元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。

碧野葉菜

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3、ブリオット家の人々

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「ただ、僕は父が外で作った子に違いありませんからね。自身が懇願して成せなかった男児……それを他の女が授かったという事実……男の僕にはわからない苦悩があるのではないかと思い、こればかりは、かける言葉が見つかりません。一年ほど前に義姉が家を出てからは、ますます塞ぎ込むようになられました」

 クラウスの言葉は、マリアンヌに対する気遣いさえ感じさせる。
 マリアンヌが拒絶しなければ、産みの母が亡くなった時点で、クラウスはブリオット家に迎えられただろう。
 そうすれば使用人として辛い扱いも受けずに済んだだろうが……アンジェリカと出会うこともなかった。
 だからクラウスはマリアンヌを嫌っていない。むしろ人生最大の出会いをもたらしてくれたことに、感謝しているくらいだ。
 
「……クラウスは、マリアンヌ様をどう思っているの?」
「別に嫌いではありませんよ、どちらかというと、妻や娘がいて、愛人を作った父の方が嫌です」
「ええっ!?」

 クラウスの発言に、思わず声を上げるアンジェリカ。
 だが、冷静に考えてみると、クラウスの言うことはもっともでもある。どんな理由があっても、不倫はよろしくない。

「いくら政略結婚とはいえ、やっていいことと悪いことがあるでしょう、不貞だなんて僕には考えられない」
「私はてっきり、クラウスはパパっ子なのかと……お母様を愛して、幼い頃もよく遊んでくれたと言っていたし」
「それで母を苦労させたのも事実ですからね」

 腕を組みながら、ハンと鼻で笑ってみせるクラウス。アンジェリカの前では、つい本来の自分が漏れ出してしまう。

「まぁ、かといって憎んでもいませんし、むしろ感謝していますよ、あなたを守れる権力を賜ったわけですから」

 とまぁ、結局、そこに落ち着くのだ。
 クラウスの原動力はすべてアンジェリカ。
 別に公爵になりたいわけでもなかったが、それでも継ぐ気になったのは、アンジェリカを守る力が欲しかったからだ。
 クラウスはキョトンとしているアンジェリカに、ニッコリと笑いかけた。

「さあ、我々も朝食にまいりましょう、たくさん食べてくださいよ」
「が、がんばるわ」

 アンジェリカはクラウスに手を取られ、エスコートされながら螺旋階段を下りた。
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