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馴れ初め編
後日談 幼馴染への報告
しおりを挟む「俺達付き合うことになったから」
ドヤァ! とした顔を隠さずに連が隣に座っている波留斗の肩を抱き寄せながら紬に報告する。
それに対して、気まずそうに目を逸らすのは波留斗である。二人の対照的な顔色を見ながら紬はわざとズズッー!と汚い音を立てながらストローで二人から献上されたフラペチーノを吸い上げた。
そして、無言でクリームと氷だけが残ったカップをテーブルの上にこつんと置くと連を見て口を開く。
「強要、ダメ、ゼッタイ」
「してねぇわ!! 人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ!」
全力で否定する連だが、今日に至るまで散々彼の気色悪い妄想下ネタ話を聞かされていた紬は疑わしげな目を連に向ける。
「本当~? 脅したんじゃないのぉ~?」
「テメェ、いい度胸だなオモテに出ろや!!」
「かかってこいやぁ!」
「二人とも熱くなりすぎだから。ほら、連。そろそろバイトの時間だろ? 行ってらっしゃい」
「今日はサボる」
「ダメ。体調不良でも急用でもないのに、ドタキャンなんてバイト先に迷惑かかるだろ」
「…………チッ、行ってくる」
「ん。気をつけろよー」
いつものように喧嘩しそうになっていた二人を慣れた調子で諫めた波留斗はその後、あっさりと連をバイト先へと送り出した。
波留斗のいう事だけはすんなり聞く連にあきれながらも、紬は部屋に残っている波留斗に声をかけた。
「……本当に合意の上で付き合うことになったの?」
「まぁ、そうだな」
「本当に波留斗はそれでいいの? 正直お前なら相手なんて選び放題だと思うんだよね」
「ンな訳ないだろ」
波留斗は紬のいう事を冗談だと思ったらしく真に受けずに肩を竦めて否定したが、紬は実際波留斗は気を使えてノリが良い為、普通に女子にモテるだろうなと思っている。
「連なんて顔がいいだけのクズじゃん? 性格も口も悪いし、絶対波留斗が苦労すると思うんだけど」
「……まぁ、確かに」
連の事をぼろくそに言う紬だが、波留斗は否定しなかった。それだけの前科が連にはあり、波留斗もそこは付き合いの長い幼馴染なのでわかっているのである。
「もう既に散々泣かされたし」
「……まさかあいつ、ごうk」
「ち、ちがう! ちがう!! 一切そういうこと、されてないから!!」
波留斗は全力で否定したが、彼の顔が赤いので真相はどうだか怪しいところである。紬の予想では最後まではされていなくてもセクハラまがいの行為はされたのではないかと思っている。
「もし連に嫌な事されたら皆に言うんだよ。99%の人間は波留斗の味方だから」
「でも、お前は連の味方をしてくれるんだろ?」
不意に波留斗からそう言われて、紬は否定しなかった。
「俺は二人の味方だよ。だからもしお前らが喧嘩して別れることになったとしても、どっちとも縁を切らないから」
「……ん。ありがと紬」
恐らく、波留斗と連が仲違いをした場合、連の味方になってくれる人間が地球上にいるとしたら、それは紬だけである(連の両親も例外ではない)。そのことを波留斗も知っていて、だからこそこの二人は付き合うことになった事を真っ先に紬に報告したのだろう。
(……こういうところが、可愛いんだよね。こいつら)
「おめでとう波留斗。良かったね、初恋が実って」
「うん…………え、待って。紬、俺が連の事好きだったの知ってたの?」
「当然じゃん。何年の付き合いだと思ってんだよ? お前が誰を見ていたかなんてとっくにお見通しだっつーの」
「マジか……え、もしかして他の人にもバレバレだったりするのかな? うわー恥ずかし……」
(いや、お前はきちんと隠し通せていたよ波留斗。俺が、お前の片思いに気づけたのは俺がお前の事ずっと見ていたから……なんて、これこそ誰にも言わねぇけど)
それは恋愛なんて生ぬるい感情ではない。ましてや連が波留斗に向ける性欲満載の直球な思いでもない。
強いて言うならば血の繋がった家族に向ける、無償の愛のようなものである。
(安心しろよ連。お前がいつか波留斗の手を離したとしたら、そん時はおれが波留斗の手を握ってお前以上に幸せにしてやるから。俺に奪われたくなかったら手放すんじゃねぇぞ)
連と同じ、あるいはそれ以上の重い情を紬から向けられているとは夢にも思っていない波留斗なのであった。
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