子持ちオメガが運命の番と出会ったら

ゆう

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「りんくんー、あさだよ」

「んん...」

カーテンが勢いよく開けられ、眩しい朝日が瞼を照らす。

目を開けると可愛い僕の天使がいた。

一人息子の桜田春だ。

「おはよう、春」

「おはよう!」

元気よく抱きつかれる。
はぁー可愛い。

重い腰を上げてキッチンに立った。

「たまごいれてー」

「甘いやつ?」

「あまいやつー」

弁当を作っていると春がまた抱きついてきた。
甘えたい年頃なんだろうか。

卵焼きをくるっと巻いてまとめる。

朝食はトーストでいいか。
牛乳も入れて、簡単な朝食を並べた。

「いただきまーす」

牛乳を飲んで口に髭をはやした春を微笑ましくみる。

「もうこんな時間か!」

時計を見ると結構時間が経っていた。
朝が弱いため、いつもギリギリになることが多い。

服をパパッと着せて荷物を持たせる。

「いい子にしてるんだよ」

愚図る春の頭を撫でる。
保育園まで送り届けた後、僕は仕事へ向かった。

僕は某大手の社員だ。

今日は午前まで事務仕事で午後からは偉い人達が集まるパーティーの受付。

「今日は楽だよなー。午後はパーティーの受付って」

同期の井上に話しかけられた。
井上は背が高くスポーツマンといった、モテる要素を兼ね備えている男。

「うちの会社の社長が出席するんだっけ」

「珍しいよなー、この会社に来てから一度も見かけたことないよ」

会社の社長は、あの叶グループの子息らしい。
叶グループといえば幾つもの有名企業を傘下に持つ日本一の財閥だ。
噂によるとその子息は見た目が良いエリートで女嫌いだそう。

僕とは別世界の人間だなぁ。

午前中の仕事を問題なく終わらせることができた。
午後からはパーティーの受付をしなければいけないので、招待客リストなどを準備する。

招待状と名前を確認してチェックしていく。

「すみません!」

スーツに身を包んだ男の人がやってきた。
名札をかけているのでスタッフの方だとわかった。
何か問題でもあったのだろうか。

「実はホールの方が人足りなくて...」

「井上ここ任せていい?」

招待客のほとんどは受付が終わっている。

仕事の出来る井上なら1人でも捌けるだろう。

「ああ!こんくらいなら任せとけ」

僕はホールへと向かいながら、仕事内容を聞く。

ホールには多くの人が集まっていた。
社長や会長などお偉い方々ばかりなのだろう。

「いかがですか」

僕は飲み物を勧めたり、食事の上げ下げをしていた。

確かに人数の割にホールのスタッフが少ないかもしれない。

妙に目を引くかっこいい男性が入ってきたのが見えた。
その瞬間、体が熱くなる。
なんで...!?
オメガの抑制剤は飲んだのに。
もう二度と同じ過ちは繰り返したくなかったのに。
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