絶対に見つかってはいけない! 〜異世界は怖い場所でした〜

白雪なこ

文字の大きさ
3 / 10

初めての王都中心街

しおりを挟む
 エリザの家族は、王都内ではあるが、やや端っこに近いところに住んでいる。11年前、エリザが6歳の時、9歳上の長兄が王都中央にあるレストランに就職するというので、家族総出で生活の場を整える手伝いをしに、王都中心街に来たことがある。

 兄が勤める予定のレストランから紹介された安い部屋にはベッドや机といった必需品となる家具は付いていたので、兄の支度は、毛布1枚と最低限の身の回り品と、清潔で真っ当な少年に見える服や靴を用意するだけで済んだが、実家にはそれに適した品が一つもなかった。だから、親は働きに出るとはいえ、まだ少年である長兄に付き添い、王都の中心街まで同行した。

 15歳の長兄の下には年子で14歳の長女、13歳の次男、12歳の次女と続いていたので、王都の中央の賑やかな雰囲気に慣れさせる良い機会だと、家族全員での行動になってしまったが。

 末っ子で6歳の3女エリザに関しては、教育や経験のための同行ではなく、家に一人残して留守番させるには幼すぎたので、おまけのように連れて来られただけだった。

 人口が多い王都では、自分の安全を見極めたり、なるべく信頼できる店で、良い品を見つけ、安く買うという、庶民が生活する上で非常に大事なスキルを磨く必要がある。

 そして、スキルをきっちり発揮するには、観光客のような浮かれた気分ではいけない。

 人の多さや、賑やかさにビックリしてしまうようなボンヤリ人間では、王都暮らしは難しいのだ。

 王都の中心街では特にそうだ。

 ボンヤリするな、気を抜くな、周囲に目を配れ!

 そんな親からの圧により、やや挙動不審だった兄2人を置き去りにして、姉2人が大活躍し、必要なものを少ない予算で無事手に入れることに成功した。ちょっとだけ余った予算で、ほんの少しだけ、買い食いができるぐらいに。

 両親とエリザを含む子供達の7名で食べられるものということで、姉に手を引かれたエリザも一生懸命、美味しそうで安い食べ物を探した。王都中心街には手頃な値段の飲食できる屋台が多く、キョロキョロしながら歩き回るのは楽しかった。ドキドキワクワクしていた。

 だけど、それは、甲高い少女の声が響き渡るまでのことだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

異世界に召喚された様ですが、村人Aと間違えられて追い出されましたorz

かぜかおる
ファンタジー
題名のまんま、特に落ちもないので、暇つぶしにフワッと読んでください。

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る

ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。 帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。 敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。 これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。

男装して過ごしてたら、学園内でも札付きの悪で有名な男子に顔面殴られて、更に女だとバレて責任取るって土下座された話

一樹
ファンタジー
タイトル=あらすじ、です。 つまりはそういう内容です。

【完結】アル中の俺、転生して断酒したのに毒杯を賜る

堀 和三盆
ファンタジー
 前世、俺はいわゆるアル中だった。色んな言い訳はあるが、ただ単に俺の心が弱かった。酒に逃げた。朝も昼も夜も酒を飲み、周囲や家族に迷惑をかけた。だから。転生した俺は決意した。今世では決して酒は飲まない、と。  それなのに、まさか無実の罪で毒杯を賜るなんて。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

転生者と蘇生者。勇者を助けたら、望みもしないの転生させれらてた。平和な世の中なんで、元の世界と前世の知識でまったり無双漫遊生活を満喫すること

ゆうた
ファンタジー
日本の高校生、陽翔は突然、異世界に召喚された。その世界は存亡に瀕していた。そして、魔王を討伐するための旅を強要された。選択肢はなく、仲間と共に旅路についた。 旅の過程でひ弱だった陽翔は成長し、他の仲間と肩を並べるまでに心も身体も成長した。それから5年の歳月が過ぎて、陽翔は魔王の住まう城で最後の戦いを 迎えようとしていた。

処理中です...