落ちこぼれ同盟

kouta

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番外編1 幼き日の誓い

幼き日の誓い8

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 一方、ガーネットは騎士に連れられてパーティー会場に戻った。すぐに駆けよってきた母リリーによって、ガーネットの身体は強く抱きしめられた。

「母上、苦しいです」
「この子ったら、心配かけてっ!」
「いててっ! 母上おゆるしくださいっ」

思いっきり耳を引っ張られて、ガーネットは涙目になりながら謝った。

 その後、母に聞いた話によると、祝賀パーティーの招待客の中に、なんと敵国アルべインの刺客が紛れ込んでいたようなのである。
 彼らは王と第一王子モルドレットに襲い掛かったらしいが、その場にいたオーランドとモルドレットの護衛騎士プリ―メルが敵を斬り殺し、王のピンチを救ったらしい。
 殆どの刺客は仕留めたが、一人だけ女の刺客が深手を負いながらも逃亡した。そして、ガーネット達を見つけたという訳だ。

(アーサー様……)

 最初は天使かと思った。とても綺麗な子ども。でも、哀しい笑顔しか出来ない可哀想な子だった。
 てっきり姫だと思っていたら、実は王子様だった。でも、ガーネットの想いはそれで薄れるどころか寧ろ燃え上がった。

(あの子は王子様だった……きっと、あの子はこれからもっともっと辛い目にあうはずだ)

 このままじゃ駄目だと思った。あの子に守られるような男ではいけない。あの子を守れるような男になりたい。

(俺は強くなる――アーサー様をお守りするために)

 ガーネットの心に火がともった。それは、とても小さかったが、彼の髪のように真っ赤に燃える炎のような熱さをもっていた。





 数日後、オーランドは王に呼び出されて再び城に入った。王間に着くとそこには大貴族の殆どが集結していた。
 貴族の中にはあからさまにオーランドに不快感をしめす者、面白くなさそうに見つめる者、憎らしく睨みつけている者等もいた。しかし、元からそういう空気は読まない事にしているオーランドは、堂々とした態度で王の前に傅いた。
 貴族の大半は良い顔をしなかったが、王はオーランドを快く部屋に通した。彼は王族にしてはかなり珍しい、身分で人を差別しない人だった。
 だからこそ、平民出身だったオーランドを将軍に抜擢したり、ただの下働きだったエリザベスという女性を、愛人としてではなく、公妾に任命する事が出来たのだ。このような人事を行った王は、歴代で彼が初めてであった。


 呼び出された用件は、オーランドが察していた通りだった。此度の戦の勝利、また先日の王ならびに王子暗殺の阻止について誉め、その褒美に騎士になる事を認めるというものだった。

「オーランド、私はお前に国王護衛騎士団長の座を与えようと思っている」

国王直属の騎士団の長……つまりこの国で最も偉大な騎士の称号をオーランドに与えると、王は言った。

 当然、その場の全ての貴族はオーランドが引き受けると思っていた。王自身も。

 
 しかし、オーランドの答えは意外なものだった。

「申し訳御座いません国王様。もし、私の我儘を聞いて下さるのなら、このオーランド、他にお仕えしたい方が御座います」

オーランドの予期せぬ返答に場はざわついた。『無礼だ!!』と憤慨する声があちらこちらから聞こえる。しかし、断られた王は気分を害するわけでもなく、かえって面白そうな表情を浮かべながら、周りの喧騒を沈め、オーランドに問う。

「ほぅ……私よりも他にそなたの心を動かした者がおったか」
「はい」
「では、お前は誰に仕えたいと言うのだ。正直に申してみよ」

そう言いつつも、王は答えを確信しているようだった。他の貴族達も、大半は後継者のモルドレットの名が出てくるのだと思っていた。

 しかし、これもまた裏切られた。オーランドがその名前を呟くと、場は一瞬にして凍りついた。さすがの王も、驚いた顔で再度オーランドに訊ねた。

「今……なんと言った?」

オーランドは周囲の視線を浴びながらも、とても晴れやかな笑みを浮かべながら、もう一度その名前を口にした。



「私、オーランドは第三王子アーサー殿下の護衛騎士団長を所望します」



「何故……何故アーサーなのだ? あいつは跡取りではないぞ?」



驚いたのは王だけではない。オーランドの考えが読めず、貴族達もオーランドに不審な目を向けていた。

 しかし、オーランドは臆する事無く答えた。

「何故ってそりゃあ……アーサー様の本当の笑顔をみたいと思ったからです」

「本当の……笑顔?」

「はい。とびっきり嬉しそうな笑顔です」

それを聞いた王は、くくくっと小さく笑いだしたかと思うと、堪え切れなかった様子で、腹を抱えて笑いだした。貴族達はただひたすらあっけにとられていた。オーランドだけが、微笑みを浮かべたまま王の次の言葉を待っていた。

「あー……笑った笑った。そんな事を言ったのは、お前が初めてだオーランド。国王直属の騎士団長の座を蹴ったのも、後にも先にもお前だけだろうな」
「申し訳御座いません」

笑いすぎて涙を浮かべた王は、その滴を指で拭いながらオーランドに告げた。

「あの子を――よろしく頼む」

「はっ! このオーランド、命に代えてもアーサー様をお守り致します!!」


最後に見せた王の顔。それは、我が子を案じる父の顔だった。オーランドは、敬礼を持ってその想いに答えた。



 こうして、英雄オーランドは、第三王子アーサーの護衛騎士団長に任命された。
 アーサーが6歳になったばかりの春の事である。

end.

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