小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜

れると

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第4章 リューべルへの道

盗賊

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 ノアラはノルデンへ向かう道の最終中継地点。
 俺からすれば、ノルデンを出てから最初の街。

 元はただの農村だったけど、ノルデンへの行き来で泊まる人が増え、宿町の側面も発展した街なんだそうだ。

 地図上で言うと、王都は地図の真ん中。ノルデンは王都から見て北北東。ノアラはノルデンのちょっと西。要するにまだまだ北。季節は夏だから寒くないけど。

 街に着いたらとりあえず宿を確保する。これは旅する人皆の常識。街に来てまで野宿はしたくないからね。
 宿の確保が出来たら俺たちはギルドへ向かう。

 目的は、スノーダックの羽毛を売る事!雑貨屋や道具やでも買ってくれるけど、足元見てきたり、安く買い叩かれたりする事があるから、ギルドで売るのが安心なんだって。

「お待たせしました。こちらが買取金額です」

 と受付のスラッとした背の高い白色に近いベージュの犬耳お姉さんは、硬貨の入った袋をドサッと置いた。

「ぇっ??」

 俺は驚きのあまり口が塞がらない。

 待って?スノーダックの羽毛ってそこまで高級だったの?

 ディーはそそくさとそれを仕舞う。

 本当は今すぐにでもに幾らだったのか、スノーダックってそんなに高級品だったのかってディーに聞きたいけどまだギルド内。お金の話は特に人のいるところではしない方がいい。

 俺もディーに倣って平常心を装ってギルドを後にした。



「スノーダック、そんなに高かったんだな……」

 ディーが綺麗に2等分してくれた羽毛の買取金額。アレクが「俺はいらねぇから2人で分ければ?」と言ったのでこうなった。
 結構重い。俺の見習いの2年間の依頼報酬よりも多いかもしれない。

 それでも1匹分の羽毛ではないのだ。捌く時に血が着いてしまったり、汚れている羽は全部置いてきた。持ってきたのは本当に綺麗なものだけ。

 ……1匹に満たない量だったのにこんなにって、そんなに貴重って事だよな。

「明日、出発するぞ」

「わかった」

 本当は良さげな依頼があれば受ける予定だったけど、アレクのおかげで当面の旅費は確保できた。
 ならば、距離を稼ぐに限る。

 なら、明日からのためにさっさと寝るに限る。
 食堂で温かい食事をとって、風呂でゆっくりして、俺たちは早々にベッドに入った。





 ノアラを出て3日ほど過ぎたころだ。
 次の街まではまだ距離があるけど、人が行き来する道だから、旅人や馬車と時々すれ違う。

 その日は空がどんよりしていて、風が湿っていた。
 なんだか、何かが起こりそうな、そうでもなさそうな、なんて言うか、嫌な予感が漠然と俺を襲っていた。

「なんか天気悪くなるのかな」

「湿気てるだけだろ。気にすんな」

 ディーはいつも通りだったけど、俺は妙に落ち着かなかった。

「天気悪いと気分も落ち込むよなぁ」

 今日は珍しくアレクが人型だ。
 俺の一言に否定するでも肯定するでもなくそんな言葉を返された。

 そんな時だった。

 前の道の少し先から、“バギッ”と木が折れるような音と共に男の叫び声が聞こえた。

「……今の、何?」

「行くぞ。あっちだ」

 ディーが一瞬で険しい顔になって駆け出す。
 俺たちも慌ててついていく。

 少し行くと、そこには荷馬車が横倒しになっていた。馬は怯えて暴れ、老人が必死に押さえようとしていた。

 そして
 5人の汚れた格好の男たちがナイフや剣を片手に荷馬車を囲んでいた。

「爺さん、金置いてけよォ。さっさとしねぇと、馬ごと殺すぞ?」

「やめ……やめてくれ……!」

 うわ……これ、完全に盗賊だ。

 俺が固まっている横で、ディーの気配が変わった。

「おい、やめとけ」

 低くて冷たい声だった。
 今までに聞いたことのない声音。

 盗賊の一人が振り向き、ニヤッと笑う。

「なんだぁ?冒険者か?子連れじゃねぇか。いい金になりそ──」

 男の言葉が終わる前に、ディーの拳が鳩尾にめり込んだ。

「ぐぼっ!!」

 ベキッと嫌な音がして男が吹っ飛んだ。

「ひっ……!」

「おい!やれ!!」

 残りの男達が俺とディーを囲むようにして刃物を構える。

「ガキを狙え!」

 誰かが叫んだ瞬間、2人が俺に向かってナイフを振り上げながら迫ってきた。

 それを瞬時に避けて足を狙う。

 男たちは俺が切って赤く血に染った足を抑えて懇願してきた。

「いてぇよぉ。見逃してくれよぉ、なぁ?」

 泣きそうな顔で俺に縋ってくる姿に、一瞬、たじろいた。

「っ……ぐふ!」

 その一瞬のうちに男はまだ手に持っていたナイフで俺に切りかかろうとした所を、アレクが思いっきり蹴飛ばした。

 ハッとして剣を握り直す。

「エル。こいつらは魔物より、卑怯で狡猾だ」

 ディーの言葉が身体に染み渡る。

 同じ手は効かないと判断した男たちはそれぞれに襲いかかってくる。

 でも、ディーやイディアの動きに比べたら全然遅い。俺は難なく躱して、振り向きざまに剣を入れる。

 魔物や魔獣と違って"声"がすごく生々しく感じた。

 程なくして、男たちは全員地面に伏した。
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