勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

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第25話 ゼットからの手紙

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「こ、殺してしまったんですか?」

ゼットが衛兵たちの心配をする。
自分をいじめていた相手だというのに優しい奴だ。

「大丈夫、死んじゃいないよ。手加減したからな。それよりお前はこれから報告しにいかないとな」
「報告……?」
「ああ、先輩の衛兵たちを倒した紅蓮の牙の人間を一人で追い返すことに成功したってな」
「え……?」
「わからない奴だな、察しが悪いぞお前。とにかく今言ったように上に報告するんだ。いいな?」
「……は、はい」

それだけ言うと俺は「ヘブンズドア!」と唱えた。
大きな扉が現れる。

ギイイィィと重い扉を開けると唖然としているゼットを振り返り見る。
「じゃあ俺もう村に帰るから。デボラさんにちゃんと手紙書けよ」
「は、はい」
「じゃあな」
俺はヘブンズドアを通過し無事名もなき村に戻った。


☆ ☆ ☆


それから一週間後、
「スタンスいるかーい!」
デボラさんのはきはきとした大きな声が家の中に響いた。

俺は眠い目をこすりながら二階から下りると玄関に向かう。
そこにはフローラとデボラさんがいた。

「おはようスタンス!」
「おはようございますスタンスさん」
「……おはようございますデボラさん。おはようフローラ」

「スタンス見とくれっ」
デボラさんは一通の手紙を俺によこした。

「なんです?」
「ゼットさんからのお手紙だそうですよ」
フローラが言う。

「ゼットの奴仕事続けることにしたそうだよっ」
「それはよかったですね」

俺は手紙に目を落とす。
手紙にはこう書かれていた。


~母さんへ

久しぶり。最近手紙の返事を出さなくてごめん。
ちょっとこっちで嫌なことがあって気が滅入っていたんだ。
仕事を辞めるなんて書いたのもそのせいだよ。
でももう大丈夫。
母さんがよこしてくれた……名前訊き忘れちゃったんだけど背の高い男の人が全部解決してくれたから。

その人に会ったら言っておいて。先輩たちは異動になったって。
それからありがとうございました! って。

追伸。おれ正式に衛兵になったよ。

ゼットより~


「あんたのおかげだよスタンス、ありがとうね!」
デボラさんにぎゅうっと抱きしめられる。
照れくさいが悪い気はしない。

手紙を返すと、
「今度あの子が帰ってきたらちゃんと紹介するよ。じゃあね」
そう言ってデボラさんは帰っていった。

「全部解決って何をしたんですか? スタンスさん」
「さあ、なんだったかな。忘れた」
「え~、教えてくださいよ」
「お腹すいたから朝ご飯にしようっと」
「ちょっとスタンスさんっ」

この時はまだ知らなかったのだが、時を同じくして本人たちのまったくあずかり知らぬところで盗賊団【紅蓮の牙】の懸賞金が一気に跳ね上がっていたのだった。
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