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第12話 森の中に響く悲鳴
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現在時刻は午前十時二十分。
目覚めるにしてはやや遅い時間だが、昨日は夜遅くまでドロップアイテム目当てに夜行性のお化けコウモリを狩っていたので仕方がない。
しかもバミールのテントという快適空間で寝ていたためスマホのアラーム音になかなか気付けなかったのもうなずける。
俺はテントを小さくたたんで大きな木の根元に置いておく。
一度スマホから取り出したアイテムはもうスマホの中には戻せない。
持ち運べば何度でも使うことは出来るのだが、俺はバッグやリュックなどを持ってはいないので泣く泣く手放すことにしたわけだ。
「誰かが拾って使ってくれるかもしれないし、まあいいか」
バミールのテントはそれなりに便利なアイテムだと思う。
この島にいるほかの学生たちがみつけて、それを気に入ってくれる可能性は高いはずだ。
ぎゅるるる~。
いつもはとっくに朝食を済ませている時間なので腹の虫が鳴り出した。
俺はスマホを取り出して沢山ある食材の中から<鎧イノシシの肉>を選ぶと、足元にそれを出現させる。
そして同じくスマホの中に山ほどストックがある<火打ち石>の文字をタップして、現れ出てきたそれを使い火をおこした。
鎧イノシシの肉は少し硬いのでウェルダンくらいにしっかりと火を通す。
☆ ☆ ☆
「さてと、もうそろそろかな」
十五分後、とがった木の枝に刺した鎧イノシシの肉がいい感じに焼けてきた。
食欲をそそる焼けた肉のにおいが辺りに立ち込める。
ぎゅるるるる~。
「早く食べろ」とでも言わんばかりに腹の虫の音もより一層大きくなる。
俺はそれに応えるかのごとく大きく口を開け鎧イノシシの肉にかぶりつこうとした――まさにその時だった。
『グェグェーッ!!』
甲高い鳴き声がしたかと思うとその直後、
「誰か助けてぇーっ!!」
今度は若い女性の叫び声が森の中に響き渡った。
それを受けて俺は手を止める。
「……なんだ?」
と独りごちながらもまあ、大体の見当はつく。
おおかた森に迷い込んだ女子学生が、ゾンビガラスなどのモンスターに襲われているのだろう。
「悪いけど俺には関係ないからな」
冷たいようだが俺は女性の叫び声を無視することにした。
そう決めたのにはそれなりの理由がある。
俺はこの三ヶ月間【魔物島】をたった一人で生き抜いてきたわけだが、それでもごく稀にほかの学生や教師たちと接触することもあった。
大抵は彼らがモンスターに襲われているところに偶然出くわし、それを助けてやるというものだった。
そのこと自体は全然構わないのだがそのあとが俺にとっては苦痛なのだった。
感謝の意を表した彼らは決まって俺に向かいこう問うてきた。「なんで一人で行動してるんだ? おれたちと一緒に来ないか?」と。
「一人の方が気を遣わなくて済むから楽なんだよ。だから一人でいいよ」と返すと、さらに彼らは「へー、変わってるな」と口をそろえて言う。
どうでもいいだろ、放っておいてくれ。
俺がこの島でどう生きようが俺の勝手だろう。
仮にも命の恩人に自分の考えを押し付けないでもらいたい。
心の中ではそう思うも、もちろん口にはしない。
そんなことを発したら嫌われるのは目に見えているし、きっと俺のいないところで俺の悪口を言うに決まっているからだ。
矛盾しているように聞こえるかもしれないが、俺は人に嫌われたくないからこそ人と距離を取っているのだ。
「……まあ、頑張って逃げてくれよ」
絶対に聞こえもしない声量でもって俺は、死に直面しているであろう見ず知らずの女性を励ます。
それから気を取り直し、再び鎧イノシシの肉にかぶりつこうとしたのだが――
「きゃあぁぁぁーー!!」
耳をつんざくような悲鳴をいやが応にも聞かされる。
「誰か助けてぇーーー!!」
「……」
「お願い誰かーーっ!!」
「…………」
仕方なく、本当に不本意だが仕方なく、
「…………はぁ、やれやれだな。まったく」
俺は食べる寸前だった鎧イノシシの肉をその場に置くと声のした方へと駆け出すのだった。
目覚めるにしてはやや遅い時間だが、昨日は夜遅くまでドロップアイテム目当てに夜行性のお化けコウモリを狩っていたので仕方がない。
しかもバミールのテントという快適空間で寝ていたためスマホのアラーム音になかなか気付けなかったのもうなずける。
俺はテントを小さくたたんで大きな木の根元に置いておく。
一度スマホから取り出したアイテムはもうスマホの中には戻せない。
持ち運べば何度でも使うことは出来るのだが、俺はバッグやリュックなどを持ってはいないので泣く泣く手放すことにしたわけだ。
「誰かが拾って使ってくれるかもしれないし、まあいいか」
バミールのテントはそれなりに便利なアイテムだと思う。
この島にいるほかの学生たちがみつけて、それを気に入ってくれる可能性は高いはずだ。
ぎゅるるる~。
いつもはとっくに朝食を済ませている時間なので腹の虫が鳴り出した。
俺はスマホを取り出して沢山ある食材の中から<鎧イノシシの肉>を選ぶと、足元にそれを出現させる。
そして同じくスマホの中に山ほどストックがある<火打ち石>の文字をタップして、現れ出てきたそれを使い火をおこした。
鎧イノシシの肉は少し硬いのでウェルダンくらいにしっかりと火を通す。
☆ ☆ ☆
「さてと、もうそろそろかな」
十五分後、とがった木の枝に刺した鎧イノシシの肉がいい感じに焼けてきた。
食欲をそそる焼けた肉のにおいが辺りに立ち込める。
ぎゅるるるる~。
「早く食べろ」とでも言わんばかりに腹の虫の音もより一層大きくなる。
俺はそれに応えるかのごとく大きく口を開け鎧イノシシの肉にかぶりつこうとした――まさにその時だった。
『グェグェーッ!!』
甲高い鳴き声がしたかと思うとその直後、
「誰か助けてぇーっ!!」
今度は若い女性の叫び声が森の中に響き渡った。
それを受けて俺は手を止める。
「……なんだ?」
と独りごちながらもまあ、大体の見当はつく。
おおかた森に迷い込んだ女子学生が、ゾンビガラスなどのモンスターに襲われているのだろう。
「悪いけど俺には関係ないからな」
冷たいようだが俺は女性の叫び声を無視することにした。
そう決めたのにはそれなりの理由がある。
俺はこの三ヶ月間【魔物島】をたった一人で生き抜いてきたわけだが、それでもごく稀にほかの学生や教師たちと接触することもあった。
大抵は彼らがモンスターに襲われているところに偶然出くわし、それを助けてやるというものだった。
そのこと自体は全然構わないのだがそのあとが俺にとっては苦痛なのだった。
感謝の意を表した彼らは決まって俺に向かいこう問うてきた。「なんで一人で行動してるんだ? おれたちと一緒に来ないか?」と。
「一人の方が気を遣わなくて済むから楽なんだよ。だから一人でいいよ」と返すと、さらに彼らは「へー、変わってるな」と口をそろえて言う。
どうでもいいだろ、放っておいてくれ。
俺がこの島でどう生きようが俺の勝手だろう。
仮にも命の恩人に自分の考えを押し付けないでもらいたい。
心の中ではそう思うも、もちろん口にはしない。
そんなことを発したら嫌われるのは目に見えているし、きっと俺のいないところで俺の悪口を言うに決まっているからだ。
矛盾しているように聞こえるかもしれないが、俺は人に嫌われたくないからこそ人と距離を取っているのだ。
「……まあ、頑張って逃げてくれよ」
絶対に聞こえもしない声量でもって俺は、死に直面しているであろう見ず知らずの女性を励ます。
それから気を取り直し、再び鎧イノシシの肉にかぶりつこうとしたのだが――
「きゃあぁぁぁーー!!」
耳をつんざくような悲鳴をいやが応にも聞かされる。
「誰か助けてぇーーー!!」
「……」
「お願い誰かーーっ!!」
「…………」
仕方なく、本当に不本意だが仕方なく、
「…………はぁ、やれやれだな。まったく」
俺は食べる寸前だった鎧イノシシの肉をその場に置くと声のした方へと駆け出すのだった。
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