77 / 188
第6章 神の器の奮闘記 ~王国復興編~
第77話 神の怒りプロジェクト②
しおりを挟む
ラクターさんが扉を背に静かに扉を押し開ける。
「……!」
誰かいた。若い女の人だ。メイド服らしき格好で、机に何かの布を畳んでいたところだった。
「あら…?」
──ってやばい!気づかれる!
と思ったその瞬間、コンバインさんが一瞬で距離を詰め、彼女の口を塞ぐ。
「…っ!ん……んっ!」
「静かに」
コンバインさんが短く言う。ラクターさんが、彼女の耳元に顔を近づける。
「我らは敵ではない。王に用がある。通せ」
目を見れば分かるのか、メイドさんの瞳が一瞬揺れて、それから小さくうなずいた。コンバインさんがゆっくり手を離すと、彼女は小声で扉の奥を指差した。
「はぁ…はぁ…王族の方は、あちらの広間に…」
「…見張りは?」
「玄関に二人…それだけですわ」
「わかった。身の安全は約束する。お前も一緒に来るんだ。」
ラクターさんとメイドさんが先頭を歩き、俺たちはそのすぐ後ろについていく。広間の扉の前に来ると、メイドさんが振り返り小さくうなずく。
「よし、開けろ」
ラクターさんの指示にメイドさんが扉に手をかけて、そっと開けた。
キィ……。
軋む音に、全員が一瞬だけ息を止めた。で、中にいたのは、威厳に満ち溢れた気難しそうな王様…のはずだった。(天貴の勝手なイメージ)
「…あれ?」
思わず声に出た。ていうか、出ちゃった。いたのは、見事にまるっこい。顔も体も性格も、全部まるっとしてそうな王様。まっしろいアフロ髪に、ぷくぷくのほっぺ。チェアにふわっと腰かけてる姿は、どう見てもやさしそうな普通のおっちゃんだ。隣には、女の子が二人。一人は灰色の髪で、どことなく神秘的な雰囲気の大人びた子。もう一人は黒髪の元気そうな女の。年齢的にも小学生くらいか……?
「わわわ!なんじゃなんじゃ!賊か!!」
まるっと王様ビビりながら席を立った。
「この子らだけは手を出さんでくれ!わしの命ならいくらでも差し出すのじゃ!」
「陛下、待たれよ!」
ラクターさん、ひざまずきながら一気に名乗る。
「私はラクター・エルグラード。かつて王家に仕えし者。今一度、あなたにお仕えに参りました」
それ聞いた王様の目が、まんまるのまま見開かれる。
「…ラクター?」
「はっ!」
「あの、将軍ラクター?ほ、本当に…!?」
「ははっ!」
ラクターさんはひざまずいたまま、ビシィと答える。
「それは、あの、一人で小隊を率いて海賊を追い払った、賊狩りのラクター?」
「はっ!なつかしゅうございます」
「で、で、あの、メイドたちにキャーキャー言われてたモテ男のラクター?」
「はっ?お、おそらく…その、ラクターです…」
「じゃあじゃあ…毎朝筋トレの音が城中に響いてたっていう、うおおおのラクター?」
「はぁ…それも、たぶん…私です」
「うおおお!間違いない!!ラクターじゃ!」
王様、まんまるボディで机バンッ!て叩いた!うわ、なにこの人、ノリがすごい!
「本物じゃ!最強の将軍が帰ってきおったわい!!」
「ちょっと、パパ!落ち着いて!」
灰髪の少女が、額に手をあてながらピシャリと注意。
「そっ…そうです!客人の前でみっともないです!」
もう一人の黒髪少女が、完全に赤面しながら椅子から飛び上がった。
「アリス…あの子らは?」
俺がそっと尋ねると、アリスは小声で答えた。
「王女様たちよ。リゼリア様と妹のリシェル様」
……え、あの、灰色のクール系が姉で、ツインテっぽい元気系が妹ってことか。っぽいな。
「パパはほんと、すぐ取り乱すんだから…」
リゼリア様が、小さくため息。年齢はたぶん、アリスよりちょっと下くらいだけど、落ち着きっぷりがすごい。
「と、とにかく、ラクター将軍!噂はお聞きしております。来てくださったんですねっ」
椅子から飛び上がったリシェル様が、今にも抱きつきそうな勢いでラクターさんに詰め寄る。
「はっ。玉座を取り戻すまで、再び王家の剣となる所存」
ラクターさんがビシィと頭を下げた。
「え…えぇ…!」
その姿に、リシェルちゃんの目がウルウルしはじめたぞ。やばい、泣くぞこれ。
「えぐっ…よかったあああ…ぐす……!」
泣いた!こっちがもらい泣きしそうだよもう。
「パパも…リシェルも、まずは落ち着いて」
リゼリア王女がスッと立ち、俺たちを見た。
「ここまで来たということは、何かしら動きを起こすつもりなのですよね?」
お、おう。いきなり鋭いな。落ち着いてるどころか一番話が早いのこの子じゃね?すると、ラクターさんがうなずいて言った。
「陛下。姫君方。この者たちは、アルカノア農場の者、わたくしの信頼する仲間たちです。そして──」
ラクターさんが…なぜか俺を見た。
「…この者が、神の器。この存在が帝国への牽制になります」
そう言って、俺の方に手をかざした。
「ちょ、ちょっと待って!?え、なに今の急な振り!?」
「てんぱい、言っちゃってくださいっす」
玄太、お前!いつものノリで俺を後押しすな!!
「神の器…あなたが?」
王女二人が、ぽかんとこっちを見る。王様も「ほへぇっ?」って顔になってる。
「てんぱい……コホン。この方が王国の救世主となるんす!」
「ほほお!その少年が!?」
でも、リゼリア王女は冷静だった。
「なるほど。読めたわ。神の器を利用して、帝国に見せつけるということね?」
「そういうことっす!」
今度は玄太が自信満々にうなずいた。おお、まるで俺の補佐官みたいだ……。
「これ、神の怒りプロジェクトって言うんすけど……」
「神の怒り…?そのネーミングで本当に大丈夫なの?」
リゼリア王女はそのセンスにちょっと不安げ。
「あ、気にしないでください!名前だけなんで!」
「えっ!?てんぱい!?」
とまあ、いろいろあったけど俺たちは無事、王族と合流。
「コホン。では王様!すべて説明します」
「おぉ!よろしく頼むぞ、ラクター将軍!」
こうして、神の怒りプロジェクトの火ぶたは切って落とされた。
「……!」
誰かいた。若い女の人だ。メイド服らしき格好で、机に何かの布を畳んでいたところだった。
「あら…?」
──ってやばい!気づかれる!
と思ったその瞬間、コンバインさんが一瞬で距離を詰め、彼女の口を塞ぐ。
「…っ!ん……んっ!」
「静かに」
コンバインさんが短く言う。ラクターさんが、彼女の耳元に顔を近づける。
「我らは敵ではない。王に用がある。通せ」
目を見れば分かるのか、メイドさんの瞳が一瞬揺れて、それから小さくうなずいた。コンバインさんがゆっくり手を離すと、彼女は小声で扉の奥を指差した。
「はぁ…はぁ…王族の方は、あちらの広間に…」
「…見張りは?」
「玄関に二人…それだけですわ」
「わかった。身の安全は約束する。お前も一緒に来るんだ。」
ラクターさんとメイドさんが先頭を歩き、俺たちはそのすぐ後ろについていく。広間の扉の前に来ると、メイドさんが振り返り小さくうなずく。
「よし、開けろ」
ラクターさんの指示にメイドさんが扉に手をかけて、そっと開けた。
キィ……。
軋む音に、全員が一瞬だけ息を止めた。で、中にいたのは、威厳に満ち溢れた気難しそうな王様…のはずだった。(天貴の勝手なイメージ)
「…あれ?」
思わず声に出た。ていうか、出ちゃった。いたのは、見事にまるっこい。顔も体も性格も、全部まるっとしてそうな王様。まっしろいアフロ髪に、ぷくぷくのほっぺ。チェアにふわっと腰かけてる姿は、どう見てもやさしそうな普通のおっちゃんだ。隣には、女の子が二人。一人は灰色の髪で、どことなく神秘的な雰囲気の大人びた子。もう一人は黒髪の元気そうな女の。年齢的にも小学生くらいか……?
「わわわ!なんじゃなんじゃ!賊か!!」
まるっと王様ビビりながら席を立った。
「この子らだけは手を出さんでくれ!わしの命ならいくらでも差し出すのじゃ!」
「陛下、待たれよ!」
ラクターさん、ひざまずきながら一気に名乗る。
「私はラクター・エルグラード。かつて王家に仕えし者。今一度、あなたにお仕えに参りました」
それ聞いた王様の目が、まんまるのまま見開かれる。
「…ラクター?」
「はっ!」
「あの、将軍ラクター?ほ、本当に…!?」
「ははっ!」
ラクターさんはひざまずいたまま、ビシィと答える。
「それは、あの、一人で小隊を率いて海賊を追い払った、賊狩りのラクター?」
「はっ!なつかしゅうございます」
「で、で、あの、メイドたちにキャーキャー言われてたモテ男のラクター?」
「はっ?お、おそらく…その、ラクターです…」
「じゃあじゃあ…毎朝筋トレの音が城中に響いてたっていう、うおおおのラクター?」
「はぁ…それも、たぶん…私です」
「うおおお!間違いない!!ラクターじゃ!」
王様、まんまるボディで机バンッ!て叩いた!うわ、なにこの人、ノリがすごい!
「本物じゃ!最強の将軍が帰ってきおったわい!!」
「ちょっと、パパ!落ち着いて!」
灰髪の少女が、額に手をあてながらピシャリと注意。
「そっ…そうです!客人の前でみっともないです!」
もう一人の黒髪少女が、完全に赤面しながら椅子から飛び上がった。
「アリス…あの子らは?」
俺がそっと尋ねると、アリスは小声で答えた。
「王女様たちよ。リゼリア様と妹のリシェル様」
……え、あの、灰色のクール系が姉で、ツインテっぽい元気系が妹ってことか。っぽいな。
「パパはほんと、すぐ取り乱すんだから…」
リゼリア様が、小さくため息。年齢はたぶん、アリスよりちょっと下くらいだけど、落ち着きっぷりがすごい。
「と、とにかく、ラクター将軍!噂はお聞きしております。来てくださったんですねっ」
椅子から飛び上がったリシェル様が、今にも抱きつきそうな勢いでラクターさんに詰め寄る。
「はっ。玉座を取り戻すまで、再び王家の剣となる所存」
ラクターさんがビシィと頭を下げた。
「え…えぇ…!」
その姿に、リシェルちゃんの目がウルウルしはじめたぞ。やばい、泣くぞこれ。
「えぐっ…よかったあああ…ぐす……!」
泣いた!こっちがもらい泣きしそうだよもう。
「パパも…リシェルも、まずは落ち着いて」
リゼリア王女がスッと立ち、俺たちを見た。
「ここまで来たということは、何かしら動きを起こすつもりなのですよね?」
お、おう。いきなり鋭いな。落ち着いてるどころか一番話が早いのこの子じゃね?すると、ラクターさんがうなずいて言った。
「陛下。姫君方。この者たちは、アルカノア農場の者、わたくしの信頼する仲間たちです。そして──」
ラクターさんが…なぜか俺を見た。
「…この者が、神の器。この存在が帝国への牽制になります」
そう言って、俺の方に手をかざした。
「ちょ、ちょっと待って!?え、なに今の急な振り!?」
「てんぱい、言っちゃってくださいっす」
玄太、お前!いつものノリで俺を後押しすな!!
「神の器…あなたが?」
王女二人が、ぽかんとこっちを見る。王様も「ほへぇっ?」って顔になってる。
「てんぱい……コホン。この方が王国の救世主となるんす!」
「ほほお!その少年が!?」
でも、リゼリア王女は冷静だった。
「なるほど。読めたわ。神の器を利用して、帝国に見せつけるということね?」
「そういうことっす!」
今度は玄太が自信満々にうなずいた。おお、まるで俺の補佐官みたいだ……。
「これ、神の怒りプロジェクトって言うんすけど……」
「神の怒り…?そのネーミングで本当に大丈夫なの?」
リゼリア王女はそのセンスにちょっと不安げ。
「あ、気にしないでください!名前だけなんで!」
「えっ!?てんぱい!?」
とまあ、いろいろあったけど俺たちは無事、王族と合流。
「コホン。では王様!すべて説明します」
「おぉ!よろしく頼むぞ、ラクター将軍!」
こうして、神の怒りプロジェクトの火ぶたは切って落とされた。
0
あなたにおすすめの小説
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】竜討伐の褒賞は、鹿角の王子様。(志願)
N2O
BL
執着王子 × 異世界転生魔法使い
魔法使いが逃げられなくなる話。
『上』『中』『下』の全三話、三連休中に完結します。
二万字以下なので、ショートショート𖤣𖥧𖥣
Special thanks
illustration by okiagsa様(X:@okigasa_tate)
MBM様(X:@MBMpaper)
※独自設定、ご都合主義。あしからず。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる