落ちこぼれ同盟

kouta

文字の大きさ
87 / 176
四章 ミートパイ事件

精霊に愛される子

しおりを挟む




 空が暗くなり始めた頃。
 学校では200人近い生徒が講堂や体育館へ運ばれて治療を受けていた。
 毒にあたらなかった生徒は、倒れている生徒達の看病をしていた。講堂の様子を見に来たイオもすぐにその手伝いにまわった。

「無茶をしたせいか、通常より毒のまわりが早い……いかん! 脱水症状をおこしておる、すぐに解熱剤を持って来なければ!」

騒がしい講堂の中で、イオがその声を拾ったのはたまたまだった。校医マムは焦った様子でその生徒の傍を離れた。
イオは一人になったその生徒が気になって傍に寄った。

「あっ」

そこに横たわっていたのは寮長ディーン。密かにイオの監視をしている人物である。

(この人は……僕を探している人。でも放っておけないよね)

 イオはディーンの隣に駆け寄った。真っ白な肌は熱で赤くなり、大粒の汗が流れていた。
 イオはすぐさまタオルを水で冷やしてしぼり、ディーンの額に乗せた。

「っ……、きみ……は……っ」

その冷たさで意識を取り戻したらしいディーンが、薄目を開けて荒い呼吸と共に掠れた声を出した。

「目が覚めたの? 大丈夫? 何か、僕にして欲しい事ある?」
「み……ず……っ」
「水が飲みたいの? 起きあがれる?」
「……ッ……!」

起きあがろうとしたディーンだったが、僅かに動いただけですぐに顔を歪ませ苦しそうに呻いた。

「無理はしないで……飲ませてあげる」

イオはそう言って自身の口に水を流し込むと、迷いなくディーンの口元に顔を寄せて、口移しで水を飲ませた。

「ン……っ、もっと……」

口を離すとディーンにせがまれ、イオは三度口移しで水を飲ませた。

「ありがとう……」
「もういいの?」
「うん……大丈、夫……」

ディーンがそう言ったが未だに苦しげな表情を見て、イオはそっとサンドマンを召喚した。

「お願い……眠らせてあげて。せめて彼が苦しまない様に」

イオの命令にサンドマンは頷いて眠りの粉を振りまいた。

「待って……」

意識を失う直前、ディーンは気力を振り絞ってイオの袖を掴む。

「君の名前……まだ、聞いて、ない……」
「僕の事、調べたんじゃないの?」
「……気付いてたんだ?」

驚いたように目を見開くディーン。

「勝手に、つけまわしてごめん。知ってるけど、でも、君の口から……ちょくせつ聞きたいんだ……」
「……イオ。それが僕の名前」
「なる、ほど……ね。『精霊の愛し子』……とても、いい名前だね……」

ディーンはイオの名前の由来を知っていた。精霊語の為、人間界でも余程精霊に詳しくないと知らないその言葉を。
 もっとも、彼は精霊のハーフなので、イオは別段驚きはしなかったけれど。

「イオ……か。そうか……君にとっては、僕は、ただの……人、なんだね」

ディーンの言いたいことはイオにはよくわからなかった。ただ、眠りに着く直前の彼の表情はとても穏やかだったから悪い意味ではなかったのだろう。


『いいんですか? イオ様。こいつイオ様を探ってた奴でしょ』

隣で見ていたサンドマンがディーンを指差して訊ねる。

「でも……悪い人には見えないから」
『イオ様ったら人がいいんだから。そんなんじゃ、いつか騙されてえらい目にあいますよ?』
「いいんだ。見て見ぬふりするよりは騙される方がいいから」
『……はぁ。まっ、そんなイオ様がおれっちは大好きだけどね』
「ありがとサンドマン。あのね、他にも苦しんでいる生徒達がいっぱいいるんだ。彼らも眠らせてあげて欲しいんだけど」
『了解! おれっちにまかせて!』

こうしてイオとサンドマンは苦しんでいる生徒達に眠りを提供し続けた。

 しかし、眠りで一時的に苦痛から解放されても根本的な解決にはならない。
 解毒剤が無い限り、彼らの苦しみは続くのだ。その苦しみを断ち切れるのは――。

「お願い、アーサー、トシキ……無事に帰ってきて」

イオは月に向かって、マレー谷に居る二人を想い両手を合わせて祈った。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母である聖女に不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

処理中です...