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第3章 強くなるために
討伐 *ディー視点
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異様なほど静寂だった森に響くのは、
糸を吐く音、木々を這うざわめき、剣や斧が魔獣の体を裂く音。
戦場の音だけが森を支配していた。
「一旦燃やす!下がれ!」
誰かの叫びに合わせて全員が一斉に下がる。
一息置いた後、前方一面に炎が走った。
木々が爆ぜ、焦げた臭いが広がる――だが、燃えながらもなお突っ込んでくるやつがいる。
「チッ……」
舌打ちと同時に、斧を横に薙ぐ。
雷撃をまとった刃が閃光のように走り、複数のタランチュラを一撃で吹き飛ばした。
地面が焼け焦げ、煙の向こうで倒れる脚が蠢く。
「サンキュっ、にしても数が多いな!」
仲間の声が響くが、息を整える間もない。
まだ、森の奥から“這う音”が続いている。
しかし、無限に湧き出てくるはずはないのだと、向かってくるタランチュラを倒していく。
3匹同時に飛びかかってきた時、1匹だけ仕留め損ねた。
「チッ」
この数だ、多少の怪我は仕方ないと、覚悟した時、俺の腰のあたりから火球が飛んできた。
「は?」
なんだ今の。ただそのおかげで一瞬の隙が出来た。その隙を狙って斧を凪ぐ。
嫌な予感がしてベルトポーチを見ると……居た。何故かアレクがベルトポーチの上にしがみついている。
「な、おまっ、」
「おい、前」
前方から2匹、俺に飛びかかってきていた。
「くそっ」
豪快に斧を凪いで電撃と共に吹っ飛ばす。
「なんでこんなとこに居やがるっ」
右から3匹、糸を吐き出しながら襲ってくる。
アレクが火で糸を瞬時に焼く。その瞬間、斧で一気に叩き潰す。
「ギルドに居ても暇じゃん?ずっとカバンの中だし」
アレクが言いながらも火球などで手助けしてくれる。
襲ってくるタランチュラを捌きながら、周囲に目を走らせる。
俺よりも、あいつらの方がやばそうだ。
「アレク、俺よりもあっち。こっそり手伝えるか?」
「ガッテン承知!」
言うが早いか、アレクの姿が風と共に消えた。
「はっや」
目で追えないほど早かった。
俺は自分に襲いかかってくるタランチュラを1匹も逃がさず仕留めていく。
「え!?」
「何なにどういう事!?」
若い衆が騒ぎ始めた。姿は見られていないようだが、どこからか突然、火球がタランチュラに向かって行くのだ。
それは誰でもびっくりするだろう。
そうこうしているうちに、数が減ってきたようだ。視界の端でこっそりと逃げる奴が居たが、漏らさず仕留める。
「終わった……?これで本当に最後?」
最後の1匹と思われる個体を倒してようやく一息つく。
「……終わったみたいだな。それにしてもすごい数だったな」
「幼体って言うにはデカかったっすよー」
「あー、帰ってシャワー浴びてぇ」
それぞれが口々に言っているが、俺はそんな事よりアレクを探していた。
あんな奇妙な魔物、見られでもしたら大騒ぎだ。
「それにしても、あの火球なんだったんすかねー」
「そうそう!一瞬変異かと思って焦ったわ」
「でも俺らのこと助けてくれたっすよねー」
「俺らの加護でも着いてんのかな?」
「妖精とか精霊の仕業だったりとかして?」
「確かに初めてだったしな、あんな事」
「「妖精か精霊か存じませんがありがとうございました!」」
ヴェノムタランチュラの死骸が転がっている中、若い2人が空に向かって頭を下げ、お礼を言っている姿が奇妙だった。
さぁーっと風が吹き、ベルトポーチの重みが増す。盗み見するとアレクが戻ってきていた。相変わらず早いな。
「うぉー、今の風は返事か?やっぱり居たんだ!妖精様!?精霊様!?それとも女神様!?」
「やべー、俺ギルド戻ったら自慢してやろ!みんな羨ましがるぞ!」
若いだけあって元気だな。
「はぁ。はしゃぐのもいいが、討伐数確認して、1匹だけ持って帰るぞ」
1番年上の冒険者がパンパンっと手を叩いて場を仕切る。
あー、この数数えるのか、面倒だな。
5人で手分けして数えて、全部で53匹も居た。
成体になりかけの幼体が53匹も、だ。
大きな怪我もなく無事に討伐できて良かった。……アレクの助力のおかげも大いにあるが。
小さめのタランチュラを若いふたりが運ぶことになり、ギルドへと帰る。
ギルドの扉をくぐると一気にざわついた。ほっと安心する奴ら、討伐の速さに驚くヤツら、持って帰ってきたタランチュラを見て驚く奴ら。
「ディー!」
咄嗟に声の方へ向き直る。
そこにはほっと安心したような、でも置いてけぼりにされた悔しさが滲んだなんとも言えない顔のエルが居た。
「おぅ」
エルの後ろにはいつもエルをからかっている複数の若い冒険者と、飲み食いした残骸。
……楽しんでいたようで?
少しイラッとしたらアレクのことも思い出し、むんずとエルの耳を引っ張って「帰るぞ」とそれだけ告げる。
「え?痛い!離してってば!なんで怒ってるんだよぉぉお!」
ギルド内にエルの声が響いたが、気にせずそのまま宿へ向かった。
後ろから受付の「明日お待ちしていますー!」という声が聞こえた。
糸を吐く音、木々を這うざわめき、剣や斧が魔獣の体を裂く音。
戦場の音だけが森を支配していた。
「一旦燃やす!下がれ!」
誰かの叫びに合わせて全員が一斉に下がる。
一息置いた後、前方一面に炎が走った。
木々が爆ぜ、焦げた臭いが広がる――だが、燃えながらもなお突っ込んでくるやつがいる。
「チッ……」
舌打ちと同時に、斧を横に薙ぐ。
雷撃をまとった刃が閃光のように走り、複数のタランチュラを一撃で吹き飛ばした。
地面が焼け焦げ、煙の向こうで倒れる脚が蠢く。
「サンキュっ、にしても数が多いな!」
仲間の声が響くが、息を整える間もない。
まだ、森の奥から“這う音”が続いている。
しかし、無限に湧き出てくるはずはないのだと、向かってくるタランチュラを倒していく。
3匹同時に飛びかかってきた時、1匹だけ仕留め損ねた。
「チッ」
この数だ、多少の怪我は仕方ないと、覚悟した時、俺の腰のあたりから火球が飛んできた。
「は?」
なんだ今の。ただそのおかげで一瞬の隙が出来た。その隙を狙って斧を凪ぐ。
嫌な予感がしてベルトポーチを見ると……居た。何故かアレクがベルトポーチの上にしがみついている。
「な、おまっ、」
「おい、前」
前方から2匹、俺に飛びかかってきていた。
「くそっ」
豪快に斧を凪いで電撃と共に吹っ飛ばす。
「なんでこんなとこに居やがるっ」
右から3匹、糸を吐き出しながら襲ってくる。
アレクが火で糸を瞬時に焼く。その瞬間、斧で一気に叩き潰す。
「ギルドに居ても暇じゃん?ずっとカバンの中だし」
アレクが言いながらも火球などで手助けしてくれる。
襲ってくるタランチュラを捌きながら、周囲に目を走らせる。
俺よりも、あいつらの方がやばそうだ。
「アレク、俺よりもあっち。こっそり手伝えるか?」
「ガッテン承知!」
言うが早いか、アレクの姿が風と共に消えた。
「はっや」
目で追えないほど早かった。
俺は自分に襲いかかってくるタランチュラを1匹も逃がさず仕留めていく。
「え!?」
「何なにどういう事!?」
若い衆が騒ぎ始めた。姿は見られていないようだが、どこからか突然、火球がタランチュラに向かって行くのだ。
それは誰でもびっくりするだろう。
そうこうしているうちに、数が減ってきたようだ。視界の端でこっそりと逃げる奴が居たが、漏らさず仕留める。
「終わった……?これで本当に最後?」
最後の1匹と思われる個体を倒してようやく一息つく。
「……終わったみたいだな。それにしてもすごい数だったな」
「幼体って言うにはデカかったっすよー」
「あー、帰ってシャワー浴びてぇ」
それぞれが口々に言っているが、俺はそんな事よりアレクを探していた。
あんな奇妙な魔物、見られでもしたら大騒ぎだ。
「それにしても、あの火球なんだったんすかねー」
「そうそう!一瞬変異かと思って焦ったわ」
「でも俺らのこと助けてくれたっすよねー」
「俺らの加護でも着いてんのかな?」
「妖精とか精霊の仕業だったりとかして?」
「確かに初めてだったしな、あんな事」
「「妖精か精霊か存じませんがありがとうございました!」」
ヴェノムタランチュラの死骸が転がっている中、若い2人が空に向かって頭を下げ、お礼を言っている姿が奇妙だった。
さぁーっと風が吹き、ベルトポーチの重みが増す。盗み見するとアレクが戻ってきていた。相変わらず早いな。
「うぉー、今の風は返事か?やっぱり居たんだ!妖精様!?精霊様!?それとも女神様!?」
「やべー、俺ギルド戻ったら自慢してやろ!みんな羨ましがるぞ!」
若いだけあって元気だな。
「はぁ。はしゃぐのもいいが、討伐数確認して、1匹だけ持って帰るぞ」
1番年上の冒険者がパンパンっと手を叩いて場を仕切る。
あー、この数数えるのか、面倒だな。
5人で手分けして数えて、全部で53匹も居た。
成体になりかけの幼体が53匹も、だ。
大きな怪我もなく無事に討伐できて良かった。……アレクの助力のおかげも大いにあるが。
小さめのタランチュラを若いふたりが運ぶことになり、ギルドへと帰る。
ギルドの扉をくぐると一気にざわついた。ほっと安心する奴ら、討伐の速さに驚くヤツら、持って帰ってきたタランチュラを見て驚く奴ら。
「ディー!」
咄嗟に声の方へ向き直る。
そこにはほっと安心したような、でも置いてけぼりにされた悔しさが滲んだなんとも言えない顔のエルが居た。
「おぅ」
エルの後ろにはいつもエルをからかっている複数の若い冒険者と、飲み食いした残骸。
……楽しんでいたようで?
少しイラッとしたらアレクのことも思い出し、むんずとエルの耳を引っ張って「帰るぞ」とそれだけ告げる。
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