出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様

睡蓮

文字の大きさ
2 / 6

第2話

しおりを挟む
「ユフィーナ、もう君との関係は冷めきってしまったようだ。婚約破棄をさせてもらうことにするよ」

婚約破棄、なんてものを自分が受ける日が来るとは思ってもいなかった。
私は目の前に広がる現実を受け止めることができず、ただただ呆然と二人の言葉を待つほかなかった。

「やっと婚約破棄を決めてくださったのですねお兄様!私ずっとこの時をまっていました!」
「そうだったのかい?ならもっと早くユフィーナの事を追い出すことにすればよかったな…。まさかレイア、君はもっと早くからユフィーナの本性に気づいていたのかい?」
「あたりまえですよ。最初にあった時から、この人は絶対に性格が悪いものだと確信していました。これでも私、いろんな人と仲良くできるオールマイティーな性格なんですよ?それなのに私が受け入れられないということは、それはそれは目も当てられないような人物であると言わざるを得ませんもの」
「そうか、レイアは早い段階から気づいていたのか…。ユフィーナ、僕の事は騙せていたようだが、レイアの目を騙すことはできなかったようだぞ?」

好き勝手なことを言っている二人だけれど、私にはその言葉の意味を理解することが全くできていない。
そもそも私たちの婚約関係は伯爵様の方から始められたものだというのに、今やまるで私の方が伯爵様にまとわりついた女だとでも言わんばかりの様子だ。

「やはり僕にはレイアだけだ…。ユフィーナは最初こそ僕の心を動かしてくれたかもしれないが、それも本当に一瞬だけだった。いつだって僕の事をきちんと理解してくれてていたのはレイアだけだったからな」
「あたりまえですよお兄様。私だってお兄様の事を心から愛しているのですから♪」

…これは私の直感だけれど、今回の婚約破棄には裏で計画書のようなものがあったように思えてならない。
そうでもないと考えられないくらいに、2人の口ぶりはぴったりと合っていた。

「見てくださいお兄様、私たちの言っていることがすべて本当の事だからお姉様、何も言い返してこないでしょう?なんてみっともない姿でしょう♪」

…私が何も言わないのはあなたたちの言葉を認めているからではなくって、相手をするのも馬鹿らしいと思えているからなのだけれど…。

「ユフィーナ、今日をもって正式に君との婚約関係を破棄したいと思う。ここまで僕の期待を裏切り続けてきたんだから、なにも文句はないだろう?少なくともこれ以降、僕にはもう君との関係を続けていくだけのつもりはない。まだまだ僕の隣に立っていたいというのなら、それはもうかなわない夢だからいい加減に目を覚ましてほしいものだな」

もう私には全くそんな思いもないのだけれど、まるでそれが私の本心であるかのような口ぶりで言葉を発する伯爵様。
それを本気で言っているのなら、むしろ伯爵様のほうこそ思いを勘違いしている恥ずかしい存在であるように見えてならないのだけれど…。

「ほらお姉様、お兄様との関係をとりもどしたいのなら今がチャンスですよ?心の底から謝罪の言葉を口にされたらいかがですか?なんでしたら私も一緒に謝って差し上げますよ?」
「……」
「お兄様は寛大なお心の持ち主ですから、もしかしたらお姉様の事を許してくださるかもしれませんよ?まぁその可能性は限りなく低いでしょうけれど…♪」
「おいおいレイア、決めつけるのはよくないぞ?もしかしたら僕だって気が変わってしまう可能性はある。まぁ確かにその可能性は限りなくゼロに近いのだろうが♪」

婚約破棄一つでどうしてここまで楽しそうな様子を見せられるのか、私には全く理解ができない…。
けれど、これがもともと決まっていた事だというのなら納得がいく。
きっとレイアは伯爵様を私に奪われることを警戒して、これまで以上に伯爵様との距離を縮めていたのだと思う。
伯爵様はそんな積極的なレイアの姿に完全にノックダウンしてしまって、それ以上何をすることもできなくなってしまったのでしょうね。
もともと私の事を愛している、絶対に幸せにする、幸せにさせられなかったなら自分は伯爵の位を捨てるとまで言っていたのに、そんなことはもうレイアへの偏った愛情を前にしてすべて忘れてしまったのでしょうね。
なら、本当に私はもうここにはいる価値はないのでしょうね。
あなたがこれまでにかけ続けてくれていた言葉は、全てうそだったのでしょうね。
最初からいなくてもいい存在くらいにしか、私の事を想っていなかったのでしょうね。
なら、もう私にもあなたたちを愛する義理はないですよね?

「分かりました、伯爵様。それならもう婚約破棄に納得いたします。私がいたら邪魔だとおっしゃられるのでしたら、私は素直にここからいなくなって差し上げようと思いますので」
「……え?」

非常に素っ頓狂な言葉を伯爵様はつぶやいた気がするけれど、もう私には何の関係もない話。
後はお二人だけでお好きになさってくださいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから

ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。 彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏
恋愛
  「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」  双子の妹のステラリアはそう言った。  幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。  なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、 「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」  なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。 ※この作品は他サイトにも掲載されています。

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

「格が違う」なら、どうぞお好きに。あなたも、鍵印のない範囲でお幸せに。

なかすあき
恋愛
王都の大聖堂で迎えた結婚式当日。 花嫁セレナは控室で、婚約者アルトから突然の破棄を告げられる。 「格が違う」 それが理由だった。代わりに祭壇へ立つのは名門令嬢ミレイア。会場は勝者を祝福し、アルトの手首には華やかな血盟紋が輝く。 だが、盟約の儀が進むほどに“信用”の真実が姿を現していく。大司教が読み上げる盟約文、求められる「信用主体確認」。そしてセレナの鎖骨にだけ浮かび上がった、真層の印「鍵印」。 拍手が止まった瞬間、彼の勝利は終わる。 泣かず、怒鳴らず、おごそかに。セレナは契約を“手続き”として完了し、最後に一言だけ置いて去っていく。 静かな処刑がもたらす、痛快な逆転劇。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

処理中です...