勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第16話 難易度星四つ

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目覚めると川岸にある大きな岩の上で寝そべっていた。

「あっ、気が付いたかスタンス」
マーキュリーが顔を近づけてくる。

「あれ? 俺どうしてこんなとこに……?」
「すまないっ。またやっちまった。おれが誤ってあんたを気絶させちまったんだ」
「あー……」
そういえば首を絞められた記憶があるぞ。

「お前いい加減にしろよなっ。そのすぐカッとなる性格なんとかしろ、次やったら破門だからなっ」
「すまん、反省してるよ」
いつになく落ち込んだ表情を見せるマーキュリー。
今回は本当に反省しているようだ。

「……まあもういいから魔法の訓練を続けるぞ」
「あ、ああ」
マーキュリーは控え目な返事をすると川に向かってデコピンのポーズを作ってみせた。

「確かこうだったよな……」
「何してるんだお前?」
「何って、プチフレイムの練習だろ」
「はぁ~……お前の言う通りそんな魔法じゃ強い敵は倒せない。お前がアースクエイクを練習したいなら教えてやるよ」
「えっ! いいのかっ?」
さっきまでの表情が嘘のように顔をほころばせる。

「ああ、うっすらとだが約束した記憶もあるしな」
マーキュリーに首を絞められ意識が遠のく中、アースクエイクの魔法を教えると約束したような気がする。

「ありがとうな、スタンスっ」
がばっと勢いよく抱きついてくるマーキュリー。

「わ、わかったから離れてくれ」
こういうスキンシップは悪い気はしないが恥ずかしい。
ましてマーキュリーは胸がでかいから嫌でも気になってしまう。

手で押しはがすようにしてマーキュリーから距離を取ると俺は咳ばらいを一つしてから地面にしゃがみ込んだ。
そして地面に手をつける。

「こうして、あとは呪文を唱えるだけだ……アースクエイク!」

次の瞬間、地鳴りがして川岸の地面が陥没し落とし穴のような穴がぽっかり開いた。
そして次第に土が覆いかぶさり元に戻っていく。

「魔力の調節次第でもっと広範囲に大きな穴を開けることも出来るぞ。ほらお前もやってみろ」
「お、おう」
呆気にとられていたマーキュリーはハッと我に返ると俺の真似をして地面に手をつけた。

「あとは唱えりゃいいんだな……アースクエイクっ!」

……。

……。

何も起こらない。

「おい、どうなってるんだスタンス。何も起こらないじゃないかっ」
「言っただろ。アースクエイクは星四つの高難易度魔法なんだ、初心者が簡単に使える魔法じゃない。俺でさえ習得するのに丸一日かかったんだからな」
まあそれは俺が五歳の時の話だけど。

「とにかく反復練習、それしかない」
「わかったっ!」
そう言うとマーキュリーは俺に背を向け「アースクエイクっ!」と唱える。
だがもちろん何も起こらない。

その後も俺が岩の上で惰眠をむさぼっている横でマーキュリーは延々「アースクエイクっ!」と唱え続けていた。


☆ ☆ ☆


日が傾きかけてきた頃、

ぎゅるるるる~。

お腹が鳴る。

「そういえば昼ご飯何も食べてないなぁ」

俺は上半身を起こし、
「マーキュリー。お腹すいたんだけど何か買ってきてくれないか? おーい?」
とマーキュリーに声をかけるが反応はない。
ただひたすら「アースクエイクっ!」と唱えているマーキュリーには俺の声など耳に入っていないらしい。


仕方なく俺は岩から飛び降りてマーキュリーとは反対側にある川の前に立った。


「加減が難しいんだよなぁ……」
川の中に手を入れる。
「一割くらいの力でっと……エレキグラブ!」

俺がエレキグラブと発したと同時に川の中にバチバチッと電流が流れた。
すると近くを泳いでいた魚が数匹水面に浮かび上がってくる。

「おっ、一、二、三、四匹か……」

このエレキグラブという魔法は手の周りにだけ電気を発生させるという魔法で割と使い勝手がいいものだ。
だが膨大な魔力を持つ俺は使い方を間違えると大変なことになる。

今のだってもし全力でエレキグラブを使っていたら上流、下流問わず川の中の生物すべてが死滅していただろう。

俺は気絶している魚を二匹捕まえると木の枝を刺し込んだ。
木の枝を集め、たき火を始める。


しばらくすると焼けた魚のにおいにつられてマーキュリーがこっちに気付いた。
さっきまでいくら呼びかけても気付かなかったくせに。

「う、うまそう……」
じゅるっとよだれを垂らしながら物欲しそうに魚を見てくる。

「ほら、一本やるよ」
「えっ! いいのか、サンキュー!」
マーキュリーは俺から奪い取るようにして魚を掴むと頭からかじりついた。

「うん、うまいうまいっ」
骨などお構いなしに食べ進めていき、ものの十秒ほどで平らげてしまった。

「ふ~……」
宙を見上げるマーキュリー。

「疲れたか?」
「ふん、ちょっとだけな」
「諦めてもいいんだぞ」
やはり初心者に難易度星四つのアースクエイクは荷が勝ちすぎる。

しかし、
「まさか。出来るまで何度でもやってやるさ!」
マーキュリーは額に流れる汗を手で拭うときらきらした笑顔で言い放った。
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