忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥

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第6章 神の器の奮闘記 ~王国復興編~

第84話 神の器プロジェクト完遂

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【帝国】

 風が唸る。帝国の空は怪しく曇っていた。そしてゲドに、震える報せが届く。

「ゲド将軍。急報です」

 参謀が膝をつき、一通の書簡を差し出した。ゲドは無造作にそれを受け取り、開くと目を細めた。

「王族が解放!?玉座も、奪還されただと?」

 静寂が幕舎に満ちる。机の上の蝋燭が、不意に細く揺れた。

「俺がいない間に、好き放題やってくれたな」

 ゲドは低く唸り、拳を机に叩きつけた。

「兵を集めろ。帝国に援軍を要請し、即刻アグリスティアを堕とす!!」

「……将軍!」

 参謀が、そっと口を挟む。

「アグリスティアの空から綿氷が降った、との報が届いております」
「綿の氷?そんな話、聞いたことが無い!」

 ゲドの目が、険しく細まった。

「兵の中に動揺が広がっております。また、帝国評議会、司教会、貴族派の一部より、神罰の恐れあり。今は手を出すべきでないとの伝達が!!」

「…チッ。中央の連中め」
「アグリスティアに在中の帝国兵も引き上げる…と!」

 ゲドは書簡をくしゃくしゃに丸めて放り投げた。

「綿氷ひとつで手を引くとは、あの老いぼれ評議会はどれだけ臆病なんだ!」
「ですが将軍、今回の件に対する正式な軍令です。神の器には手を出すな。民心を失えば、帝国の正統性に傷がつくと」

「民心?くだらん!」
「将軍…それでも、命令は命令です。帝国法の下、違反すれば我々もただでは済みません」

 別の若い参謀が、声を絞り出す。ゲドの声が静かに低くなる。しんと冷え込む空気の中、ゲドは椅子に座り口元を歪める。

「っふ。まぁ仕方ない。」

 唇の端から、獣のような笑い声が漏れる。

「だが、綿氷が止まったその日。俺はアグリスティアを粉砕する!神の器ごとな」


【アグリスティア王宮・玉座の間】

 玉座奪還の興奮が少しずつ静まり、ようやく「終わったんだ」って実感が空気にしみ込んでいく。

 そこへ。

「レミス卿!!!」

 重い扉が開いて、兵士の一人が駆け込んできた。

「密書が!帝国によるアグリスティア再侵攻は、しばらく見送られるとのこと!」
「なんと!?」

 レミス卿が眉をひそめ、報告書を受け取る。

「綿氷なる異常現象に対し、信仰と動揺が広がっており、帝国はこれを神の警告と認識!」
「各所に集まっていた兵はどうなった!?」

 農場を包囲する各陣営が気になるラクターさん。

「集結しつつあった各所拠点は解散!帝国軍は一時的に干渉を控えるとあります」
「ふう、これでひとまず…か」

 ルード老が、ヒゲをいじりながらニヤリ。

「っふぉ…天貴殿。神の奇跡の効果はテキメンじゃの」
「いや、本当にうまく行くとは思いませんでした!」

「おお、神の器のなんと謙虚なお言葉!」
「このような崇高な魂に神は宿るのですな」

 セス卿とレミス卿のからかい交じりの信仰。いや俺、全然神って器じゃないし!一応否定しようとしたけど、王様がにっこり笑って俺の方を見る。

「天貴よ。お主がいなければこの王宮にこれは降らなかった…つまり、おぬしの力が帝国を退けたのじゃ」
「ええ、天貴さま!あなたのおかげです!」

 リゼリア王女がそう言うと、リシェル王女もうんうんとうなずく。

「天貴。無理して使ったんだ。堂々として良い!」
「そうよ天貴!最高のスカイリンクだったわ!」

「そ、そうか?」

 ラクターさんの励ましとアリスのガッツポーズを見て、そういうことにしておこうと思った。すると玄太が小声でこっそり耳打ちしてくる。

「てんぱいが神なわけないのに。でもこれって、マジで神の器プロジェクト成功ってことっすよね?」
「だな。敵をだますなら味方からって言うしな」

 俺が肩をすくめたそのとき、王様が立ち上がった。雪が静かに肩に降り積もる。

「よし!アグリスティアは戻ってきた!」

 高らかな王の声が、玉座の間に響いた。兵士たちが、家臣たちが、そして王女たちが一斉に膝をつく。

「アグリスティアに栄光を!!」
「万歳……!」

「民に光を!」
「万歳……!!」

「神の器に感謝を!」
「万歳……!!!」

 や、ちょっと!?なんか最後だけ方向おかしくなってない!?でもまあ、それでもいい。この雪の下でみんなが笑ってる。俺も、ちょっとだけ…誇らしくなった気がした。
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