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待ち焦がれていた幸せ
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今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!の続きです。年齢修正しました。
****
その夜、エンゲレス王国の王城にあるホールには、多くの貴族が集まっていた。昔は毎年の年始に舞踏会が行われていた場所であるが、現在は特別な外賓の接待と王族の大きな祝いごとがある際にしか使用されていない。そんな数年に一度しかない、王城内で行われる祝賀パーティが今夜開催されている。貴族にとっては、非日常の晴れ舞台であり、招待された多くの貴族が着飾った姿で、誇らしげに参加していた。
特別な外賓の接待とは、国交樹立や他国自国の王族の輿入れの際に、大人数の使節団の訪問を受けた際のことで、通常の外賓の接待は、要人のみを対象とし、王城の1階ではなく、大階段を上った先にある、晩餐の間やサロンで行う。そのため、多くの貴族は、王城勤めでもしていなければ、大階段を上る機会さえないことになる。王城内にもそうそう立ち入る機会が来ないため、本日は、浮かれた貴族や不審者が王城内の深いところに忍び込まぬよう、大階段の下に警備兵が立ち並んでいる。
本日は、ホールに隣接した部屋も開放されており、椅子の置かれた軽食とドリンクが用意された広い休憩室では、噂話に興じる貴族の姿が多く見られた。最近普及し出した大型の自動お茶入れ機が大活躍だ。
「こんなに冷えた紅茶は初めてだが、流石王城、機械で入れたお茶も美味しいな」
「よし、私もいただこう。ふむ。これは旨いな!自動で砂糖まで入るとは凄い!そういえば、先日騒ぎを起こしたあのトマソン侯爵家のご子息と平民はどうなったんだ?」
「先週の話だから、まだ王都治安維持治局で取り調べをしているのではないか?」
「そうですわね、まだ数日しか経っておりませんから、罪の数と内容を確認しているだけで、どんな罰になるかなどは決まってないでしょう」
「ん?」
「あれ?」
「んまあ、この自動お茶入れ機、ずいぶん可愛い形をしていますのね」
「猫ちゃんかしら、我が家にも欲しいですわ!」
「でも、少し大きいですわねぇ。人のサイズ程もありますわよ。もう少し小型化されたら買いましょう」
「そういえば、先週のあの話、貴女ご存知?」
「ああ、トマソン侯爵家のご子息の話ですよね?王国館で、大層な騒ぎを起こされたとか」
「トマソン家のキール様といえば、子供の頃に参加していたガーデンパーティーで、アンドル公爵家のクリスティーナ様との婚約なんて嫌だ、誰か交代してくれと、いきなり騒ぎ出したり、年下の幼い令嬢を捕まえては、お前で我慢するからクリスティーナ様と代われと凄んで泣かせたりして、他家主催のガーデンパーティーへの参加をどの家からも断られていましたわよねぇ」
「ああ、そうでした、そんなことがありました!でも、7~8歳の頃の話ですわね。あれからどうされたのかしら?」
「厳しい家庭教師をつけてもダメで、男子修道院に短期間預かってもらおうとしても、話が通じなすぎるので、牢に軟禁することになるが、性格が余計に歪む可能性がある、と言われ断念したとか。仕方なく、引退した前侯爵夫妻や、親族の家などにも協力を仰ぎ、親族の家だけを行き来させ、常に誰かが見守りながら厳しく育てたそうです。僻地にある学園を選んで通った、王立初等学園の貴族教育クラスへも、親族が付き添って通ったとか。大変ですね。その後15歳になり、第三王立高等学園への入学が決まった後は、学園での授業をサボりがちなこと以外は、学内で騒ぎを起こすこともなく、一般的な学生として、朝夕の送り迎えのみ家の者が付き添うような学生生活だったそうです」
「それならば、大きくなってからは落ち着いたと、もう危機は去ったと安堵されていたのかしら?」
「家の中では、恋人に、何かプレゼントしようと、家族が持つ高価な持ち物を勝手に持ち出そうとするなど、何度も問題を起こしていましたが、婚約者を持たせていない年頃の男子ですので、家の中での盗みのような行為を呵ることはあっても、平民の女性と仲良くすることは、今後の彼の未来に良い影響が出るかもしれないと、見守っていたそうですわ」
「彼は嫡男でもないですし、貴族の家への婿入りも、成績が悪く授業すらまともに受けられない方なら難しいですものねぇ」
「将来は、金銭的援助をする前提で、地方の役所での簡単な仕事とかにでも就かせるつもりだったのかもしれませんわね。その場合、平民との付き合いが必要ですし、なんなら平民のお嬢さんと結婚する可能性もないとはいえませんし」
「それでしたら、件の平民女性との仲を黙認も理解できますわねぇ。まさか、あんな騒ぎをおこしてしまうなんて普通は考えませんもの」
「そうですわね。王立高等学園に入学し、通学もできていたのですから、将来のことも、行き先さえ上手く選べばなんとかなりそうだと考えてしまいますわよね。甘くて愚かな考えですけれども」
「ん?」
「え?」
「あら?」
「ティーナ!探していたんだぞ、こんな大事な時にどこへ行っていたんだ!」
「あら?それは申し訳ございませんでした。支度も終わりましたし、アス様はお忙しそうでしたので、少し会場を見回ってましたの」
「その姿でか?まさか、アレの中に入っていたのか?」
「うふふ。だって、家族の前やアス様の前で入ってみせても全く面白くないんですもの。このような大人数がいる場所の方が楽しいですわ」
「だが、危険だ。入ってしまえば、何か危険があっても身動きしにくいではないか!」
「んもう!本日の会場は王城ですわよ。近くには警備兵も、近衛兵もいますし、平気ですわ。それに、仕様を発表していないのですから、私が中にいるなんて誰も気づきませんわ。アス様は心配しすぎです!」
「だが、また勘違い男が出ないとも限らないし、私がいてもティーナの様に美しく可憐でそれでいて、賢い女性に手を伸ばしたくなる男はいくらでもいるのだぞ!危険だ!」
「嫌ですわ。あの中にいる私をその様に思う誰かがいるわけないじゃないですか!ふふふ。ちゃんと同化してましたし、さりげなくちょっとおしゃべりに交ざって、すぐに戻ってきましたので、大丈夫ですわ」
「ん?アレの中にいたのに、誰かと会話できたのか?」
「うふふふふ!そうです。複数人の会話にしれっと交ざってみました。面白かったですわ!」
「王城のパーティで化け猫が出たとか、噂になるんじゃないか?」
「王城でのパーティが恐ろしいとなれば、もっと頻繁に開催をという声が減って良いではないですか。また無駄な予算を削減できますわよ」
「我が姫は、本当に賢いな。だけど、アレの中に入るのは私がそばにいて見守れる時だけにしてくれ。其方に何かあったらと思うと心配で仕方がない。心臓が止まりそうになる。私を殺す気でないなら、どうか自重してくれ」
「むぅ。折角トマソン侯爵家の嫡男シドル様からお詫びにといただいた“カクレンボお茶入れにゃ”ですのに!」
「ティーナ。その尖らせた口は可愛いが、他の男の名前を口にするのはダメだぞ?」
「えぇ~、呼ばずに貴殿とか家名のみで済ませと?それは無理ではないでしょうか?」
「わかっているが……。嫌なのだ」
「もうっ。仕方がない方ですね。それぐらいは我慢してください。仕事がやりにくいので!でも、その代わり………あの手続きを今日済ませてもよろしいですわよ」
「本当か、あと3ヶ月は忙しいから無理だと言っていたのに?」
「ええ、2週間後には通訳として隣国に行かなくてはなりませんが、1週間ぐらいならその前にお休みできますわ」
「そうか!安心しろ、私の宮はいつティーナが来ても暮らせる様に準備ができているぞ!」
「もうっ、存じていますわ。それより、書類は良いのですか?」
「ああ、もう記入済みであとは出すだけだからな。さっき、私の侍従が走って行ったので大丈夫だ」
「あら?いつの間に?」
「兄上にも知らせなくてはな。まあ、会場で良いか。さあ、今日は私達が主役なのだから、そろそろ皆に挨拶しに行こう」
「皆の者、本日はよく来てくれた!長い挨拶など今日はやめて、大事なことを伝えておく。我が国の王太子であるサシアスの子、第一王子ラインと第二王子ダリスの2人が、先日無事に7の歳を越えた。成人はしていないのでこの場にはおらぬが、王国法により、王位継承権が変更された。第一王子ラインは2位に、第二王子ダリスは3位に繰り上がった。サシアスに次いで2位であった前王の第三子であるジーリアスは4位に下がることになり、現王家から外れる。この場では知らぬ者はいないと思うが、念の為付け加えておく。前王の第二子ルーロスの王位継承権は、隣国ダースに婿入りした時に消滅している。さて、ジーリアスには、王弟として、今後もこの王城で暮らし、王国を支え続けてもらうことになるが、王位継承の順が確定し、立場が明確になったので、これまで発表せずにいた彼の婚約を知らせることができる。長い間待たせて悪かったなジーリアス。さあ、祝おうではないか!婚約おめでとう!我が弟!ジーリアス・エンゲレス、アンドル公爵令嬢クリスティーナ!」
王の宣言により、会場に、大きな拍手が巻き起こる。
ちなみに、7歳というのは、幼少時と少年期を無事生き延びたと認められる年齢である。まだまだ成人ではないが、継承権などはこの年齢で決めることが多い。
現王ロードスとその弟で次男ルーロスの年の差は6歳、次男と末っ子3男ジーリアスにも12の年の差があり、ジーリアスがこの7の歳を無事越えた後、ルーロスは、スペアとしてお役御免になったと、以前から政略結婚の話があった隣国ダースに婿入りしていった。今回は、王太子の子供が7歳を越えた為、ジーリアスがスペアの責任から解放され、国内事情や外交により婚約者入れ替えが起こる可能性を消滅させることができたのだった。
ジーリアス29歳。我が世の春到来である。
「ジーリアス、皆の者に言いたいことはないか?」
「勿論あります!」
左手を愛しいアンドル公爵令嬢クリスティーナの腰に添えた、王弟ジーリアスは、叫ぶ様に告げた。
「私達2人は皆に聞いてもらいたいことがある!今日先程、私、ジーリアス・エンゲレスと、アンドル公爵家のクリスティーナは、互いに結婚に同意し、正式に夫婦となった!クリスティーナは私、ジーリアスの妻となり、クリスティーナ・アンドル・エンゲレスとなった!!」
「いつの間に!お、おめでとう!2人に幸あれ!」
驚いた王が叫び、会場となったホールは歓声に包まれたのだった。
fin
****
後書き
トマソン侯爵家子息キールたちのその後。
隣国ダースにある出入りを厳しく管理された鉱山の管理事務所で30年無償で働くことに。
(国内では甘えるだろうと、他国であるダースに労働力として提供→代金は鉱物でいただきます)
マリーは国内で20年キツイ仕事に労役でついたあと、処刑の筈でしたが、逃げ出そうと、監視人を大きな石で殴るなどしたため、警備の兵に剣で殴られ、死亡。
トマソン侯爵家は、キールの父が責任をとるということで、嫡男に代替わりしました!機械オタクな嫡男ですが、サポートが得意な次男もいますので、大丈夫でしょう。姉は婚約者の家が親類の伯爵家だったのでそのまま予定通り、近々嫁ぎます。妹ちゃんはお兄さん達の頑張り次第で、婚約者が決まります。
****
その夜、エンゲレス王国の王城にあるホールには、多くの貴族が集まっていた。昔は毎年の年始に舞踏会が行われていた場所であるが、現在は特別な外賓の接待と王族の大きな祝いごとがある際にしか使用されていない。そんな数年に一度しかない、王城内で行われる祝賀パーティが今夜開催されている。貴族にとっては、非日常の晴れ舞台であり、招待された多くの貴族が着飾った姿で、誇らしげに参加していた。
特別な外賓の接待とは、国交樹立や他国自国の王族の輿入れの際に、大人数の使節団の訪問を受けた際のことで、通常の外賓の接待は、要人のみを対象とし、王城の1階ではなく、大階段を上った先にある、晩餐の間やサロンで行う。そのため、多くの貴族は、王城勤めでもしていなければ、大階段を上る機会さえないことになる。王城内にもそうそう立ち入る機会が来ないため、本日は、浮かれた貴族や不審者が王城内の深いところに忍び込まぬよう、大階段の下に警備兵が立ち並んでいる。
本日は、ホールに隣接した部屋も開放されており、椅子の置かれた軽食とドリンクが用意された広い休憩室では、噂話に興じる貴族の姿が多く見られた。最近普及し出した大型の自動お茶入れ機が大活躍だ。
「こんなに冷えた紅茶は初めてだが、流石王城、機械で入れたお茶も美味しいな」
「よし、私もいただこう。ふむ。これは旨いな!自動で砂糖まで入るとは凄い!そういえば、先日騒ぎを起こしたあのトマソン侯爵家のご子息と平民はどうなったんだ?」
「先週の話だから、まだ王都治安維持治局で取り調べをしているのではないか?」
「そうですわね、まだ数日しか経っておりませんから、罪の数と内容を確認しているだけで、どんな罰になるかなどは決まってないでしょう」
「ん?」
「あれ?」
「んまあ、この自動お茶入れ機、ずいぶん可愛い形をしていますのね」
「猫ちゃんかしら、我が家にも欲しいですわ!」
「でも、少し大きいですわねぇ。人のサイズ程もありますわよ。もう少し小型化されたら買いましょう」
「そういえば、先週のあの話、貴女ご存知?」
「ああ、トマソン侯爵家のご子息の話ですよね?王国館で、大層な騒ぎを起こされたとか」
「トマソン家のキール様といえば、子供の頃に参加していたガーデンパーティーで、アンドル公爵家のクリスティーナ様との婚約なんて嫌だ、誰か交代してくれと、いきなり騒ぎ出したり、年下の幼い令嬢を捕まえては、お前で我慢するからクリスティーナ様と代われと凄んで泣かせたりして、他家主催のガーデンパーティーへの参加をどの家からも断られていましたわよねぇ」
「ああ、そうでした、そんなことがありました!でも、7~8歳の頃の話ですわね。あれからどうされたのかしら?」
「厳しい家庭教師をつけてもダメで、男子修道院に短期間預かってもらおうとしても、話が通じなすぎるので、牢に軟禁することになるが、性格が余計に歪む可能性がある、と言われ断念したとか。仕方なく、引退した前侯爵夫妻や、親族の家などにも協力を仰ぎ、親族の家だけを行き来させ、常に誰かが見守りながら厳しく育てたそうです。僻地にある学園を選んで通った、王立初等学園の貴族教育クラスへも、親族が付き添って通ったとか。大変ですね。その後15歳になり、第三王立高等学園への入学が決まった後は、学園での授業をサボりがちなこと以外は、学内で騒ぎを起こすこともなく、一般的な学生として、朝夕の送り迎えのみ家の者が付き添うような学生生活だったそうです」
「それならば、大きくなってからは落ち着いたと、もう危機は去ったと安堵されていたのかしら?」
「家の中では、恋人に、何かプレゼントしようと、家族が持つ高価な持ち物を勝手に持ち出そうとするなど、何度も問題を起こしていましたが、婚約者を持たせていない年頃の男子ですので、家の中での盗みのような行為を呵ることはあっても、平民の女性と仲良くすることは、今後の彼の未来に良い影響が出るかもしれないと、見守っていたそうですわ」
「彼は嫡男でもないですし、貴族の家への婿入りも、成績が悪く授業すらまともに受けられない方なら難しいですものねぇ」
「将来は、金銭的援助をする前提で、地方の役所での簡単な仕事とかにでも就かせるつもりだったのかもしれませんわね。その場合、平民との付き合いが必要ですし、なんなら平民のお嬢さんと結婚する可能性もないとはいえませんし」
「それでしたら、件の平民女性との仲を黙認も理解できますわねぇ。まさか、あんな騒ぎをおこしてしまうなんて普通は考えませんもの」
「そうですわね。王立高等学園に入学し、通学もできていたのですから、将来のことも、行き先さえ上手く選べばなんとかなりそうだと考えてしまいますわよね。甘くて愚かな考えですけれども」
「ん?」
「え?」
「あら?」
「ティーナ!探していたんだぞ、こんな大事な時にどこへ行っていたんだ!」
「あら?それは申し訳ございませんでした。支度も終わりましたし、アス様はお忙しそうでしたので、少し会場を見回ってましたの」
「その姿でか?まさか、アレの中に入っていたのか?」
「うふふ。だって、家族の前やアス様の前で入ってみせても全く面白くないんですもの。このような大人数がいる場所の方が楽しいですわ」
「だが、危険だ。入ってしまえば、何か危険があっても身動きしにくいではないか!」
「んもう!本日の会場は王城ですわよ。近くには警備兵も、近衛兵もいますし、平気ですわ。それに、仕様を発表していないのですから、私が中にいるなんて誰も気づきませんわ。アス様は心配しすぎです!」
「だが、また勘違い男が出ないとも限らないし、私がいてもティーナの様に美しく可憐でそれでいて、賢い女性に手を伸ばしたくなる男はいくらでもいるのだぞ!危険だ!」
「嫌ですわ。あの中にいる私をその様に思う誰かがいるわけないじゃないですか!ふふふ。ちゃんと同化してましたし、さりげなくちょっとおしゃべりに交ざって、すぐに戻ってきましたので、大丈夫ですわ」
「ん?アレの中にいたのに、誰かと会話できたのか?」
「うふふふふ!そうです。複数人の会話にしれっと交ざってみました。面白かったですわ!」
「王城のパーティで化け猫が出たとか、噂になるんじゃないか?」
「王城でのパーティが恐ろしいとなれば、もっと頻繁に開催をという声が減って良いではないですか。また無駄な予算を削減できますわよ」
「我が姫は、本当に賢いな。だけど、アレの中に入るのは私がそばにいて見守れる時だけにしてくれ。其方に何かあったらと思うと心配で仕方がない。心臓が止まりそうになる。私を殺す気でないなら、どうか自重してくれ」
「むぅ。折角トマソン侯爵家の嫡男シドル様からお詫びにといただいた“カクレンボお茶入れにゃ”ですのに!」
「ティーナ。その尖らせた口は可愛いが、他の男の名前を口にするのはダメだぞ?」
「えぇ~、呼ばずに貴殿とか家名のみで済ませと?それは無理ではないでしょうか?」
「わかっているが……。嫌なのだ」
「もうっ。仕方がない方ですね。それぐらいは我慢してください。仕事がやりにくいので!でも、その代わり………あの手続きを今日済ませてもよろしいですわよ」
「本当か、あと3ヶ月は忙しいから無理だと言っていたのに?」
「ええ、2週間後には通訳として隣国に行かなくてはなりませんが、1週間ぐらいならその前にお休みできますわ」
「そうか!安心しろ、私の宮はいつティーナが来ても暮らせる様に準備ができているぞ!」
「もうっ、存じていますわ。それより、書類は良いのですか?」
「ああ、もう記入済みであとは出すだけだからな。さっき、私の侍従が走って行ったので大丈夫だ」
「あら?いつの間に?」
「兄上にも知らせなくてはな。まあ、会場で良いか。さあ、今日は私達が主役なのだから、そろそろ皆に挨拶しに行こう」
「皆の者、本日はよく来てくれた!長い挨拶など今日はやめて、大事なことを伝えておく。我が国の王太子であるサシアスの子、第一王子ラインと第二王子ダリスの2人が、先日無事に7の歳を越えた。成人はしていないのでこの場にはおらぬが、王国法により、王位継承権が変更された。第一王子ラインは2位に、第二王子ダリスは3位に繰り上がった。サシアスに次いで2位であった前王の第三子であるジーリアスは4位に下がることになり、現王家から外れる。この場では知らぬ者はいないと思うが、念の為付け加えておく。前王の第二子ルーロスの王位継承権は、隣国ダースに婿入りした時に消滅している。さて、ジーリアスには、王弟として、今後もこの王城で暮らし、王国を支え続けてもらうことになるが、王位継承の順が確定し、立場が明確になったので、これまで発表せずにいた彼の婚約を知らせることができる。長い間待たせて悪かったなジーリアス。さあ、祝おうではないか!婚約おめでとう!我が弟!ジーリアス・エンゲレス、アンドル公爵令嬢クリスティーナ!」
王の宣言により、会場に、大きな拍手が巻き起こる。
ちなみに、7歳というのは、幼少時と少年期を無事生き延びたと認められる年齢である。まだまだ成人ではないが、継承権などはこの年齢で決めることが多い。
現王ロードスとその弟で次男ルーロスの年の差は6歳、次男と末っ子3男ジーリアスにも12の年の差があり、ジーリアスがこの7の歳を無事越えた後、ルーロスは、スペアとしてお役御免になったと、以前から政略結婚の話があった隣国ダースに婿入りしていった。今回は、王太子の子供が7歳を越えた為、ジーリアスがスペアの責任から解放され、国内事情や外交により婚約者入れ替えが起こる可能性を消滅させることができたのだった。
ジーリアス29歳。我が世の春到来である。
「ジーリアス、皆の者に言いたいことはないか?」
「勿論あります!」
左手を愛しいアンドル公爵令嬢クリスティーナの腰に添えた、王弟ジーリアスは、叫ぶ様に告げた。
「私達2人は皆に聞いてもらいたいことがある!今日先程、私、ジーリアス・エンゲレスと、アンドル公爵家のクリスティーナは、互いに結婚に同意し、正式に夫婦となった!クリスティーナは私、ジーリアスの妻となり、クリスティーナ・アンドル・エンゲレスとなった!!」
「いつの間に!お、おめでとう!2人に幸あれ!」
驚いた王が叫び、会場となったホールは歓声に包まれたのだった。
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後書き
トマソン侯爵家子息キールたちのその後。
隣国ダースにある出入りを厳しく管理された鉱山の管理事務所で30年無償で働くことに。
(国内では甘えるだろうと、他国であるダースに労働力として提供→代金は鉱物でいただきます)
マリーは国内で20年キツイ仕事に労役でついたあと、処刑の筈でしたが、逃げ出そうと、監視人を大きな石で殴るなどしたため、警備の兵に剣で殴られ、死亡。
トマソン侯爵家は、キールの父が責任をとるということで、嫡男に代替わりしました!機械オタクな嫡男ですが、サポートが得意な次男もいますので、大丈夫でしょう。姉は婚約者の家が親類の伯爵家だったのでそのまま予定通り、近々嫁ぎます。妹ちゃんはお兄さん達の頑張り次第で、婚約者が決まります。
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ジーリアス視点のリクエストや、ここで終わりはもったいとのご意見に感謝です。今現在、続き放置のお話が複数ありますので、そのうち書けたら良いなと思っております。お待たせしますが、いつか。
コメント有難うございました。また遊びに来ていただけると嬉しいです。(^^)