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第2話
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「ミラ、君がここに呼び出された理由、もう分かっているな?」
「……」
ルーザは非常に険しい表情を浮かべながら、自室を訪れたミラに向けてそう言葉を発する。
ミラはこれから自分にかけられるであろう言葉を察しているのか、ややその顔を伏せたまま何も言葉を返さない。
「マーアリアが僕に涙を見せてきたよ。自分は将来家族になるもの同士として仲良くしたいと思っているのに、君の方がいつまでたっても自分の事を受け入れてくれないと言ってね」
それは完全にマーアリアの作り上げた偽りのストーリーだというのに、そのことに全く気付いていないルーザ。
「僕は本当に悲しくてたまらないとも。ミラ、君は本当に僕とマーアリアの事を愛しているのか?家族になる気があるのか?あんなにも性格に優れるマーアリアが君の事を想い続けているというのに、君はどうしてその思いを無下にできるんだ?」
「……」
ミラとて、その言葉を無条件に受け入れられるものではない。
しかし、ここで言葉を返すことの方がかえって状況を悪化させるということを、彼女はこれまでの経験から良くわかっていた。
「僕は完全に君の事を見誤ってしまったようだ。だからこそ、今日こうして君と話をすることに決めた。ほかでもない、婚約破棄の事についてね」
「…!?」
婚約破棄、その言葉を聞かされた途端、ミラはそれまでこらえていた感情を少し表にした。
「…なんだ?何か言いたいことでもあるのか?僕の愛する妹の思いを裏切った君の事を考えれば、相応しい罰であると思っているが?」
「…そうですか。それでは少し、私にも言わせていただいてよろしいですか?」
その言葉がミラを縛っていた我慢から少し解放させたのか、彼女は低い口調でルーザに対しこう言葉を続けた。
「ルーザ様、あなたは私がマーアリアの思いに気づいていなかった、その思いを無下にしたとおっしゃられましたが、それならルーザ様は私の思いに気づいていたのですか?私の事を信じてくださったことがありましたか?」
「…なんだと?」
それまでただ黙って我慢を続けていたミラの心。
一度その糸がほつれたなら、もはやそれを止める術はない。
「私が今までどれだけマーアリアに騙され続けてきたのかを、あなたは分かっているのですか?彼女はことあるごとに私に嫌がらせをしてきては、自らを一方的に悲劇のヒロインに仕立て上げて私の事を悪者にし続けてきました。私がその事で彼女に何か言おうものなら、彼女はすぐにルーザ様に泣きついてすべての非が私にあるかのような言葉を並べ始めました。…そしてルーザ様、あなたはそんなマーアリアの言葉をすべて一方的に信じて、私の言葉はなにひとつ聞き入れては下さらなかった…。私から見ればそれこそ、お二人からの裏切りであるように思えてなりません」
「……」
それまで黙っていた者の立場が逆転し、今度はルーザの方が言葉に詰まる。
「ルーザ様、婚約破棄されるということをあなたがお決めになったのでしたら、私には反論する余地もございません。私はただ黙って、その決定を受け入れる事しかできません。でも、その決定の裏にマーアリアの存在があるというのなら、それはよくよくお考え直しくださった方がいいかもしれません。だってそれは結局あなたの思いではなく、彼女の思いをすべて一方的に受けいれているに過ぎないのではありませんか?ただの言いなりなのではありませんか?」
ミラの言っていることはすべて真実をそのまま述べていて、ルーザは今この場で考えを改めてミラの思いを受け入れれば、まだ取り返しのつく段階であった。
…しかし、妹の事を盲目的に溺愛してしまっている彼にそんなことができるはずもなく…。
「お前の言いたいことはよくわかったよ。結局は、自分の犯した罪を棚に上げたいだけなんだろう?すべてをマーアリアのせいにすることで、自分はこの世界で生き残ることしか考えていないのだろう?」
「……」
「それこそ意味のない話し合いというものだ。誰かの弁明を聞いていることほど時間を浪費することはないからな。ミラ、やはり僕の隣に君は必要ないということが良く分かった。今日をもって正式に君の事は婚約破棄させてもらうことにする。今後一切、君はこの王宮の敷居を跨がないでくれたまえ。…まぁもっとも、もうそんなことができる立場でもないわけだがな♪」
結局、ルーザは最後の最後までミラの真実の言葉を受け売れることはなく、マーアリアの偽りの言葉ばかりを見続けていた。
ミラはその点をこれまで必死に修正しようと試み続けてきたのだが、結局それもかなわないままに終わってしまうこととなった。
「そうですか…。私はルーザ第一王子様により優れた君主となっていただきたくこのような出すぎたお言葉を言わせていただいたのですが、残念です」
「残念でもどうとでも思ってくれればいいさ。僕にとって最も大事なのはマーアリアなのだ。それは誰に何を言われようとも変わらない」
自信をもって自分の方が正しいと言い張るルーザ。
…この婚約破棄こそ、後に自分の事を追い落とすこととなることなど、この時はかけらも理解していないのだった…。
「……」
ルーザは非常に険しい表情を浮かべながら、自室を訪れたミラに向けてそう言葉を発する。
ミラはこれから自分にかけられるであろう言葉を察しているのか、ややその顔を伏せたまま何も言葉を返さない。
「マーアリアが僕に涙を見せてきたよ。自分は将来家族になるもの同士として仲良くしたいと思っているのに、君の方がいつまでたっても自分の事を受け入れてくれないと言ってね」
それは完全にマーアリアの作り上げた偽りのストーリーだというのに、そのことに全く気付いていないルーザ。
「僕は本当に悲しくてたまらないとも。ミラ、君は本当に僕とマーアリアの事を愛しているのか?家族になる気があるのか?あんなにも性格に優れるマーアリアが君の事を想い続けているというのに、君はどうしてその思いを無下にできるんだ?」
「……」
ミラとて、その言葉を無条件に受け入れられるものではない。
しかし、ここで言葉を返すことの方がかえって状況を悪化させるということを、彼女はこれまでの経験から良くわかっていた。
「僕は完全に君の事を見誤ってしまったようだ。だからこそ、今日こうして君と話をすることに決めた。ほかでもない、婚約破棄の事についてね」
「…!?」
婚約破棄、その言葉を聞かされた途端、ミラはそれまでこらえていた感情を少し表にした。
「…なんだ?何か言いたいことでもあるのか?僕の愛する妹の思いを裏切った君の事を考えれば、相応しい罰であると思っているが?」
「…そうですか。それでは少し、私にも言わせていただいてよろしいですか?」
その言葉がミラを縛っていた我慢から少し解放させたのか、彼女は低い口調でルーザに対しこう言葉を続けた。
「ルーザ様、あなたは私がマーアリアの思いに気づいていなかった、その思いを無下にしたとおっしゃられましたが、それならルーザ様は私の思いに気づいていたのですか?私の事を信じてくださったことがありましたか?」
「…なんだと?」
それまでただ黙って我慢を続けていたミラの心。
一度その糸がほつれたなら、もはやそれを止める術はない。
「私が今までどれだけマーアリアに騙され続けてきたのかを、あなたは分かっているのですか?彼女はことあるごとに私に嫌がらせをしてきては、自らを一方的に悲劇のヒロインに仕立て上げて私の事を悪者にし続けてきました。私がその事で彼女に何か言おうものなら、彼女はすぐにルーザ様に泣きついてすべての非が私にあるかのような言葉を並べ始めました。…そしてルーザ様、あなたはそんなマーアリアの言葉をすべて一方的に信じて、私の言葉はなにひとつ聞き入れては下さらなかった…。私から見ればそれこそ、お二人からの裏切りであるように思えてなりません」
「……」
それまで黙っていた者の立場が逆転し、今度はルーザの方が言葉に詰まる。
「ルーザ様、婚約破棄されるということをあなたがお決めになったのでしたら、私には反論する余地もございません。私はただ黙って、その決定を受け入れる事しかできません。でも、その決定の裏にマーアリアの存在があるというのなら、それはよくよくお考え直しくださった方がいいかもしれません。だってそれは結局あなたの思いではなく、彼女の思いをすべて一方的に受けいれているに過ぎないのではありませんか?ただの言いなりなのではありませんか?」
ミラの言っていることはすべて真実をそのまま述べていて、ルーザは今この場で考えを改めてミラの思いを受け入れれば、まだ取り返しのつく段階であった。
…しかし、妹の事を盲目的に溺愛してしまっている彼にそんなことができるはずもなく…。
「お前の言いたいことはよくわかったよ。結局は、自分の犯した罪を棚に上げたいだけなんだろう?すべてをマーアリアのせいにすることで、自分はこの世界で生き残ることしか考えていないのだろう?」
「……」
「それこそ意味のない話し合いというものだ。誰かの弁明を聞いていることほど時間を浪費することはないからな。ミラ、やはり僕の隣に君は必要ないということが良く分かった。今日をもって正式に君の事は婚約破棄させてもらうことにする。今後一切、君はこの王宮の敷居を跨がないでくれたまえ。…まぁもっとも、もうそんなことができる立場でもないわけだがな♪」
結局、ルーザは最後の最後までミラの真実の言葉を受け売れることはなく、マーアリアの偽りの言葉ばかりを見続けていた。
ミラはその点をこれまで必死に修正しようと試み続けてきたのだが、結局それもかなわないままに終わってしまうこととなった。
「そうですか…。私はルーザ第一王子様により優れた君主となっていただきたくこのような出すぎたお言葉を言わせていただいたのですが、残念です」
「残念でもどうとでも思ってくれればいいさ。僕にとって最も大事なのはマーアリアなのだ。それは誰に何を言われようとも変わらない」
自信をもって自分の方が正しいと言い張るルーザ。
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