勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第54話 魔力測定マシン

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「さあ、我こそはという挑戦者いませんか! 魔力を測るだけで金貨十枚ゲットできるチャンスですよ! そこのとんがり帽子をかぶった魔法使いっぽいお姉さんどうですか! やっていきませんか! こんな――」
「はいっ」
「おおーっと挑戦者です……って女の子でした……ねぇお嬢ちゃん、参加料かかるんだけど本当にやるのかな?」
「うん」
アイリーンはぴしっと手を上げている。

俺は「すいません、この子にやらせてあげてください。これ参加料です」と一枚の金貨を差し出した。

「おいおい、あんな小さい子にやらせんのかよ」
「金の無駄だぜ」
「ま、頑張れよ嬢ちゃん!」

マイクを持った男は金貨を受け取ると、
「娘さん想いのお父さんですね~、では早速お嬢ちゃんの魔力を測定しましょう!」
魔力測定マシンを起動させた。

ぐおんぐおんぐおんぐおん……と鳴り出す。

「お嬢ちゃんいいかな~、まずここに手を入れて……」
「うん」
アイリーンは言われた通りに魔力測定マシンに手を差し込んだ。

「それでお嬢ちゃんの今使える最高の魔法を撃ってみてくれるかな」
「いいの? 壊れない?」
「ふふっ大丈夫だよ、なにしろこのマシンは魔力500まで測れる特注品だからね!」

「嬢ちゃん壊すなよー!」
「はっはっは。手加減してやれー」
周りから声が飛ぶ。

次の瞬間空気が変わった。

アイリーンの体の周りを渦巻くように風が吹きすさぶ。
「「「うおっ!?」」」
ギャラリーたちはあまりの強風に目を覆う。

次の瞬間アイリーンは、
「トルネードウインド!」
と唱えた。

直後、魔力測定マシンが揺れる。


そして――
ぐおんぐおんぐおんぐおん……ピピー!

音を立てて魔力測定マシンがとまった。

「っ!?」
横のパネルに表示された数値を見てマイクを持った男が息をのむ。

「おい、いくつだったんだよ!」
「この子の魔力はっ」
「早く言えよっ」

さっきまで笑っていたギャラリーたちも興味津々だ。

「え、えー、こ、このお嬢ちゃんの魔力は274ですっ!」

「「「うおおーっ」」」
歓声が巻き起こる。

「マジかよっ」
「もうちょっとで300じゃねぇか」
「すげぇぞ嬢ちゃん!」

だが当の本人であるアイリーンは首をかしげていた。
そして俺のもとにとことこ戻ってくると一言「加減しすぎたかも」と俺に言った。

「え、お前もしかして手加減したのか?」
「うん。誰かが手加減してやれって言ってたから」
……マジか。
十歳にも満たないようなこいつが手加減して魔力274かよ。
うーん、末恐ろしい奴だ。

そんなことを考えながらアイリーンを見下ろしていると、
「お父さん、娘さんのリベンジをしてみませんか?」
マイクを持った男が俺に言ってきた。

「いや、俺は父親では――」
「いいぞ、やれやれっ」
「娘の仇をうってやれ!」
「逃げるな父ちゃん!」
「頑張れよー」

俺の言葉をかき消してギャラリーたちが勝手に盛り上がっている。

「さあ、皆さんが応援してますよ!」

気付けば周りのギャラリーたちの数はさっきより多くなっていた。

「ここで逃げたら男じゃない! お父さん失格だ! ですよねみなさんっ!」
「「「おおーっ!」」」
マイクを持った男がギャラリーたちをはやし立てる。
アイリーンまでも「やってみて」と俺のズボンのすそを引っ張ってくる始末。

……どうやら逃げ場はないらしい。

「さあ、娘さんのリベンジをしますかっ! それともしっぽを巻いて逃げますかっ!」
マイクを俺の顔に向けてくる男。
あおるのが上手い奴だ。
少しだけだがムカついてきたぞ。

「……やります。やりますけど一つだけいいですか?」
「なんでしょうか!」
「これ壊しても弁償しなくていいですよね?」
「……ぷっ、あっはっはっは! 皆さん聞きましたか? 何を言い出すかと思えば娘さんと同じようなことを言ってますよ!」
周りを囲むギャラリーたちもつられて笑っている。

「それで、まだ答えを聞いてませんけど弁償しなくてもいいんですか?」
「もちろんです! 安心してくださいこれはどうやっても壊れませんからっ!」
俺の胸をぽんぽんと叩いてくる。

よかった。
それを聞けて安心した。

ぐおんぐおんぐおんぐおん……。
マイクを持った男が魔力測定マシンを起動させた。

「では手を中に入れてください! はい、そしてあなたが使える最高の魔法を撃ってください!」

俺は手を入れて、そしてこう唱えた。

「エクスプロージョン!」

その刹那、魔力測定マシンが内部から大爆発を起こした。
粉々に飛び散る魔力測定マシンの破片。
残骸が辺りに散らばる。

「な、な、な、な、なっ……!?」
マイクを持った男は声にならない。
周りのギャラリーたちも開いた口がふさがらずただ唖然としていた。

俺は絶句しているマイクの男から金貨十枚を受け取るとアイリーンを連れ逃げるようにその場を離れたのだった。
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