だ。
「一緒に車で行くんだから関係ないだろ」
「いえ、私は電車で行きます」
「なんでだよ……」
また河内さんが落ち込んでしまった。
「特別扱いされるのはもう嫌なんです」
「俺たちは恋人だろ。特別だ」
河内さんの目に迷いはない。
「でも仕事では特別扱いはだめですよ」
裏秘書みたいな状態だけど、もうコソコソするのも罪悪感があって嫌だった。
「じゃあお前は今日、雨の中電車で行くのか?」
「はい」
呆れて先に準備をして、河内さんは行ってしまった。
そして……ついにきてしまったこの時が――
「藤田さん、結局“企画開発部”って何?藤田さんしか配属されてないんでしょ?本当は副社長に囲われてるんでしょ?」
前の部署の先輩に公然と質問されてしまった。
昼休憩中だったから、前の上司もいないし、社員もまばら。
でも見られている……。
「どんな事したら、そんないい仕事ができるの?羨ましい。何もしてなくても給料もらえて」
“何もしてない”……?
この人だけには言われたくなかった。
「私はやってます仕事を。この部署にいた時、あなたに仕事を押し付けられてもやってました」
私は前を向いた。
「私は今もちゃんと自分のやるべきことをやってます!ちゃんと副社長の秘書業務をやってます!」
………言ってしまった。
勢い余って……。
「秘書……!?」
フロアがざわついた。
まずい……これは……。
「……やっぱり副社長と仲良しなんじゃない。でもあの人、秘書と昔トラブルがあって、もう秘書を置かないって聞いてたけど?」
え……?
私の唖然とした顔に、クスッと先輩は笑った。
「勘違いしない方がいいわよ」
……そんなトラブルがあったの?
寝耳に水だ。
でも――
「勘違いはしてません!」
私の隣には永瀬さんがいる。
昼休み中に会いにきてくれた。
「最近二人がどうなったか気になって来たのに、どうしたの?」
「前の部署の先輩に、河内さんが昔秘書とトラブルがあったって言ってて」
「あーなんかあったかも。あまり知らないけど」
胸がザワザワして、嫌な感情が渦巻く。
「でも、ちゃんとまだ恋人なんだね。安心した」
「私も永瀬さんと話せて、気持ちが楽になりました」
私たちの関係を唯一ちゃんと知っている人。
「わからない事は本人に聞きなよ。考えてても仕方ないし」
「うーん」
それを聞いたからといって、特に今の関係が変わるとは思わないけど……。
「ストレス発散したいです!」
「あーじゃあ仕事終わったらカラオケいこう!」
永瀬さんがのってくれた。
そして、仕事が終わった後、カラオケで二人でたくさん歌って笑ってスッキリして出てきた。
「永瀬さんありがとうございます!」
その時、永瀬さんの表情が固まった。
嫌な予感がした。
振り返ると……また河内さん。
「何をしているんだお前らは」
「なんで突然いつも現れるんですか!!」
河内さんは永瀬さんの方に行った。
「優美に何もしてないよな?」
「あの子のあの様子で何かあったと思う?」
永瀬さんはやや呆れている。
二人ともお酒を飲んでフラフラした私を見ている。
「飲めないんだろお前!?」
「ストレス発散したくて飲んじゃったんです。なんか体痒いです!」
私は急いで河内さんの家に連れて行かれた。
河内さんのベッドで横になった。
「何かあったのか?」
「……前の秘書の方と何かあったんですか?」
河内さんは少し驚いた後、冷静な表情になった。
「ああ。恋愛感情を持たれていて、強く迫られて、ややストーカー気味になって、秘書をやめさせた」
そんな事があったんだ……。
「それは大変でしたね……」
河内さんに睨まれた。
「誰から聞いた」
「前の部署の先輩です……。秘書の仕事してるって言ってしまって、そしたらそれを言われました」
河内さんはため息をついた。
「わざわざ“企画開発部”を作った意味がない」
「そんな事ないです!今は何か言われても言い返せますけど、あの時は無理でした……」
私はあの時からだいぶ変わったと思う。
「逞しくなったな。もう秘書と言ってしまった以上、堂々としてろ。お前はちゃんと仕事をしてる」
「……私、役に立ってます?」
河内さんの目の色が変わった。
何……?
「優美が一生懸命仕事する姿に俺はやる気をもらえる。と同時に……崩したくなる」
「崩す……?」
怪しげな瞳が私を捉える。
「俺にしか見せない表情を見たくなる」
服のボタンが外されていった。
「河内さん、私……」
「なんだ」
「全身痒いんです……」
アルコールアレルギーのせいで全身蕁麻疹が出ていた。
「一生飲むな……」
悔しそうな河内さんを見て、申し訳なかった。
暫く落ち着くまで二人で夜景を見ていた。
「あ、言うのを忘れていた。今度出張で遠くに行く。優美にも同行してほしい」
「え、私も?」
「ああ」
出張に同行!
私は期待してワクワクしていた。
あんな事が起こるとも知らずに――。
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