落ちこぼれ同盟

kouta

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二章 休息とそれぞれの出会い

対立のその裏で……

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 一分、三分、五分……。リリアとシアンは無言の睨み合いを続けていた。
 最初に口を開いたのは、シアンだった。

「もう……人の気配は無いよね?」
「うん。皆帰ったみたいだよ」

それに頷いて答えたリリアは、冷たい印象を与える笑みを消して、目尻に涙を浮かべながらシアンに抱きついた。

「ごめんね、シアンちゃんッ! 酷い事ばっかり言って!!」
「ううん! リリア、こっちこそ睨みつけてごめん!」

シアンちゃん、リリアと呼び合い、お互い敬語を捨てて抱き合う二人。
  一方は親衛隊総隊長リリア。もう一方は風紀副委員長シアン。両者は敵対関係にあった……表向きは。

「それにしても、いつ見てもリリアの親衛隊隊長っぷりは萌えるね! 色気たっぷりなチワワの女王様!」
「あはは、シアンちゃんには負けるよぉ~。風紀委員の癒し。凛々しい風紀副委員長様!」

そういって笑いあう二人。実は彼らは同じ趣味を持つ者同士……腐男子仲間なのである。
 シアンとはマジコミで出会い意気投合した。共同で同人誌を作ったりマジコミに共同サークルで参加したりする仲だ。
 しかし、学校ではお互い腐男子であることを隠しているし、立場の問題もあるので、この二人が仲良しだと言う事は誰も知らないのだ。

「ところでリリア、仕事の話になっちゃうけど、転校生襲ったのはリリア達?」
「うん。そーだよ」

リリアは先程とは違って、あっさりと自分の罪を肯定した。

「なんでそんなことをしたの!? 駄目でしょ、メッ!」
「ごめんなさ~い。だって王道だと思ったんだもん。転校生が親衛隊達に強姦されそうになって会長に助けてもらってハッピーエンドっていう展開」
「あれ? リリアって寮長×会長本書いてなかった?」
「シアンは王道大好きじゃん」
「まさか……私のために?」
「そうだよ~。会長にギリギリ見つかりそうなタイミングで襲わせるの大変だったんだから! まぁ失敗しちゃったんだけどね」
「もうっ! リリアの気持ちは嬉しいけど、そういうのは妄想だけでいいのっ! 現実でやったら犯罪なんだから!! 大体、親衛隊の役目はそんな犯罪行為じゃないでしょう?」
「はぁ~い。ちゃんと反省して本来の仕事に戻りまーす。ってなわけで、捕えた下僕返して?」
「初めから捕えてないよ」
「え?」
「あれはカマかけただけ。リリアの大切な恋人に手を出すわけないでしょ」
「キャー! シアンちゃん大好きぃ~でもぉ、ちょっとガーネット×下僕の取り調べネタでハァハァしたよ?」
「あなた……自分の恋人にも容赦無いんですね」

思わず、敬語に戻ってしまったシアンに、リリアは「てへっ」と自分の頭を叩いた。
  元々、リリアは自分の恋人に転校生の強姦(の演技だけれど)を命令するような男である。そんな恋人の言う事をノリノリで応える恋人にも問題があるのだが……。
 ちなみに、リリアと彼が恋人同士だと知っているのは当人達を除けばシアンだけだった。彼は腐男子ではないのだが『リリア命』な男のためマジコミではよく買い子をさせられている。

「その設定だと、ガーネットは鬼畜攻め?」
「そう。『早く白状しなさい。さもないと×××に××××をして×××するぞ』って笑顔で言う感じ?」
「そんなガーネットを攻めだと信じて疑っていないあなたに一つ、ガーネットの秘密を教えてあげましょう……彼、いつもオールバックでしょう? 前髪下ろすと……とっても幼くなります」
「きゃぁああああ!」
「硬派な美青年から、妙な色気がある美少年になっちゃいます」
「いやぁあああああ! 襲われちゃう!」
「と、思って人前で前髪を下ろすのは禁じてます」
「そっかー! シアンちゃんが狼共からガーネットさんを守っていたんだねぇ。よしよし」

リリアが興奮しながらシアンの頭を撫でる。

「ガーネットには私がちゃんと見定めたかっこいい恋人か、可愛い恋人をみつけてみせる!」
「愛だね! シアンちゃん!」

ここにはいないガーネットをネタして盛り上がる腐男子二人。その後、次のマジコミ新刊についての話し合い等をして二人は笑顔で別れた。



 別れる直前、リリアはシアンにこう言った。

「親衛隊は転校生から完全に手を退く事にするよ。転校生には僕とダーリンから直接詫びを言いに行く」
「うん。リリアを信じるよ」
「ありがと……ところで、マッドベアの件は何かわかった?」
「いや。軍と国は撤退したけど、結局事件については何も教えてくれなかった。事故なのか人為的なものなのか……それすら今の時点では不明のままだよ」
「そう……」

リリアの顔が曇る。シアンも不安を隠さずにため息を零す。

「風紀でも独自に調査してみるつもりだけど、どこまで出来るか……」
「何か手伝えることがあったらなんでも言ってね? 僕はシアンちゃんの味方だから」
「ありがとうリリア。それじゃまた」
「うん! 次は新刊持ってくるねっ」
「ふふっ、楽しみにしてる」

 後日。リリアの宣言通り、親衛隊による転校生の制裁は完全に沈黙する。
 これにより、転校生の『救世主ライト』に異を唱える者は事実上、消滅したのである。

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