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第3章 強くなるために
おいてけぼり
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毎日、薬草採取に森へ出かけて、毎日ディーに投げられて、最近では朝晩アレクに飯を催促させられて、俺の毎日はクタクタになるまでがお決まりとなった。
でも、ゆっくり風呂に入って、ご飯をたくさん食べて朝までぐっすり寝たら次の日には元気満タン。
ディーには「ガキだからさすがだな」って言われた。年齢は関係ないと思うぞ?
そんな感じで見習い登録から3ヶ月。今日のギルドはいつもと違った。ギルドに入った瞬間からざわついている空気に違和感を覚えた。
「群れだってよ」
「群れって言っても普通の群れの数じゃねぇ」
「しかも街道沿いだぞ」
「これは特別依頼じゃねぇか?」
群れ?普通の数じゃない?街道沿い?それに、"特別依頼"ってなんだ?
依頼板の前にはこの時間には珍しい人だかり。俺が朝来る時間帯は大体の冒険者が依頼を受けたあとだからこんなにも冒険者が居ることが珍しい。
酒場で飯を食ってる冒険者もいたが、大半の冒険者は依頼板の前で何かを見ている。
俺より背の高い冒険者たち。俺からはザワつくほどの依頼がどの様な依頼なのかが全く見えない。
くそぅ、これじゃ俺が受ける依頼も見えないじゃないか。
「仕方ねぇな、カウンター行くか」
そう言ってディーは依頼板を素通りしてカウンターへ直接向かう。俺も慌ててそれを追う。
「なぁ、"特別依頼"ってなんだ?」
「ちょっと厄介な依頼で、普通は組まねぇんだが、別の冒険者同士で組んで依頼をしたりだとか、ちょっと変わったヤツ」
「へぇ」
何となくわかった。街道沿いにいつもよりも数の多い厄介な魔獣か魔物が出たって事だな?だからあそこに群がってる冒険者は「個々の冒険者よりも何人かで組んで行った方が良くないか?」って言うことを話してたんだな、多分、そういう事だろう。
「あ!ディーさんお待ちしていました!依頼板見ていただけましたか?」
「あんな人だかりじゃ見れねぇ」
「ですよね、すみません」
なんだかディーが来るのを待っていたっぽい?
なんだろう?もしかして"特別依頼"に関わりがあったりして!!そしたら俺も一緒に行けるじゃん!
ワクワクした気持ちが表情に出たのだろうか、いつもの犬耳お姉さんは俺に向かって耳を垂れて申し訳なさそうに愛想笑いをした。
え、何その反応?
「街道沿いにヴェノムタランチュラが大量に出てしまって、ディーさんとあちらにいらっしゃる冒険者達と討伐してきて欲しいのです」
犬耳お姉さんが手で示した先には酒場の席に座ってる冒険者4名。俺は見たことがないから朝早く依頼に出かけて、俺よりも遅く達成の報告に来ている人たちなんだろうな。
「わぁ、ディーすごい!これさっき言ってた"特別依頼"だよな?」
「お前は留守番」
「え、なんで」
ディーがため息混じりに言う言葉が俺には信じられなかった。
「ごめんね、エルくんには危なすぎて同行の許可は出せないわ」
犬耳お姉さんまでもダメだと言う。
「なんでぇ?俺だってダイアウルフ2匹も討伐したし、最近はディーとの組手で避けられる事も増えてきたのにぃ!」
「相手はヴェノムタランチュラだ。ダイアウルフとは訳が違う。タランチュラは群れで動かないはずだが、まだ幼体か?」
「そのようです。群れの中で共食いもしてるようですが、なにぶん数が多くて、受けていただけますか?」
ディーと犬耳お姉さんは俺を無視して話を進めてしまう。
「ああ、分かった。今からだな」
「はい、ありがとうございます」
話が纏まってしまった。俺はお留守番?ディーの見習いなのに?……なんでだよ。
犬耳お姉さんが片手をあげると、先程の冒険者がぞろぞろと集まってくる。少し打ち合わせをしたらみんなでギルドを出ていってしまった。
行き際に「ここで待ってろ」ってディーに言われたけど、それがただただ悔しい。
「エルくんごめんね、幼体でもヴェノムタランチュラは危険なの。毒糸吐くし、ダイアウルフとは比べ物にならないから」
「俺だってディーに稽古つけてもらってるし、最近じゃ避けれるようになって、成長もしてるのに」
……なのに言外に"お前じゃ無理、お前はまだ弱い"と言われたんだ。悔しいに決まってる。
「まぁまぁ、見習いだからってどこまでも着いて行ける訳じゃねぇしな」
「そうそう、俺らだってもっときっつい言葉で"無理だ"って言われてんだし」
「大人しく俺らと待ってようぜ」
「俺らもあれ討伐してくれないと自分の依頼に出れねぇし」
依頼板の前から移動して俺のフォローに回ってくれる冒険者たち。
うぅ、いつも俺の事"見習いくん"とか"草むしり要員"って馬鹿にするのに、いい奴らだったんじゃん。
「よっし、じゃあ優しいお兄さん達がジュースを奢ってやろう」
「あぁ、俺らは優しいなぁ」
いや、お前ら4人でジュース1杯って1人いくらだよ。
そんな思いが顔に出てたのか「あれ?いらない?」なんて言われてしまった。
「いるし!飲むし!4杯飲むし!」
なんだか悔しくて1人1杯は奢らせてやろうと強気で言い切った。
あ、でもアレク、入れっぱなしだと苦しくないか?とショルダーバッグを撫でる。が、居ない?
いつもアレクが入ってるからぽっこりしてるのに、そのぽっこり感が無い!!
がばっと勢いよくカバンを開けた。
「うぉっ、いきなりどした?」
「あ、いや、えと、財布を、ディーに預けっぱなしで食い物食えねぇなって」
冒険者たちには必死で誤魔化したけど、……居なかった。アレクが居るはずのカバンの中はもぬけの殻だった。
え?なんで?今までこんな事なかったのに。もしかしてアレク着いて行ったの!?でもどうやって?
「しっかたねぇなぁ、飯も奢ってやるよ!ありがためよー」
ケラケラ笑う冒険者たち。
俺は2人に置いてけぼりにされて、内心泣きたかった。
でも、ゆっくり風呂に入って、ご飯をたくさん食べて朝までぐっすり寝たら次の日には元気満タン。
ディーには「ガキだからさすがだな」って言われた。年齢は関係ないと思うぞ?
そんな感じで見習い登録から3ヶ月。今日のギルドはいつもと違った。ギルドに入った瞬間からざわついている空気に違和感を覚えた。
「群れだってよ」
「群れって言っても普通の群れの数じゃねぇ」
「しかも街道沿いだぞ」
「これは特別依頼じゃねぇか?」
群れ?普通の数じゃない?街道沿い?それに、"特別依頼"ってなんだ?
依頼板の前にはこの時間には珍しい人だかり。俺が朝来る時間帯は大体の冒険者が依頼を受けたあとだからこんなにも冒険者が居ることが珍しい。
酒場で飯を食ってる冒険者もいたが、大半の冒険者は依頼板の前で何かを見ている。
俺より背の高い冒険者たち。俺からはザワつくほどの依頼がどの様な依頼なのかが全く見えない。
くそぅ、これじゃ俺が受ける依頼も見えないじゃないか。
「仕方ねぇな、カウンター行くか」
そう言ってディーは依頼板を素通りしてカウンターへ直接向かう。俺も慌ててそれを追う。
「なぁ、"特別依頼"ってなんだ?」
「ちょっと厄介な依頼で、普通は組まねぇんだが、別の冒険者同士で組んで依頼をしたりだとか、ちょっと変わったヤツ」
「へぇ」
何となくわかった。街道沿いにいつもよりも数の多い厄介な魔獣か魔物が出たって事だな?だからあそこに群がってる冒険者は「個々の冒険者よりも何人かで組んで行った方が良くないか?」って言うことを話してたんだな、多分、そういう事だろう。
「あ!ディーさんお待ちしていました!依頼板見ていただけましたか?」
「あんな人だかりじゃ見れねぇ」
「ですよね、すみません」
なんだかディーが来るのを待っていたっぽい?
なんだろう?もしかして"特別依頼"に関わりがあったりして!!そしたら俺も一緒に行けるじゃん!
ワクワクした気持ちが表情に出たのだろうか、いつもの犬耳お姉さんは俺に向かって耳を垂れて申し訳なさそうに愛想笑いをした。
え、何その反応?
「街道沿いにヴェノムタランチュラが大量に出てしまって、ディーさんとあちらにいらっしゃる冒険者達と討伐してきて欲しいのです」
犬耳お姉さんが手で示した先には酒場の席に座ってる冒険者4名。俺は見たことがないから朝早く依頼に出かけて、俺よりも遅く達成の報告に来ている人たちなんだろうな。
「わぁ、ディーすごい!これさっき言ってた"特別依頼"だよな?」
「お前は留守番」
「え、なんで」
ディーがため息混じりに言う言葉が俺には信じられなかった。
「ごめんね、エルくんには危なすぎて同行の許可は出せないわ」
犬耳お姉さんまでもダメだと言う。
「なんでぇ?俺だってダイアウルフ2匹も討伐したし、最近はディーとの組手で避けられる事も増えてきたのにぃ!」
「相手はヴェノムタランチュラだ。ダイアウルフとは訳が違う。タランチュラは群れで動かないはずだが、まだ幼体か?」
「そのようです。群れの中で共食いもしてるようですが、なにぶん数が多くて、受けていただけますか?」
ディーと犬耳お姉さんは俺を無視して話を進めてしまう。
「ああ、分かった。今からだな」
「はい、ありがとうございます」
話が纏まってしまった。俺はお留守番?ディーの見習いなのに?……なんでだよ。
犬耳お姉さんが片手をあげると、先程の冒険者がぞろぞろと集まってくる。少し打ち合わせをしたらみんなでギルドを出ていってしまった。
行き際に「ここで待ってろ」ってディーに言われたけど、それがただただ悔しい。
「エルくんごめんね、幼体でもヴェノムタランチュラは危険なの。毒糸吐くし、ダイアウルフとは比べ物にならないから」
「俺だってディーに稽古つけてもらってるし、最近じゃ避けれるようになって、成長もしてるのに」
……なのに言外に"お前じゃ無理、お前はまだ弱い"と言われたんだ。悔しいに決まってる。
「まぁまぁ、見習いだからってどこまでも着いて行ける訳じゃねぇしな」
「そうそう、俺らだってもっときっつい言葉で"無理だ"って言われてんだし」
「大人しく俺らと待ってようぜ」
「俺らもあれ討伐してくれないと自分の依頼に出れねぇし」
依頼板の前から移動して俺のフォローに回ってくれる冒険者たち。
うぅ、いつも俺の事"見習いくん"とか"草むしり要員"って馬鹿にするのに、いい奴らだったんじゃん。
「よっし、じゃあ優しいお兄さん達がジュースを奢ってやろう」
「あぁ、俺らは優しいなぁ」
いや、お前ら4人でジュース1杯って1人いくらだよ。
そんな思いが顔に出てたのか「あれ?いらない?」なんて言われてしまった。
「いるし!飲むし!4杯飲むし!」
なんだか悔しくて1人1杯は奢らせてやろうと強気で言い切った。
あ、でもアレク、入れっぱなしだと苦しくないか?とショルダーバッグを撫でる。が、居ない?
いつもアレクが入ってるからぽっこりしてるのに、そのぽっこり感が無い!!
がばっと勢いよくカバンを開けた。
「うぉっ、いきなりどした?」
「あ、いや、えと、財布を、ディーに預けっぱなしで食い物食えねぇなって」
冒険者たちには必死で誤魔化したけど、……居なかった。アレクが居るはずのカバンの中はもぬけの殻だった。
え?なんで?今までこんな事なかったのに。もしかしてアレク着いて行ったの!?でもどうやって?
「しっかたねぇなぁ、飯も奢ってやるよ!ありがためよー」
ケラケラ笑う冒険者たち。
俺は2人に置いてけぼりにされて、内心泣きたかった。
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