【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

かんじがしろ

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国興し

18 無人の集落

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 樹海の深緑絨毯を見下ろすほどの大木の枝に、二十五人ほどの兵隊人形妖精が、二人一組で投網を支えながら腰掛けていた。

 大木の枝には、ラグビーボールぐらいの薄桃色したハチの巣が十個ほどブラさがっている。
妖精ハチドリたちは、兵隊人形妖精たちに葉っぱでくるんだ花蜜を手渡していた。

「これが、サニー大精霊が産まれた老樹ですか~、妖精ハチドリの巣、少なくね~。」
「老樹の年齢は、まだ五千年だもの。」
「若い老樹なのに、大精霊になれたのは、伴侶殿と最上級精霊からの授かり~?」
「確かに、二人から授かった力ですが、私の努力結果もです。」
「お~おぉ~。」
自慢げにしているサニーに、新しく入った投網隊は、皮肉を込めた感動声を上げた。

 サニーのそれぞれの手には、色落ちしたピンク色魔石と真新しい真っ赤な魔石を握りしめている。
「軍隊魔蜂の巣に着いたら、魔法は使えない。そして、みんなの相手は、親衛隊伴侶魔蜂である。雑魚の軍隊魔蜂の相手はなるべく避けて、後方支援隊に任せろ。」
「魔蜂女王は何故に多くの親衛隊伴侶魔蜂を伴侶できるのだろう?」
「うらやましいの?」
「まさか。私は一人でいいわ。」
「やっぱり愛は一人に捧げたいわ。」
「だよね~。」
「魔蜂女王は生殖が目的で、愛は二の次かもよ。」
「子孫を残す義務感か、本能からでしょう。」
枝にとまっている兵隊人形妖精たちは、葉っぱを開いて残りの花蜜をなめながらも、複雑な顔して首を振り相槌を打った。

 サニーは「魔力貯蔵庫の拡張」儀式において、C-001号と空母艦のコンピュータプログラムさえも学習していて、空母艦のコンピューターの知識を使い、それぞれの役割指揮官を任命したことで、兵隊人形妖精たちは未熟ながらも組織単位で行動できるようになっていた。

 樹海の深緑絨毯上空に、光を反射させている群れが近づいてきた。

 兵隊人形妖精たちは大木老樹の枝から、一斉に光を反射させている群れと合流するために、群れの進行方向に飛翔していった。

 薄暗い森の中を、サニーと投網を持った背丈が伸びた五人の妖精と、二人一組で投網を持った十人の兵隊人形妖精たちは、其々が総勢二百人の兵隊人形妖精たちを指揮しながら、軍隊魔蜂の巣を取り囲むように、森の中で羽音をさせないように地面を静かに歩いていた。

 軍隊魔蜂の縄張り警戒園五十メートルに近づくころ、頭上の枝葉を静かに揺れだしたと感じると同時に、枝葉を切り散らすように石飛礫やら、氷やガラス質の空気と水の矛先が五十メートル先に降り注いだ。

 幹や枝葉の影に隠れていた軍隊魔蜂は、一斉に頭上の枝葉に突っ込んでいった。
軍隊魔蜂が飛び出すと同時に、サニーもすぐに駆けだして、「突撃!」と、叫んだ。

 サニーが三十メートルほど進んだ先で住処を確認すると、
巣の中から次々と軍隊魔蜂と共に、一回り大きな親衛隊伴侶魔蜂も出て来た。

「魔素、固定!」とサニーが叫ぶと、妖精たちが一斉に飛翔した。

 ピンク色魔石と真新しい真っ赤な魔石は、前回よりもさらに輝いた。

 巣の中から出て来た軍隊魔蜂は六十匹ほどで、打合せ通りに兵隊人形妖精は三人一組となり、出て来た軍隊魔蜂目掛けて突進した。

 投網を持った妖精達の後ろには、其々援護隊三人の槍を持った兵隊人形妖精が付いていた。

 投網を持った妖精達は優位高度を確保しようと、七匹の親衛隊伴侶魔蜂の頭上まで飛翔し、親衛隊伴侶魔蜂に向かって一斉に投網をかぶせた。

 投網に絡まった親衛隊伴侶魔蜂が落下すると、投網隊の後ろで控えていた槍を持った兵隊人形妖精が一斉に襲い掛かった。

 森の中では投網に、樹海の深緑絨毯上空では広範囲大網に頭を突っ込んでもがいている軍隊魔蜂に対して、三倍以上の数を有する兵隊人形妖精達の攻撃は容赦なく、一方的な殺戮場と化した。

 森の中では、五人の教官妖精達は、軍隊魔蜂や親衛隊伴侶魔蜂の翅を切り取っている兵隊人形妖精達に加わる事無く、五人は住処を取り囲んで、生まれたばかりの軍隊魔蜂の頭を潰し終えると、住処の壁を壊し剝がし、女王魔蜂を引きずりだして地面に落とした。

 サニーの魔法阻害で攻撃魔法を行使出来ない女王魔蜂は、魔法以外の攻撃方法を持っていないためにただ身をくねらせながら、ときたま、飛び立とうと翅を立てるが、五人の教官妖精達に阻止された。

 サニーは女王魔蜂が絶命したことを確認して、白くなった魔石とピンク色した魔石を腰の革袋にしまった。

 妖精達は、多くの無傷翅を確保した妖精たちから歓声が上がった。
「サニー、女王魔蜂の翅も無傷だ!」
「鎮守様も、翅を持てるのね。」
「また、ステップ足が観賞できるわ。」
「後、巣を片付けて、帰りましょう。」

 五人の妖精たちが、
「刃竜巻!」と、叫んだ。

 女王魔蜂と住処は原型を思い描けないほどの土塊となり、周りの草木の影に落ちて肥やしになるのに都合よい大きさであった。

 兵隊人形妖精達が、軍隊魔蜂の住処を探している最中に白い森を発見した。
白い森の場所は樹海外側で、人里近くであった。
里の集落からは人の気配がなく、無人集落に感じたが、白い森の近くなので瘴気病の可能性があるかもと妖精たちは感じた。

 兵隊人形妖精達からの報告を受けた女王魔蜂の翅を付けた鎮守様は、鹿島とサニーに五人の精霊見習い妖精たちを集めて、
「樹海外側にある人里へ、調査に向かう。サニーは防菌服を着用し、運べるだけの抗生薬を持って爆撃機にきなさい。ほかの五人は、白い森の浄化を指揮しなさい。タローは、爆撃機に塩素液を十個のポリタンクに入れて用意し、四駆動車に積み込みなさい。」

みんなが飲物容器をそのままにして、食堂ホールから飛び出した事で、鎮守様は食器を片付け始めたが、いつものステップ足ではなかった。

 爆撃機の眼下を眺めると、深緑絨毯が段々と黄緑に変わって、山裾野には低木だけが繫っていた。

 鹿島は爆撃機を樹木の影に隠すように、低木を押しつぶしながら着陸した。

 爆撃機から屋根なし四輪駆動車が地面に降りると、タラップが自動でせり上がり胴体扉は閉まった。

 鎮守様は母艦が惑星軌道上で記憶していた地形図から写し取った地図と、コンパスで方向を確認しながら後部座席から東の方を指差した。

 四輪駆動車は低木と藪を踏みつけながら東の方角へ向かうと、やや大きめな幹が進行方向先に立っていた。

 目だけが透明なプラスチックの白い防菌服を着たサニーが、助手席で立ち上がり、可愛いらしい手に防菌手袋をしたまま、「半月刃。」と口部分に取り付けた清浄呼吸器の裏側から叫ぶと、車線先のやや大きめな幹を切断した。

 四輪駆動車は裾野の低木を踏み潰す度に、悪路道地面は車体を大きく揺らしながら、人気のない静かな集落入り口に着いた。

 集落周りには粗末な防護囲いがあり、四メートル幅ぐらいの真っ直ぐな道の脇に、粗末な住まいが五十棟ほど並んでいた。

「死屍の匂い。」
と、防菌服を着用していない鎮守様が呟いた。

 鹿島とサニーは防菌服に取り付けてある清浄呼吸器を抑えるが、においを感じないと首を傾げた。

 粗末な集落防護囲いは真っ直ぐな道を塞ぐように、一メートル幅ぐらいの粗末な格子扉があり、開きっぱなしの扉に触れることなく三人は徒歩で入り口から入った。

 鹿島は入り口脇の詰所みたいな掘っ立て小屋に入ると、奥の一間に粗末な鎧を着て、黒い皮膚に、ほほがこけた二つの死体を確認した。
「黒い皮膚をした、二人が死んでいる。」

 鎮守様は防菌手袋とマスクをして小屋に入り、死体の口にプラスチック紙を差し込んで、携帯顕微鏡でプラスチック紙を覗いた。
「モス繭(まゆ)が保持していた病原菌だ。おそらく瘴気病だろう。」
「サニー。生存者を探そう。」
と、鹿島が小屋から出ようと振り返ると、
「無駄だ。生命の反応がない。」
と、鎮守様は静かにつぶやいた。
「しかし、一人ぐらいは。」
「タローちゃんと、サニーちゃんは、奥の死体共々小屋全体をすべて焼き払いなさい。私は、井戸と水源を調べます。」
と言って一人で集落中心部へ向かった。

 鹿島とサニーが小屋隣から一軒ずつ声掛けながら屋内に入っていくと、
「火炎放射器。」
との怒り声が響き、粗末な住まい内側から煙が噴き出て来た。

 二人は同じ様に粗末な小屋を、順番に焚き付けていった。
井戸のそばに立っている鎮守様は、ポリタンクの塩素液を井戸に流し込んでいた。

「川の水源は、汚染されていないが、井戸は汚染している。」
と、さびしげに呟いた。

 全ての建造物は、黒い煙を上げながら炎上している。
「遺体を埋葬したいが、今は時間が欲しい。一人でも多く救いたいので、直ぐに次の集落へ向かう。」
と、鎮守様は、炎を見つめている鹿島とサニーをせかせた。
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