小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜

れると

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第1部 子爵家の次男

エイルとたのしいお風呂① *リュカリオ視点

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 俺はラパーチェ伯爵家の脱衣所で固まっていた。

 エイルとお風呂。まだ出会って2回目の逢瀬でこの触れ合いは濃厚すぎじゃないか??
 エイルはそれで良いのか!?

 ちらっと横に視線を移すとルンルンと服を脱いでいるエイル。

 エイルは平気みたいだな!?エイルの母上も終始にこにこしていて問題無さそうだったぞ。兄上とエイルの兄(えっと、名前なんだっけ?)は、いかん、覚えてないな!
 しかしここまで連れてこられてしまってはお言葉に甘えてお風呂を頂かなければ逆に失礼だよな?どうなんだ?わからん!こうなるのならばきちんと勉強しておけば良かった!

「リュカ様脱がないの?脱がないとお風呂出来ないよ?」

 素っ裸のエイルがひょこっと俺の顔を覗いてきた。

「んなっ!?」

 お、おお、落ち着け俺!相手はまだ3歳!幼児!股間に男の子のそれがぷらんぷらんしててもそれは幼児だから問題無い!俺がお兄さんになって気にせずお風呂を一緒すればいいだけの話!

「ねぇ脱がないの?」

「ぬ、ぬぬぬ、ぬ脱ぐ!脱いで風呂に入る!」

「っうん!早く早くっ」

 エイルに急かされて俺も急いで服を脱ぐ。ずっと一緒に走り回っていたから汗で素肌に張り付いて脱ぎづらい。ようやく脱いで、エイルと手を繋いでお風呂場に足を踏み入れる。

「いいかエイル、お風呂場で走っちゃダメだからな?」

 先程のエイルとその兄とのやり取りを思い出し、念の為注意を促しておく。

「うん!だいじょうーぶ。リュカ様お背中流してあげる!」

「うわっ、ちょっとまっ……。」

 バシャンっ

「……待てと言っただろ」

 エイルが手に持った手桶のお湯が俺の顔にかかった。耳に入らなくて良かったと心底思った。

「ごめんなさぁい」

 言葉では謝りながらも、俺に向かって笑うエイルは悪意の欠片も無い、純度100%の無邪気そのもの。

 可愛い、とりあえずキスしたい。

 いやいや、とりあえず汗を流さねばとエイルと2人並んで石鹸を手に取り泡立て洗い始めた。

「リュカ様お耳ってどうしてるの?」

「普通に洗うが?」

 謎の受け答えにエイルはキョロキョロと辺りを見回して少し声を潜めて俺に伺って来た。

「ねぇ、リュカ様のお耳と尻尾触りたい。……触らせて?」

「なっ、エイル、それがどういう事か知ってるのか!?」

 俺はきっと顔が真っ赤になっている事だろう。慌ててその意図を確かめる。

「う?兄上からは耳と尻尾の話はダメっていわれたけど、でも、僕のと全然違うし、リュカ様のふわふわで触ってみたいんだもん……」

 しゅん、としたエイル。なんだこの生き物、"だもん"とか可愛すぎる。
 いやいや、可愛いからって撫でちゃダメだ。……ダメなのか?いやだから今は冷静に、冷静に、けどちょっとだけなら……いや違う違う!

 あの兄がわざわざ「その話題はダメ」と釘を刺してきたのに、理由までは聞いていないのだな。
 なんか安心すると同時に、微妙にショックなのはなぜだろう。

 それにしても、俺たち四足歩行の肉食獣人にとって、耳と尻尾は親しい者以外には触らせない部位。
 逆に「触りたい」と申し出るのは、プロポーズと同義――って、え?待って、これって……。俺、今プロポーズされた……のか……?
 ていうか!もしかしてもう仮婚約ではなくて婚約してるってことになってる!?

 一人で悶々と考え事をしていたら、エイルの手がぴょこっと出てきた。

「だめぇ?」

 エイルの純度100%の純真無垢なオリーブグリーンが俺を射抜いてくる。

 か、かわいい……やめろそれは反則だ……っ!

「……ほんとに、触りたいのか?」

「うんっ!」

 うう……こうなったら……。

 ここで「ダメ」って言ってしまえば、エイルはきっと「そっかぁ」ってちょっとだけしょんぼりして終わる。
 けれど、けれどだ。
 これはチャンスなのでは!?2人きりではあるけれど、堂々と “両者同意の元” 耳と尻尾に触らせるという実績をつくれる……!という事は何かあった時に俺はこの事を引き合いに出せる……!

 つまりこれは、俺の将来をかけた、重要案件……!

「……いいけど、や、優しく、お願いな……?」

「わーいっ!」

 エイルは手のひらをふわっと俺の頭の上に置くと、お耳にそっと触れてきた。
 ……かと思いきや、

「ふわっふわ~~!やわらかぁ~い!動いたぁっ!」

「んんっ。っひゃっ!?ま、待って、それ以上は――」

 最初は壊れ物でも触るみたいに、おそるおそるだった。けれどもそれもほんの一瞬で、直ぐにぐにっと感触を確かめるように揉まれ、あとはもう唯ひたすら耳の先から根元まで、もみもみもみもみ……と揉みしだかれた。

 な、なんで耳を揉まれるだけでこんなに気持ちがいいんだ……?そんなに根元を揉まれると、なんか危ないーー!

「次はしっぽー!」

 耳から手が離れてホッとしたけど少し残念なようなよく分からない心境の中、尻尾という単語が聞こえて俺は慌てた。

「ま、待て待て待て待てっ!」

 あっという間に回り込まれて、俺の尻尾がぐにゃりと両手でわしづかみにされた。

「んぎゃっ!?」

 ……という声が本当に出た。マジで出た。

「わ~~毛が!もふもふ!リュカ様のしっぽってすごい!」

「ちょっ……ちょ、だめ、そこは……んぅっ……」

 耳と違って最初から容赦がない。そしてやはり根元は気持ちが良いけど、ちょっとダメな危ない感じが湧き上がってくるーー!

 なぜだ!?どうして俺はこんな羞恥プレイを浴場のど真ん中で受けているのだ!?
 しかも相手は3歳児!?なのに容赦がない!!?
 いや3歳児だから容赦が無いのか!!

「え、エイル!もう泡は充分だ!お湯に浸かろう!」

「えー、リュカ様のお耳と尻尾、最高なのにぃ……」

 なんだその殺し文句は。襲うぞ。キスしまくるぞ。いいのか?

「はぁぁ。いや、もう充分だろ。泡を流すぞ。」

 少し長めに息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

 お互いに泡の流し残しが無いか確認してからお湯に向かった。
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