84 / 188
第6章 神の器の奮闘記 ~王国復興編~
第84話 神の器プロジェクト完遂
しおりを挟む
【帝国】
風が唸る。帝国の空は怪しく曇っていた。そしてゲドに、震える報せが届く。
「ゲド将軍。急報です」
参謀が膝をつき、一通の書簡を差し出した。ゲドは無造作にそれを受け取り、開くと目を細めた。
「王族が解放!?玉座も、奪還されただと?」
静寂が幕舎に満ちる。机の上の蝋燭が、不意に細く揺れた。
「俺がいない間に、好き放題やってくれたな」
ゲドは低く唸り、拳を机に叩きつけた。
「兵を集めろ。帝国に援軍を要請し、即刻アグリスティアを堕とす!!」
「……将軍!」
参謀が、そっと口を挟む。
「アグリスティアの空から綿氷が降った、との報が届いております」
「綿の氷?そんな話、聞いたことが無い!」
ゲドの目が、険しく細まった。
「兵の中に動揺が広がっております。また、帝国評議会、司教会、貴族派の一部より、神罰の恐れあり。今は手を出すべきでないとの伝達が!!」
「…チッ。中央の連中め」
「アグリスティアに在中の帝国兵も引き上げる…と!」
ゲドは書簡をくしゃくしゃに丸めて放り投げた。
「綿氷ひとつで手を引くとは、あの老いぼれ評議会はどれだけ臆病なんだ!」
「ですが将軍、今回の件に対する正式な軍令です。神の器には手を出すな。民心を失えば、帝国の正統性に傷がつくと」
「民心?くだらん!」
「将軍…それでも、命令は命令です。帝国法の下、違反すれば我々もただでは済みません」
別の若い参謀が、声を絞り出す。ゲドの声が静かに低くなる。しんと冷え込む空気の中、ゲドは椅子に座り口元を歪める。
「っふ。まぁ仕方ない。」
唇の端から、獣のような笑い声が漏れる。
「だが、綿氷が止まったその日。俺はアグリスティアを粉砕する!神の器ごとな」
【アグリスティア王宮・玉座の間】
玉座奪還の興奮が少しずつ静まり、ようやく「終わったんだ」って実感が空気にしみ込んでいく。
そこへ。
「レミス卿!!!」
重い扉が開いて、兵士の一人が駆け込んできた。
「密書が!帝国によるアグリスティア再侵攻は、しばらく見送られるとのこと!」
「なんと!?」
レミス卿が眉をひそめ、報告書を受け取る。
「綿氷なる異常現象に対し、信仰と動揺が広がっており、帝国はこれを神の警告と認識!」
「各所に集まっていた兵はどうなった!?」
農場を包囲する各陣営が気になるラクターさん。
「集結しつつあった各所拠点は解散!帝国軍は一時的に干渉を控えるとあります」
「ふう、これでひとまず…か」
ルード老が、ヒゲをいじりながらニヤリ。
「っふぉ…天貴殿。神の奇跡の効果はテキメンじゃの」
「いや、本当にうまく行くとは思いませんでした!」
「おお、神の器のなんと謙虚なお言葉!」
「このような崇高な魂に神は宿るのですな」
セス卿とレミス卿のからかい交じりの信仰。いや俺、全然神って器じゃないし!一応否定しようとしたけど、王様がにっこり笑って俺の方を見る。
「天貴よ。お主がいなければこの王宮にこれは降らなかった…つまり、おぬしの力が帝国を退けたのじゃ」
「ええ、天貴さま!あなたのおかげです!」
リゼリア王女がそう言うと、リシェル王女もうんうんとうなずく。
「天貴。無理して使ったんだ。堂々として良い!」
「そうよ天貴!最高のスカイリンクだったわ!」
「そ、そうか?」
ラクターさんの励ましとアリスのガッツポーズを見て、そういうことにしておこうと思った。すると玄太が小声でこっそり耳打ちしてくる。
「てんぱいが神なわけないのに。でもこれって、マジで神の器プロジェクト成功ってことっすよね?」
「だな。敵をだますなら味方からって言うしな」
俺が肩をすくめたそのとき、王様が立ち上がった。雪が静かに肩に降り積もる。
「よし!アグリスティアは戻ってきた!」
高らかな王の声が、玉座の間に響いた。兵士たちが、家臣たちが、そして王女たちが一斉に膝をつく。
「アグリスティアに栄光を!!」
「万歳……!」
「民に光を!」
「万歳……!!」
「神の器に感謝を!」
「万歳……!!!」
や、ちょっと!?なんか最後だけ方向おかしくなってない!?でもまあ、それでもいい。この雪の下でみんなが笑ってる。俺も、ちょっとだけ…誇らしくなった気がした。
風が唸る。帝国の空は怪しく曇っていた。そしてゲドに、震える報せが届く。
「ゲド将軍。急報です」
参謀が膝をつき、一通の書簡を差し出した。ゲドは無造作にそれを受け取り、開くと目を細めた。
「王族が解放!?玉座も、奪還されただと?」
静寂が幕舎に満ちる。机の上の蝋燭が、不意に細く揺れた。
「俺がいない間に、好き放題やってくれたな」
ゲドは低く唸り、拳を机に叩きつけた。
「兵を集めろ。帝国に援軍を要請し、即刻アグリスティアを堕とす!!」
「……将軍!」
参謀が、そっと口を挟む。
「アグリスティアの空から綿氷が降った、との報が届いております」
「綿の氷?そんな話、聞いたことが無い!」
ゲドの目が、険しく細まった。
「兵の中に動揺が広がっております。また、帝国評議会、司教会、貴族派の一部より、神罰の恐れあり。今は手を出すべきでないとの伝達が!!」
「…チッ。中央の連中め」
「アグリスティアに在中の帝国兵も引き上げる…と!」
ゲドは書簡をくしゃくしゃに丸めて放り投げた。
「綿氷ひとつで手を引くとは、あの老いぼれ評議会はどれだけ臆病なんだ!」
「ですが将軍、今回の件に対する正式な軍令です。神の器には手を出すな。民心を失えば、帝国の正統性に傷がつくと」
「民心?くだらん!」
「将軍…それでも、命令は命令です。帝国法の下、違反すれば我々もただでは済みません」
別の若い参謀が、声を絞り出す。ゲドの声が静かに低くなる。しんと冷え込む空気の中、ゲドは椅子に座り口元を歪める。
「っふ。まぁ仕方ない。」
唇の端から、獣のような笑い声が漏れる。
「だが、綿氷が止まったその日。俺はアグリスティアを粉砕する!神の器ごとな」
【アグリスティア王宮・玉座の間】
玉座奪還の興奮が少しずつ静まり、ようやく「終わったんだ」って実感が空気にしみ込んでいく。
そこへ。
「レミス卿!!!」
重い扉が開いて、兵士の一人が駆け込んできた。
「密書が!帝国によるアグリスティア再侵攻は、しばらく見送られるとのこと!」
「なんと!?」
レミス卿が眉をひそめ、報告書を受け取る。
「綿氷なる異常現象に対し、信仰と動揺が広がっており、帝国はこれを神の警告と認識!」
「各所に集まっていた兵はどうなった!?」
農場を包囲する各陣営が気になるラクターさん。
「集結しつつあった各所拠点は解散!帝国軍は一時的に干渉を控えるとあります」
「ふう、これでひとまず…か」
ルード老が、ヒゲをいじりながらニヤリ。
「っふぉ…天貴殿。神の奇跡の効果はテキメンじゃの」
「いや、本当にうまく行くとは思いませんでした!」
「おお、神の器のなんと謙虚なお言葉!」
「このような崇高な魂に神は宿るのですな」
セス卿とレミス卿のからかい交じりの信仰。いや俺、全然神って器じゃないし!一応否定しようとしたけど、王様がにっこり笑って俺の方を見る。
「天貴よ。お主がいなければこの王宮にこれは降らなかった…つまり、おぬしの力が帝国を退けたのじゃ」
「ええ、天貴さま!あなたのおかげです!」
リゼリア王女がそう言うと、リシェル王女もうんうんとうなずく。
「天貴。無理して使ったんだ。堂々として良い!」
「そうよ天貴!最高のスカイリンクだったわ!」
「そ、そうか?」
ラクターさんの励ましとアリスのガッツポーズを見て、そういうことにしておこうと思った。すると玄太が小声でこっそり耳打ちしてくる。
「てんぱいが神なわけないのに。でもこれって、マジで神の器プロジェクト成功ってことっすよね?」
「だな。敵をだますなら味方からって言うしな」
俺が肩をすくめたそのとき、王様が立ち上がった。雪が静かに肩に降り積もる。
「よし!アグリスティアは戻ってきた!」
高らかな王の声が、玉座の間に響いた。兵士たちが、家臣たちが、そして王女たちが一斉に膝をつく。
「アグリスティアに栄光を!!」
「万歳……!」
「民に光を!」
「万歳……!!」
「神の器に感謝を!」
「万歳……!!!」
や、ちょっと!?なんか最後だけ方向おかしくなってない!?でもまあ、それでもいい。この雪の下でみんなが笑ってる。俺も、ちょっとだけ…誇らしくなった気がした。
0
あなたにおすすめの小説
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】竜討伐の褒賞は、鹿角の王子様。(志願)
N2O
BL
執着王子 × 異世界転生魔法使い
魔法使いが逃げられなくなる話。
『上』『中』『下』の全三話、三連休中に完結します。
二万字以下なので、ショートショート𖤣𖥧𖥣
Special thanks
illustration by okiagsa様(X:@okigasa_tate)
MBM様(X:@MBMpaper)
※独自設定、ご都合主義。あしからず。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる