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一章 新入生歓迎会
リコールの行方
しおりを挟む新入生歓迎会は開始早々から、あちこちで戦闘が始まった。
新入生達は、奥まった所に逃げ込む者、身を隠す者、仲間と協力して罠を仕掛ける者、戦いを望む者……それぞれが、きちんと作戦を考えてこの歓迎会に挑んでいるようだ。
「今年の新入生はS組に入った奴がいなくて少々心配してたが、なかなか骨がありそうな奴が多いみたいだな」
「隙あり!」
一人ぼやきながら歩くレイの背後から新一年生が飛び出してきた。ゲスト参加の生徒会役員は鬼役ではあるが、自身もブレスレットをつけており、それを新一年生が奪う事が出来るとこれまた賞品が貰えるのだ。
ここに来るまでレイはこのように何度も襲われた。しかし、いぜんとしてブレスレットはレイの腕にある。
「出直してきな一年。俺様に勝とうなんざ、100年は早い!」
レイは後ろから飛んできた斬撃をあっさりとかわし、剣を構えていた男の鳩尾に軽く蹴りをいれる。
蹲った一年からブレスレットを回収し、レイは再び転校生を探す。
「さてと……どこにいるかな~」
レイは一度会った時の感覚を頼りに転校生を探しだす。何も感知能力に優れているのは転校生だけではないのだ。
「しっかし、歩きずれぇな……空から行きたいところだが目立ちそうだし……」
先程、空中を飛んでいたイーヴルが集中攻撃にあっていたのを思い出して空から辿るのは諦めた。
あの新入生は巧い事避けていたが無事に逃げきれただろうか。
そんな事をつらつらと考えながら先に進む。しかし、少し歩く度に攻撃を仕掛けられるので、あまり速くは動けなかった。
元来戦闘が大好きなレイは、ついつい新入生の相手をしてしまう。おかげで開始一時間でレイの腕には新一年生から奪ったブレスレットでいっぱいになってしまった。
「ジャラジャラうるせぇな。邪魔くせぇ」
レイは舌打ちをしながら、そう遠くない場所に居る転校生の魔力を辿る。光属性の彼の魔力は特殊なので感知能力に優れているレイには解りやすい。
レイは歩きながら少々息があがっていることに気付いた。いつもならこの位の運動、全く苦にならないはずなのだが、やはり連日の徹夜は厳しかったようだ。
「リコール……か」
確かに今年度の生徒会が歴代最低と言われているくらい出来が悪いのは知っている。レイとリヒトを除いたメンバーはS組ではないし、家柄は良いが成績はさほどではない。
投票の上位だったシアンとコウは風紀委員に、この学校で一番の美形ディーンは寮長になってしまい、生徒達の人気が他の勢力に分散されてしまったのも痛かった。
一度、解体して組み立て直したほうがいいと考えるディーン達の気持ちは、わからなくもない。
しかし、だからといってリコールを推奨する気にはなれなかった。この学校でのリコールは経歴に大きく傷がつく。特に副会長と双子の家柄はこの学園でもトップクラスだ。自分はともかく、プライドの高い彼らがリコールされてしまったら立ち直れるとは思えなかった。
だから、本来ならば仕事を放置するなど有り得ないはずだった。よほどの馬鹿でない限り、このままならリコールされるに違いないと気付くはずだ。
にも関わらず、彼らは転校生の傍から離れようとしない。それほどの魅力が転校生にはあるのだろうか……。
確かにこの学校に染まっていない素朴さやあどけない笑顔は新鮮で面白みがある。レイも初めそこに惹かれて興味を持ったのだ。
だが、今の役員達はどうもライトの持つ光属性の虜になっている気がしてならない。ライトに惹かれる者は皆彼の事を『救世主』だと言う。
しかし、レイにはその魔法に価値を見いだせなかった。自分でも少し不思議に思うくらい彼の魔法に興味が持てないのだ。
絶滅したはずの光属性……それが再び地上に舞い降りたのだ。少しくらい心を動かされてもいいはずなのに、他の生徒会のよう彼の事を『救世主』だと崇める気には全く思えないのだった。
歓迎会開始から一時間半が経った頃。レイはようやく転校生に追いついた。だが、その時すでにライトは捕らわれる寸前だった。彼の保護者的存在であるエルマンの手によって。
「おいおい……そりゃいくらなんでも反則じゃねーの?」
「あっ! 出たな変態会長!」
静かに怒っているレイと思いっきり顔を顰めてレイを指差すライト。そんな二人と比べてエルマンの態度はとても冷静だった。
「ルールに違反しているつもりはありません。別にライトとここで会う約束はしていませんし、偶然見つけたんです」
「ライト、この平凡の言っている事は本当か?」
「本当だよ! 偶々会ったんだ!」
「で? ブレスレットを奪われたのか?」
「まだだよ! だって俺賞品が欲しいんだ!」
「ライト……いいからここは大人しく俺に捕まっておけって」
『嫌だ!』と拒絶するライトと、深いため息をつくエルマン。どうやら、まだブレスレッドは奪われておらず、ライトはやる気満々らしい。
「ハッ、そうこなくっちゃなぁ……おい、その平凡。手を出すんじゃねぇぞ。これは男と男の真剣勝負だからな!」
「いえ、友達としても寮監督生としても見逃すわけにはいきません」
「ほぉ? じゃあテメェが先に俺の相手をしてくれんのか? テメェは好みの顔じゃねぇんだがなぁ」
レイはライトの前に立ちふさがるエルマン。実力差はあきらかだろうに無駄な努力をしようとするエルマンを見てレイは右手に魔力を集中させた。
「っ……!」
が、その魔法を発動させることは無かった。ライトの様子が急変したからだ。いきなり震えだしてしゃがみ込んだライトにレイもエルマンも戦闘態勢を解いた。
「ライト?」
「おい、どうした?」
「来る……」
「え?」
「なんか……すげぇ、やべぇのが来る!」
レイは周囲を見渡した。一見、異変は何もないようにみえる。しかし、この時レイも邪悪な気配を感じていた。
そしてその邪気の元を肉眼で捉えた時、レイは思わず我が目を疑った。
「おい……マジかよ」
そして、レイと同じくエルマンが向かってくる魔物の姿を見た時、擦れた声でその魔物の名前を口にした。
「なんで……なんで、マッドベアがこんな所にいるんだ!?」
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