子持ちオメガが運命の番と出会ったら

ゆう

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抑制剤の入った鞄はロッカーにあるから取りに行かないと...。

「なんか匂わないか?」

「確かに、甘い香りがする」

出入口に向かっているとざわめき始めた。
すぐにここを離れようと足早になる。

体が熱に浮かされたようにふらふらする。

「...っ!」

足がもつれて倒れそうになったが、目を瞑っても痛みはやってこなかった。

「大丈夫か」

頭上から低く落ち着きのある声がした。
見上げると受け止めてくれたのは先程のイケメンだった。

「すみません...。ありがとうございます」

「君は...」

「急ぐので失礼します」

言葉を遮って、先を急ぐ。
戻ったらちゃんと謝らないといけない。

発情している今、襲われても仕方ない状況だ。
とにかく今は抑制剤を飲まないと。

「あった...!」

抑制剤を飲んだから、これで収まるはずだ。
それにしても、突然ヒートになるなんて。

会場へ戻るとざわめきは収まっていた。
気のせいということになったのかもしれない。 

あの受け止めてくれたイケメンの所までいく。

「先程は言葉を遮ってしまい、申し訳ありません」

「いや、それは気にしなくていい。あの場で言うことではなかったからな」

何を言おうとしたのか気になるところだが、わざわざ聞くのも失礼だろう。

「私の名前は叶由貴だ。君の名前を聞いてもいいか」

「桜田凛です」

叶由貴さんか。
叶...もしかして叶グループの!?

「叶グループの系列であるK会社の社長をしている。君は事務の方で働いている桜田くんか」

僕の表情を読み取ったのか答えてくれる社長。

それにしても僕のことを覚えてくれていたなんて。

「そうです、社長」

会話の途中で秘書らしき方が社長に耳打ちする。
何かあったのだろうか。

「失礼する。また」

僕は軽く頭を下げた。
やはり社長という立場は何かと忙しそうだ。

僕の態度は失礼ではなかったか、今になって不安に思う。
大丈夫だよね...。

「桜田っ!今のって…」

「わっ、びっくりした」

「さっき受付が終わったんだよ。それより、あのイケメンが叶社長...?」

「そうみたいだね...」

「まじか!」

会場の端に行き、小さな声で話す。

「そろそろ上がらないと」

春の迎えに行かないといけない。

「もうそんな時間か」

「先に上がるね。お疲れ様」

「おう!」

子供の事情を説明してあるので、いつも定時で上がらせてもらっている。

さて、保育園まで春を迎えに行こう。
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