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第8章:アルカノア農場戦記 ~因縁の戦い~
第119話 器と器
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一方、神喰いが向かった玄関ホール。
「天貴よ、ここは入った者を逃さぬ牢じゃ」
青欒の館に突入した途端、背後の扉が勝手に閉まり、無数の錠がガチガチと噛み合った。
「おいおい、勝手にオートロックとか聞いてねえぞ!?」
叫んだ声が館の奥へ吸い込まれる。
ガラ……。
そして、静まり返った廊下から返ってきたのは、不気味な反響と奥の闇から鎖を引きずる音。
──ガララララ……。
その不快な響きが、地鳴りのような足音と共にじわじわ這ってくる。
「……出迎えってわけか。けど、ウェルカムドリンクにしては錆くせぇ音だな!」
俺は反射的にブルーストライクを構えて、腰を落とした。
「来るぞ、クータン!」
闇がヌラリと揺れる。
ランプの明かりに浮かび上がったのは、全身を鎖に絡め、四つん這いで床を這う異形だった。その頭部は人のようでいて、空洞の目穴が俺を真っ直ぐに見据えていた。
「えっぐぅ……あれが神喰いの器ってやつか!」
「禍々しい……と言う他あるまい」
神喰いの器のヤバい見た目に、さすがにクータンの声も硬い。
胸の奥がざわつく。ただアイツに見られているだけで、押し潰されそうだ。
──グォオオオオオォォッ!!
咆哮と同時に奴が右手をブルンっと薙ぎ払うと、鎖がジャララと蛇のように走り、突っ込んできた。
「ぬし!足元じゃ!」
クータンの声に、俺はブルーストライクを低く構えて横薙ぎに振り抜く。
ギィィン!
金属同士が激突し、火花が飛び散った。衝撃で腕がビリビリ痺れ、背中まで震えが走る。
「ぐ……っ!重っ!さすがにスコップじゃ分が悪りぃ!」
「ぬしよ、気を抜くでない!」
肩のクータンが吠える。
「分かってる!コイツ、ガチで俺を解体しに来てる!!」
神喰は鎖を振り回し、壁を次々と粉砕して迫ってくる。飛び散った石片が頬をかすめ、熱い線が走った。血が一筋、視界を赤く染める。
「ちっ……!」
舌打ちしながら、俺は肩のクータンに振り返る。
「クータン!危ねぇ、物陰に避難してろ!」
鎖がうなりを上げて床をえぐり、破片が雨のように降り注ぐ。床を蹴って飛び退き、再びブルーストライクを構える。
「けどなぁ……」
恐怖と興奮で、なぜか笑いがこぼれる。
「俺は、てめぇに食われに来たわけじゃねえ!玄太を取り返しに来たんだよッ!!」
ブルーストライクが青く閃光を放ち、鎖の闇を真正面から切り裂いた。
ズシャァァァァ!!!
神喰の体が大きく仰け反り、火花と血飛沫が散る。
「よっしゃ……!効いたか!」
でも、手応えを感じたのはそこまでだった。
──グギャァァァァァァッ!!
獣じみた絶叫。
怒った神喰は鎖を全身に叩きつけるように振り回し、玄関ホールそのものを薙ぎ払った。
「なっ……!広範囲!?」
柱もろとも壁が砕け、床石が跳ね上がる。暴風のような衝撃が正面から叩きつけられ、俺の体は宙に浮いた。
ドスゥゥン……!
背中から石畳に叩きつけられる。
「ぐッ、はぁ……はぁ……!!」
肺の空気が一気に吐き出され、視界が白く弾けた。ブルーストライクが手から転がり落ち、石床にカランと乾いた音を響かせる。
「天貴よ!!」
クータンの叫びが遠く聞こえる。
まともに声が出ない。腕も足も重い。息すらまともに吸えない。
だが、なおも耳に届くのは不快な鎖の音。
ガラ……!ガラララ!!
鎖がうなりを上げ、倒れた俺もろとも床も壁も関係なく薙ぎ払う。
「ぐっ……ああぁっ!」
俺はそのたびに吹き飛ばされ、石畳に叩きつけられた。
「………いってぇ……死ぬほど痛ぇ………!」
体中がが焼けるように痛み、唇を噛んでも声が漏れる。血の味が口いっぱいに広がった。
「まだ……玄太にも会えて………ぐは!!」
立ち上がろうとしても、鎖と衝撃波でなぎ倒されて、何度も床に転がされる。
――ドゴォッ!
俺はそのまま膝をつき、壁にもたれかかった。
「ぬしよ!!」
物陰に避難していたクータンが、ピョコピョコと近づいて耳元で囁いた。
「やはり単騎では無謀であったか……」
「かもな……俺はもう、こいつを止めきれねぇ……」
血を吐きながら、耳元にいたクータンを手で押しやった。
「だからお前が行け!玄太を探せ!絶対、一緒に逃げてくれ!」
「しかし、このままでは殺されるぞ?」
「いいから行けって言ってんだ!!」
叫んだ瞬間、鎖が再び俺を薙ぎ払う。
ズシャァァァァァァ!!!
「おらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、俺は鎖とすれ違うように、奴の奥へクータンを思いっきり投げた。それと同時に、壁ごと押し潰されるような衝撃。肺が潰れそうになり、膝が崩れ落ちる。
「ふぐっ………」
「……ぬしぃぃ!!……生きろ……ょ……」
クータンの声が弧を描きながら遠ざかる。
「っがはぁっ……はぁ………」
(…………頼むぞ、クータン)
そして、残ったのは俺と、神喰いの器だけ。
空洞の目穴が、倒れた俺を見下していた。そして、俺の体に巨大な影が覆いかぶさる。
「……いいぜ……来いよ……」
青ざめた笑いが、つい口から漏れる。本当にここで終わりか。そう思った瞬間、視界の端で何かが光を反射した。
転がったままのブルーストライク。
指先が勝手に伸びる。血に濡れた柄をつかみ、最後の力を振り絞る。
ズブッ!!
スコップの先端が、異形の眼窩を貫いた。
獣じみた悲鳴が玄関を揺らし、鎖が乱暴にのたうつ。
「……っは……ざまァ……みろ……」
吐き捨てた瞬間、身体から完全に力が抜けた。
──グオォォォォォォォォッ!!
怒りで赤黒く染まった神喰の器が、両腕を振りかざす。ぼやけた視界に、ひび割れた天井が映った。
「……玄太……無事で……あれ……」
衝撃と共に、意識は闇へと沈んでいった。
「天貴よ、ここは入った者を逃さぬ牢じゃ」
青欒の館に突入した途端、背後の扉が勝手に閉まり、無数の錠がガチガチと噛み合った。
「おいおい、勝手にオートロックとか聞いてねえぞ!?」
叫んだ声が館の奥へ吸い込まれる。
ガラ……。
そして、静まり返った廊下から返ってきたのは、不気味な反響と奥の闇から鎖を引きずる音。
──ガララララ……。
その不快な響きが、地鳴りのような足音と共にじわじわ這ってくる。
「……出迎えってわけか。けど、ウェルカムドリンクにしては錆くせぇ音だな!」
俺は反射的にブルーストライクを構えて、腰を落とした。
「来るぞ、クータン!」
闇がヌラリと揺れる。
ランプの明かりに浮かび上がったのは、全身を鎖に絡め、四つん這いで床を這う異形だった。その頭部は人のようでいて、空洞の目穴が俺を真っ直ぐに見据えていた。
「えっぐぅ……あれが神喰いの器ってやつか!」
「禍々しい……と言う他あるまい」
神喰いの器のヤバい見た目に、さすがにクータンの声も硬い。
胸の奥がざわつく。ただアイツに見られているだけで、押し潰されそうだ。
──グォオオオオオォォッ!!
咆哮と同時に奴が右手をブルンっと薙ぎ払うと、鎖がジャララと蛇のように走り、突っ込んできた。
「ぬし!足元じゃ!」
クータンの声に、俺はブルーストライクを低く構えて横薙ぎに振り抜く。
ギィィン!
金属同士が激突し、火花が飛び散った。衝撃で腕がビリビリ痺れ、背中まで震えが走る。
「ぐ……っ!重っ!さすがにスコップじゃ分が悪りぃ!」
「ぬしよ、気を抜くでない!」
肩のクータンが吠える。
「分かってる!コイツ、ガチで俺を解体しに来てる!!」
神喰は鎖を振り回し、壁を次々と粉砕して迫ってくる。飛び散った石片が頬をかすめ、熱い線が走った。血が一筋、視界を赤く染める。
「ちっ……!」
舌打ちしながら、俺は肩のクータンに振り返る。
「クータン!危ねぇ、物陰に避難してろ!」
鎖がうなりを上げて床をえぐり、破片が雨のように降り注ぐ。床を蹴って飛び退き、再びブルーストライクを構える。
「けどなぁ……」
恐怖と興奮で、なぜか笑いがこぼれる。
「俺は、てめぇに食われに来たわけじゃねえ!玄太を取り返しに来たんだよッ!!」
ブルーストライクが青く閃光を放ち、鎖の闇を真正面から切り裂いた。
ズシャァァァァ!!!
神喰の体が大きく仰け反り、火花と血飛沫が散る。
「よっしゃ……!効いたか!」
でも、手応えを感じたのはそこまでだった。
──グギャァァァァァァッ!!
獣じみた絶叫。
怒った神喰は鎖を全身に叩きつけるように振り回し、玄関ホールそのものを薙ぎ払った。
「なっ……!広範囲!?」
柱もろとも壁が砕け、床石が跳ね上がる。暴風のような衝撃が正面から叩きつけられ、俺の体は宙に浮いた。
ドスゥゥン……!
背中から石畳に叩きつけられる。
「ぐッ、はぁ……はぁ……!!」
肺の空気が一気に吐き出され、視界が白く弾けた。ブルーストライクが手から転がり落ち、石床にカランと乾いた音を響かせる。
「天貴よ!!」
クータンの叫びが遠く聞こえる。
まともに声が出ない。腕も足も重い。息すらまともに吸えない。
だが、なおも耳に届くのは不快な鎖の音。
ガラ……!ガラララ!!
鎖がうなりを上げ、倒れた俺もろとも床も壁も関係なく薙ぎ払う。
「ぐっ……ああぁっ!」
俺はそのたびに吹き飛ばされ、石畳に叩きつけられた。
「………いってぇ……死ぬほど痛ぇ………!」
体中がが焼けるように痛み、唇を噛んでも声が漏れる。血の味が口いっぱいに広がった。
「まだ……玄太にも会えて………ぐは!!」
立ち上がろうとしても、鎖と衝撃波でなぎ倒されて、何度も床に転がされる。
――ドゴォッ!
俺はそのまま膝をつき、壁にもたれかかった。
「ぬしよ!!」
物陰に避難していたクータンが、ピョコピョコと近づいて耳元で囁いた。
「やはり単騎では無謀であったか……」
「かもな……俺はもう、こいつを止めきれねぇ……」
血を吐きながら、耳元にいたクータンを手で押しやった。
「だからお前が行け!玄太を探せ!絶対、一緒に逃げてくれ!」
「しかし、このままでは殺されるぞ?」
「いいから行けって言ってんだ!!」
叫んだ瞬間、鎖が再び俺を薙ぎ払う。
ズシャァァァァァァ!!!
「おらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、俺は鎖とすれ違うように、奴の奥へクータンを思いっきり投げた。それと同時に、壁ごと押し潰されるような衝撃。肺が潰れそうになり、膝が崩れ落ちる。
「ふぐっ………」
「……ぬしぃぃ!!……生きろ……ょ……」
クータンの声が弧を描きながら遠ざかる。
「っがはぁっ……はぁ………」
(…………頼むぞ、クータン)
そして、残ったのは俺と、神喰いの器だけ。
空洞の目穴が、倒れた俺を見下していた。そして、俺の体に巨大な影が覆いかぶさる。
「……いいぜ……来いよ……」
青ざめた笑いが、つい口から漏れる。本当にここで終わりか。そう思った瞬間、視界の端で何かが光を反射した。
転がったままのブルーストライク。
指先が勝手に伸びる。血に濡れた柄をつかみ、最後の力を振り絞る。
ズブッ!!
スコップの先端が、異形の眼窩を貫いた。
獣じみた悲鳴が玄関を揺らし、鎖が乱暴にのたうつ。
「……っは……ざまァ……みろ……」
吐き捨てた瞬間、身体から完全に力が抜けた。
──グオォォォォォォォォッ!!
怒りで赤黒く染まった神喰の器が、両腕を振りかざす。ぼやけた視界に、ひび割れた天井が映った。
「……玄太……無事で……あれ……」
衝撃と共に、意識は闇へと沈んでいった。
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