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第2章:てんぱい異世界の足跡
第18話 天貴、悩む
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「待ってた?俺が来ることを知っていたのか?」
思いもよらぬアリスの反応に動揺していると、玄関の方からガヤガヤと騒がしい声が聞こえて来た。
(う……誰か来る!?)
そしておもむろにガチャっとドアは開かれた。
「アリスさん!倉庫の整理終わったわ!」
「まったく、こうも雨続きだと倉庫作業がはかどってしかたねえ!」
ぞろぞろ現れた一同は、俺の目の前で跪く少女に驚いて一斉に俺に視線を向ける。これ、自分から発言するのは厳しい状況だ。誰かがしゃべりだすのを待つしかない。
すると、そんな俺の期待に応えて体格の良いお兄さんが声を上げた。
「はっ!まさかこのお方がアリス嬢の言っていた……」
「救世主!?」
最後は全員で大合唱。すんごい恥ずかしい。それに、一気に心配になってきた。まだアストラとやらを試してもないのに話が加速してる。そんな不安をよそに、まさかの追い討ち。アリスはスッと立ち上がりキラキラした目で、まるで舞台女優のように両手を広げた。
「彼は天貴さん!私が未来視で視た農場を救う者、ここに降臨よ」
「本当に来たのか!すげえ!」
「やりましたね、アリスさん!」
やめてくれ!ハードルが上がる!!玄太が毎日好き放題食った場合のエンゲル係数くらいぐんぐん上がる!ってか俺のバカ!普通、何よりも先にスカイリンクを試すべきだろ!そして瞬時に、ここで「なんて答えるのがベストか」を考える。それによって異世界生活のルートが変わりそうな予感がする。考えた末、俺の出した答えは……。
「天候操作、やっちゃう?」
(わぁぁぁ、何言ってんだよ俺!)
*****
5分後、俺は雨の止まない空の下にいた。今俺の目の前には、見渡す限りの雄大な畑!!雨の中大空を翔る鳥たち!!そして後ろには、期待度MAXで目をキラキラさせたギャラリー。
一応、アリスにだけは初めて使うという事の説明はしておいたけど。
(はぁ……不安だ)
でも、だ。クータンの言葉を思い出す。
「能力とは天の決めた理。すなわち絶対的なルールそのものじゃ。同等に阻害する力でも働かん限り、その実行は絶対なのじゃ」
(その実行は絶対……!その実行は絶対……!)
「くそっ……やるっきゃない。クータン信じるぜ!」
意を決して前脚、もとい両手を空に掲げ、雨雲を蹴散らすかの如く俺は空に叫ぶ!!
「空よ、晴れろぉぉぉぉぉぉ」
ザ―――――――
雨は止む気配はない。だろうな。そんな気はしてた。しかし、まだ手はある!
「雨よ、止めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
(これでもない、次!)
「出でよ、たいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
(だめだ。晴れの呼び方が分かんねえ!)
しかし、まだ思いつく言葉ならある。
「ほんじつかいせぇぇぇ」
「すみわたるあおぞらぁぁぁ」
「せいてんのへきれきぃぃぃ」
いろんな言葉で晴れを呼ぼうとする俺を眺めながら、ギャラリーの中の緑髪の女子がアリスに質問する。
「…アリスちゃん、あの方はどうされたのですか?」
「う、うーん、とね…」
アリスは苦笑いしながらギャラリーに俺から聞いた能力の説明した。
「まだ使ったことがないってぇぇぇ!?」
びっくりするギャラリーだが、事実使ったことはない。そしてついに俺は、晴れを呼ぶ語彙(ボキャブラリー)が尽きて硬直する。そんな期待外れの救世主を尻目に、ぞろぞろと屋敷に戻っていくギャラリーたち。俺は硬直しながら自分がこれからどうなるのか?を考え、思わず不穏な展開が口からこぼれる。
「あ、俺、これ知ってる。罵倒されて、詐欺師!婚約解消!ハイ終わり!」
(しないしない、と手を横に振るアリス)
「もしくは、無能!役立たず!ってパーティから追放されて踏んだり蹴ったり…」
(しないしない、と手を横に振るアリス)
そんな俺の肩にポンと優しく置かれた手。
「風邪ひくから、もう入って!」
そう言ってアリスも屋敷に戻る。薄暗くなり始めた雨空の下、なお硬直し続ける俺。あれ?俺の異世界生活、詰んでる?
*****
ずぶ濡れになった俺は、アリスに促されるまま入浴。現在、湯船で放心状態。
「スカイリンクは使えねえし、死んだはずの仔牛のマボロシまで見るし、俺どうなってんの?」
すると、ギャラリーにいたガッチリ兄さんと青髪の少年が浴室に入ってきた。
ザブ~~ン!!
「よ、救世主!今日はちょっと調子悪かったな?」
「さっきはあんな態度取ってごめんなさい。期待からの落差が大きくって」
「な、なにこの感じ!?すげぇ優しい!日本だったら即炎上だぜ?」
(ひどい偏見)
「悪いね?期待外れなのにお風呂借りちゃって」
優しくされると拗ねたくなる、我ながらのあまのじゃく。
(素直に感謝すりゃいいのに、俺ってマジで面倒くせぇ)
「いいって、いいって!ここじゃ、クワさえ持てりゃ何とかなるっ!」
「そうですよ!僕の能力なんて、ほとんど雑草駆除ですから」
笑う二人。おやっさん農場みたいなノリに「あ、なんかやってけるかも」なんて思ったりしてみる。
*****
風呂から出た男性陣にアリスが冷たいミルクを振る舞ってくれる。ふたりがミルクを取り、最後に残った一杯を俺に差し出す。
「ごめんね!私がハードル上げすぎちゃった!」
「俺が勝手にすぐに使えるもんだと勘違いしてて…いや、すまん」
軽くお辞儀をしてミルクを受け取りコクッと飲むと、濃厚なのにすっきりとした甘さが喉を通過した。
「あ、うまぁ」
ミルクのうまさに感動していると風呂上がりの女性陣が少し遅れてリビングに入ってくる。その中のひとりの少女が俺にトコトコと近づく。
「救世主さんどうだモ?うちのミルク、うまいんだモ?」
牛の恰好をした牛っ娘だ!牛つながりでクータンを彷彿とさせて、クスッと笑いながら俺はうんうんと頷く。
「ヤギのミルクの方が美味いんだベ!救世主は、明日の朝飲むといいベ!」
こっちは羊の恰好をした羊っ娘か。そんな様子を笑顔で見ていたアリスが二人を紹介してくれた。
「彼女たちは牛と羊担当のモーちゃんとメーちゃん。アニマルテイマーの姉妹よ!」
「よろしくだモ」
「よろしくだベ」
そう言って二人同時に手を差し出す。
俺は右手でモーちゃんと、左手でメーちゃんと握手をした。すると後ろで空になったコップをトンッと置く音がして、はっと振り返る。
「モーとメーが懐くなら、やっぱり悪い奴じゃなさそうだな」
ミルクを飲み終えたガッチリ兄さんが俺に近づく。さっきお風呂で最初に声をかけてくれた人だ。
「俺はコンバイン!稲や麦の担当だ!よろしくぅ!」
(コンバイン!?現代の農場のスーパーヒーローじゃん!)
稲や麦の収穫に欠かせないマスト重機。科学が発達してなくてもこんな形で出会えるなんて。
「僕はベータ!よろしく!」
(さっきの雑草の子だ!ベータと言えば雑草除去するマシン!)
「私はシーダ!担当は…」
そう言って話し出す緑髪の女の子の言葉を、俺は恰好つけて遮った。
「種まきとか、得意ですね?」
そう言って手を前に出す。
「え?ええ…そうよ、よろしく」
シーダさんはびっくりしながら俺と握手を交わす。聞きなれた重機たちの登場に、つい嬉しくなってひけらかしてしまった。
「最後はわたし、かな?」
控えめな声とともに一歩前に出た少女。アリスと同じくらいか少し下くらいの歳のその少女は部屋の中央に立ち、ランプのようなものに光を灯す。すると少し薄暗くなっていた部屋全体がパアァっと明るくなった。
「彼女のアストラは光の生成よ!」
「おお、すげえ」
炎の光とは明らかにレベチなその光。先端が虹のようにきらめいて、まるで太陽の光を集めたような、不思議な光だ。
「ライラです、よろしくお願いします」
少し照れくさそうにうつむき加減で挨拶するライラは、なんとなく自身のなさそうな、そんな印象を受けた。
「よろしく!光、とても綺麗だ!」
そう言って手を差し出すと、ライラの顔は少し明るくなり両手でぎゅっと握り返してきた。その後すぐ「では行ってきます」と言って彼女は部屋を出ていった。この農場の特定の場所に灯りをともして回るのが彼女の仕事らしい。
俺が光魔法に感心していると、この世界に疎い俺にアリスが言いにくそうに教えてくれた。
「光魔法がハズレだって?」
殺傷力がなく戦闘に向かない。生成した光は固定されるからダンジョンでも不便なんだと。なんだよそれ。誰かが光を灯して、明るいねって笑えればそれでいいじゃんか。
「でも、実際に照明という立派な仕事があるじゃないか?」
俺がそう言うと皆は少しうつむく。どうやらこの世界には「暗光石」という、暗くなると自動的に発光する魔法道具があり、しかも安価で手に入るという。俺は昼間にアリスから聞いたあの話を思い出していた。―――使えない能力者は、奴隷同然。
「結局は便利なアストラは優遇されるし、ダストラは肩身が狭い」
(いや、人格とか性格とかさ。色々あるだろ)
でもだ!この農場の人はアストラが使えなかった俺にもちゃんと接してくれた。それは紛れもなく、「アストラ第一主義」な世界で数少ない良心なんだろう。
(この世界、マイナスだけ見ていても仕方ない!俺は俺ができることをするだけだ!)
「でも、この農場は……優しいんすね」
思わず玄太のような話し方で俺はそう口にした。すると、天貴を見ていたアリスの動きがピタッと止まる。
【天貴……笑顔………………青空……】
「あの……アリス?どうした?」
その言葉に、アリスはフッと我に返って笑顔に戻った。
「ふふ…この農場じゃなくて、アルカノア農場よ!救世主さん」
「ちょ!その呼び方、やめてくれって…!」
そんな冗談もわははと笑いとばせる、アルカノア農場の皆さんであった。
*****
「じゃあ、部屋に案内するわ!」
「え、部屋って!?」
急な申し出と嬉しい予感に、俺はキョトンとしてしまう。
「す・み・こ・み!出来るんでしょ!?」
(うわあぁぁぁ!!女神だ!!)
そんなこんなでなんとか乗り切った異世界初日に宿確保。玄太に言ったら安心するだろうな。
思いもよらぬアリスの反応に動揺していると、玄関の方からガヤガヤと騒がしい声が聞こえて来た。
(う……誰か来る!?)
そしておもむろにガチャっとドアは開かれた。
「アリスさん!倉庫の整理終わったわ!」
「まったく、こうも雨続きだと倉庫作業がはかどってしかたねえ!」
ぞろぞろ現れた一同は、俺の目の前で跪く少女に驚いて一斉に俺に視線を向ける。これ、自分から発言するのは厳しい状況だ。誰かがしゃべりだすのを待つしかない。
すると、そんな俺の期待に応えて体格の良いお兄さんが声を上げた。
「はっ!まさかこのお方がアリス嬢の言っていた……」
「救世主!?」
最後は全員で大合唱。すんごい恥ずかしい。それに、一気に心配になってきた。まだアストラとやらを試してもないのに話が加速してる。そんな不安をよそに、まさかの追い討ち。アリスはスッと立ち上がりキラキラした目で、まるで舞台女優のように両手を広げた。
「彼は天貴さん!私が未来視で視た農場を救う者、ここに降臨よ」
「本当に来たのか!すげえ!」
「やりましたね、アリスさん!」
やめてくれ!ハードルが上がる!!玄太が毎日好き放題食った場合のエンゲル係数くらいぐんぐん上がる!ってか俺のバカ!普通、何よりも先にスカイリンクを試すべきだろ!そして瞬時に、ここで「なんて答えるのがベストか」を考える。それによって異世界生活のルートが変わりそうな予感がする。考えた末、俺の出した答えは……。
「天候操作、やっちゃう?」
(わぁぁぁ、何言ってんだよ俺!)
*****
5分後、俺は雨の止まない空の下にいた。今俺の目の前には、見渡す限りの雄大な畑!!雨の中大空を翔る鳥たち!!そして後ろには、期待度MAXで目をキラキラさせたギャラリー。
一応、アリスにだけは初めて使うという事の説明はしておいたけど。
(はぁ……不安だ)
でも、だ。クータンの言葉を思い出す。
「能力とは天の決めた理。すなわち絶対的なルールそのものじゃ。同等に阻害する力でも働かん限り、その実行は絶対なのじゃ」
(その実行は絶対……!その実行は絶対……!)
「くそっ……やるっきゃない。クータン信じるぜ!」
意を決して前脚、もとい両手を空に掲げ、雨雲を蹴散らすかの如く俺は空に叫ぶ!!
「空よ、晴れろぉぉぉぉぉぉ」
ザ―――――――
雨は止む気配はない。だろうな。そんな気はしてた。しかし、まだ手はある!
「雨よ、止めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
(これでもない、次!)
「出でよ、たいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
(だめだ。晴れの呼び方が分かんねえ!)
しかし、まだ思いつく言葉ならある。
「ほんじつかいせぇぇぇ」
「すみわたるあおぞらぁぁぁ」
「せいてんのへきれきぃぃぃ」
いろんな言葉で晴れを呼ぼうとする俺を眺めながら、ギャラリーの中の緑髪の女子がアリスに質問する。
「…アリスちゃん、あの方はどうされたのですか?」
「う、うーん、とね…」
アリスは苦笑いしながらギャラリーに俺から聞いた能力の説明した。
「まだ使ったことがないってぇぇぇ!?」
びっくりするギャラリーだが、事実使ったことはない。そしてついに俺は、晴れを呼ぶ語彙(ボキャブラリー)が尽きて硬直する。そんな期待外れの救世主を尻目に、ぞろぞろと屋敷に戻っていくギャラリーたち。俺は硬直しながら自分がこれからどうなるのか?を考え、思わず不穏な展開が口からこぼれる。
「あ、俺、これ知ってる。罵倒されて、詐欺師!婚約解消!ハイ終わり!」
(しないしない、と手を横に振るアリス)
「もしくは、無能!役立たず!ってパーティから追放されて踏んだり蹴ったり…」
(しないしない、と手を横に振るアリス)
そんな俺の肩にポンと優しく置かれた手。
「風邪ひくから、もう入って!」
そう言ってアリスも屋敷に戻る。薄暗くなり始めた雨空の下、なお硬直し続ける俺。あれ?俺の異世界生活、詰んでる?
*****
ずぶ濡れになった俺は、アリスに促されるまま入浴。現在、湯船で放心状態。
「スカイリンクは使えねえし、死んだはずの仔牛のマボロシまで見るし、俺どうなってんの?」
すると、ギャラリーにいたガッチリ兄さんと青髪の少年が浴室に入ってきた。
ザブ~~ン!!
「よ、救世主!今日はちょっと調子悪かったな?」
「さっきはあんな態度取ってごめんなさい。期待からの落差が大きくって」
「な、なにこの感じ!?すげぇ優しい!日本だったら即炎上だぜ?」
(ひどい偏見)
「悪いね?期待外れなのにお風呂借りちゃって」
優しくされると拗ねたくなる、我ながらのあまのじゃく。
(素直に感謝すりゃいいのに、俺ってマジで面倒くせぇ)
「いいって、いいって!ここじゃ、クワさえ持てりゃ何とかなるっ!」
「そうですよ!僕の能力なんて、ほとんど雑草駆除ですから」
笑う二人。おやっさん農場みたいなノリに「あ、なんかやってけるかも」なんて思ったりしてみる。
*****
風呂から出た男性陣にアリスが冷たいミルクを振る舞ってくれる。ふたりがミルクを取り、最後に残った一杯を俺に差し出す。
「ごめんね!私がハードル上げすぎちゃった!」
「俺が勝手にすぐに使えるもんだと勘違いしてて…いや、すまん」
軽くお辞儀をしてミルクを受け取りコクッと飲むと、濃厚なのにすっきりとした甘さが喉を通過した。
「あ、うまぁ」
ミルクのうまさに感動していると風呂上がりの女性陣が少し遅れてリビングに入ってくる。その中のひとりの少女が俺にトコトコと近づく。
「救世主さんどうだモ?うちのミルク、うまいんだモ?」
牛の恰好をした牛っ娘だ!牛つながりでクータンを彷彿とさせて、クスッと笑いながら俺はうんうんと頷く。
「ヤギのミルクの方が美味いんだベ!救世主は、明日の朝飲むといいベ!」
こっちは羊の恰好をした羊っ娘か。そんな様子を笑顔で見ていたアリスが二人を紹介してくれた。
「彼女たちは牛と羊担当のモーちゃんとメーちゃん。アニマルテイマーの姉妹よ!」
「よろしくだモ」
「よろしくだベ」
そう言って二人同時に手を差し出す。
俺は右手でモーちゃんと、左手でメーちゃんと握手をした。すると後ろで空になったコップをトンッと置く音がして、はっと振り返る。
「モーとメーが懐くなら、やっぱり悪い奴じゃなさそうだな」
ミルクを飲み終えたガッチリ兄さんが俺に近づく。さっきお風呂で最初に声をかけてくれた人だ。
「俺はコンバイン!稲や麦の担当だ!よろしくぅ!」
(コンバイン!?現代の農場のスーパーヒーローじゃん!)
稲や麦の収穫に欠かせないマスト重機。科学が発達してなくてもこんな形で出会えるなんて。
「僕はベータ!よろしく!」
(さっきの雑草の子だ!ベータと言えば雑草除去するマシン!)
「私はシーダ!担当は…」
そう言って話し出す緑髪の女の子の言葉を、俺は恰好つけて遮った。
「種まきとか、得意ですね?」
そう言って手を前に出す。
「え?ええ…そうよ、よろしく」
シーダさんはびっくりしながら俺と握手を交わす。聞きなれた重機たちの登場に、つい嬉しくなってひけらかしてしまった。
「最後はわたし、かな?」
控えめな声とともに一歩前に出た少女。アリスと同じくらいか少し下くらいの歳のその少女は部屋の中央に立ち、ランプのようなものに光を灯す。すると少し薄暗くなっていた部屋全体がパアァっと明るくなった。
「彼女のアストラは光の生成よ!」
「おお、すげえ」
炎の光とは明らかにレベチなその光。先端が虹のようにきらめいて、まるで太陽の光を集めたような、不思議な光だ。
「ライラです、よろしくお願いします」
少し照れくさそうにうつむき加減で挨拶するライラは、なんとなく自身のなさそうな、そんな印象を受けた。
「よろしく!光、とても綺麗だ!」
そう言って手を差し出すと、ライラの顔は少し明るくなり両手でぎゅっと握り返してきた。その後すぐ「では行ってきます」と言って彼女は部屋を出ていった。この農場の特定の場所に灯りをともして回るのが彼女の仕事らしい。
俺が光魔法に感心していると、この世界に疎い俺にアリスが言いにくそうに教えてくれた。
「光魔法がハズレだって?」
殺傷力がなく戦闘に向かない。生成した光は固定されるからダンジョンでも不便なんだと。なんだよそれ。誰かが光を灯して、明るいねって笑えればそれでいいじゃんか。
「でも、実際に照明という立派な仕事があるじゃないか?」
俺がそう言うと皆は少しうつむく。どうやらこの世界には「暗光石」という、暗くなると自動的に発光する魔法道具があり、しかも安価で手に入るという。俺は昼間にアリスから聞いたあの話を思い出していた。―――使えない能力者は、奴隷同然。
「結局は便利なアストラは優遇されるし、ダストラは肩身が狭い」
(いや、人格とか性格とかさ。色々あるだろ)
でもだ!この農場の人はアストラが使えなかった俺にもちゃんと接してくれた。それは紛れもなく、「アストラ第一主義」な世界で数少ない良心なんだろう。
(この世界、マイナスだけ見ていても仕方ない!俺は俺ができることをするだけだ!)
「でも、この農場は……優しいんすね」
思わず玄太のような話し方で俺はそう口にした。すると、天貴を見ていたアリスの動きがピタッと止まる。
【天貴……笑顔………………青空……】
「あの……アリス?どうした?」
その言葉に、アリスはフッと我に返って笑顔に戻った。
「ふふ…この農場じゃなくて、アルカノア農場よ!救世主さん」
「ちょ!その呼び方、やめてくれって…!」
そんな冗談もわははと笑いとばせる、アルカノア農場の皆さんであった。
*****
「じゃあ、部屋に案内するわ!」
「え、部屋って!?」
急な申し出と嬉しい予感に、俺はキョトンとしてしまう。
「す・み・こ・み!出来るんでしょ!?」
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