勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

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第11話 薬師マーキュリー

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「おれの名前はマーキュリー、職業は薬師。クォーツ地区で多分唯一の冒険者だ」

マーキュリーと名乗るその女性は自分のことをおれと呼ぶちょっと変わった奴だった。
マーキュリーが言うにはミノケンタウロスを退治しようとしたところ返り討ちに合い深手を負って寝込んでいた時に俺がミノケンタウロスを倒したということだった。

「クォーツ地区はおれの故郷でもあるんだ。だから故郷を守ってくれて本当に感謝してるんだぜ」
「あーそう」

俺の手をしっかり両手で握ると力強く上下に振るマーキュリー。女性にしては力が強い。

「マーキュリーさんはお礼を言うためだけにわざわざクォーツ地区から来たんですか?」
コロンが訊ねる。

「いや、ちょっと違う」
そう言うとマーキュリーは俺に向き直った。
「スタンス、あんたを男と見込んで頼みがある。おれをあんたの弟子にしてくれっ!」

「断る」
「そうかそうか、やっぱりそれでこそおれの見込んだ男だぜ……って断るのかよっ!」
マーキュリーは大袈裟に驚いてみせる。

「なんでなんだっ! おれはあんたみたいに強くなりたいんだっ!」
「マーキュリーさんは薬師ですよね。スタンスさんは魔法使いですから弟子になってもあまり意味がないんじゃないですか?」
「こら、コロン」
「……あっ。ごめんなさい、魔法使いだってこと喋っちゃいました」
反省しているのかコロンは「わたしのバカバカ」と言いながら自分の頭をぽかぽか叩いている。

「確かにおれは薬師だ。そもそも戦いには向かない職業だ。だがそれでも自分の故郷くらい自分の手で守りたいんだ! あんたが魔法使いならちょうどいい、おれに魔法を教えてくれっ!」

魔法は魔法使いにしか使えないわけではない。
潜在的に魔力がある者ならばそれが薬師だろうと魔法を使うことは出来る。

「うーん……」
でも魔法を一切使えない者に一から教えるのはかなり面倒だし結局時間の無駄に終わるかもしれない。
大体俺に何もメリットがないのも難点だ。

……こいつガサツそうだしなぁ。

俺はマーキュリーに目をやった。
手入れなど何もしていないであろうぼさぼさの髪に化粧っけのない顔。
無駄に声が大きく服も手作り感満載だ。

そんなマーキュリーは俺と目が合うとエサをねだる野良犬のような表情で見返してくる。

「やっぱり断る」
「なぜだっ! おれがこんなに頼んでいるのにっ!」
マーキュリーは興奮して俺の胸ぐらをぎゅっと掴んできた。

「おれが女だからかっ! 女は家事でもしていろって兄貴たちみたいなことを言うつもりかっ!」
「く、苦しい……」
「あんたも兄貴たちと一緒でおれをバカにするのかっ!」
「マーキュリーさん落ち着いてくださいっ。スタンスさんが死んじゃいますよっ」
コロンがマーキュリーの腕に飛びついてぷらーんとぶら下がる。

「ぅぐ……」
マーキュリーの腕に力が入り余計に苦しくなった。

「わ、わかった、から……放せっ……」
「本当かっ! おれに魔法を教えてくれるんだなっ、約束したからなっ! 男に二言はないぞっ!」
「し、死ぬ……」
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