サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

文字の大きさ
194 / 205
第六章 ベトナム旅行記・アイスコーヒーウイズミルク

194

しおりを挟む
       第十六話


 翌日、朝七時頃に部屋をドンドンと叩く音で目が覚めた。

 「ペロ吉ィ~、先に市場の屋台に行ってるよ!」

 本当に彼女達は元気だなぁ、と感心しながら重い体を起こしてシャワーを浴びた。

 昨夜はあれから彼女達の部屋で大富豪というトランプゲームで二時間くらい遊んだのだが、このゲームは最も早く上がった者が大富豪で、ビリの者は大貧民と名付けられ、中間の者は平民と呼ぶのである。

 しかしシステムとしては弱者いじめというか、大貧民は最初配られたカードから最も有効なカード(ジョーカーが最も強く、次に二のカード、次にエースのカードという具合で、最も弱いカードは三のカードということになる)を一枚大富豪様に進呈し、大富豪様は大貧民に対し、配られたカードの中で最も弱いカードを一枚恵むというものなのだ。

 これは明らかに民主主義の基本に反するもので、いわば戦前の日本帝国主義に通じる、弱いものを抑圧し支配するという人間の風上にも置けない行為であり、人類が長い歴史を経てようやく勝ち取った自由と平等の社会に相反するものではあるまいか。

 ちょっと大げさだが、要するに僕はこのゲームを普段殆どしたことがなく、勿論やり方は知っているが、彼女達の方がよく知っていて、最初に大貧民になった僕は最後までずっと大貧民のままで、少し気分を悪くして部屋に帰ったのであった。

 そんなことは地球的規模で考えればどうでもいいことなのだが、昨夜彼女達の部屋から帰る頃にはポツポツと雨が降り始めており、今朝は土砂降りというほどではないが、シトシトと鬱陶しく雨が降り続いているのである。

 僕は急いで綿パンにTシャツという格好で、朝食を摂るために市場の屋台に出かけていった。

 昨日の昼食を摂った市場の屋台は、まだ七時半頃だというのに大勢の人でごった返していた。
 僕は彼女達がいる昨日のオバちゃんが切り盛りする屋台の前に座り、人差し指を一本だしてフォーを注文した。

 「ヤッパリ雨だったねぇ」

 「でもどうせトレッキングで汗をかくんだからいいじゃないか」

 「マイケル君達、バイクで迎えに来るかなぁ?」

 「いや、絶対に来るって、彼等は商売なんだから」

 といったような話をしながら朝食を済ませ、(本当にこのフォーというベトナムうどんは美味しくて飽きない)食後のベトナムコーヒーが飲みたいねぇと、昨日のカフェの方向に歩いて行った。

 そのカフェには僕達の宿の前を通って行くのだが、宿の前には二百五十CCくらいのバイクに乗ったベトナム青年三人が既に待機していた。

 彼等は僕達に何か話しかけてきたが、ベトナム語なのでさっぱり分からない。

 おそらく、「今日のトレッキングに行くのはは君達だね」というようなことをいっているのだと思うが、マイケル君がまだ来ないので、僕達はカフェの方向に歩いて行った。

 この時点ではまだ三人とも、「雨だし、どうしようか~」というふうに、余りの乗り気でなかったに違いない。

 さて、カフェに着いてみると早朝から営業は行っておらず、やむなく宿に戻った。
 すると宿の前には既にマイケル君が到着していて、「モーニン!さあ行こうぜ!」といった感じで気合が入っているのだ。

 「よし行こうよ!」

 僕達はそれぞれの部屋に着替えに戻り、僕は彼女からもらったラオスの半パンに白のタンクトップに青いチェックのシャツを着て、頭には紺に赤のペイズリーのバンダナという、センスの微塵も感じられない冴えない格好で降りていった。

 相変らず雨は降り続いており、彼女は赤の短いレインコートにカーキのパンツとサンダルを履き、頭には例のベトナム人民三角帽(ノン)といった、ベトナムのファッション雑誌に乗っても不思議でないような風貌であった。

 オレンジさんも赤の短いレインコートに茶のパンツにサンダルといった格好で、二人ともなかなかお洒落で用意がいいのだ。

 彼女は僕にピンクの、簡易レインコートとでもいおうか、一応頭から被って両腕を通すことのできるナイロン製の雨具を手渡し、「これはフエ(ベトナム中部の都市)で買った雨具なんだよ。使って!」と言った。

 このあたりは割と彼女の心遣いを感じたので、昨日の大富豪の件は帳消しにしてやろうと思った。

 僕達は三人のバイクの後部座席にそれぞれ跨り(マイケル君のバイクは三人乗りで彼女はサンドイッチ状態である)、マイノリティーの部落へ出発した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...