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初デート編
⑨
しおりを挟む繭子の部屋は現在物置部屋となっている。とはいえ、大学がそこまで遠い訳じゃないのでしょっちゅう泊りに帰ってきており、ベッドやクローゼットはそのままだったりする。
「はい。服脱いでー」
「え」
「いいからいいから! ほら、恥じらわない!」
「いやいや、まずいって!」
「何がまずいのよ! あんたたちの裸なんて子供の頃から見てるっつーの! 誰がおむつ変えてあげたと思ってんの?」
「それいくつの時の話だよ!? ちょ、まゆねえっ……アッ――――!」
繭子相手では、波留斗に人権はない。鏡の前で容赦なくパンツ一枚の姿にさせられて、惨めに顔を隠してシクシクすることしか出来ない。
「ほら、いつまで恥ずかしがってんのよ。さっさとそれ着て」
繭子が放ってきたのは男性物の白Tシャツだった。
「ボトムはこれでー……バックはこっちかな? ベルトはこれだと可愛すぎるかー? いや、波留斗ならイケるね」
「まゆねえなんでこんなにメンズ持ってんの?」
「メンズの方がゆったりしてて好きなんだよね」
「へぇ……」
「流石にボトムは元カレのだけど」
「……」
波留斗は先程食事の時に出てきた歴代彼氏の愚痴を思い出し、『どの彼氏のだろう?』と思った。実家に服を置いておくぐらいの仲でも別れることもあるのか……とぼんやり思いながら大人しく着せ替え人形になっていた。
「よし! 我ながらかあいく出来た!」
「あの……さすがにレディースの帽子は恥ずかしいんだけど」
真っ白な猫耳帽を被せられた波留斗が抗議するが、繭子は話を聞かずにパシャパシャと波留斗を連写している。
「こんなの撮ってどうするの?」
「大丈夫、SNSに載げるわけじゃないから。それより、明日はこれで行くのよ」
「マジ? 可愛すぎない?」
「全然。波留斗ならイケる。それに、可愛い系男子はウケが良いわよ」
「そうかなぁ……」
「安心しなさい。私が何年お前らを見てきたと思ってんの?……バッチリ連好みにしてあげたわよ」
最後は小声でウインクした繭子に、波留斗は一気に赤面して動揺した。
「はっ!? ななななななんで連だってバレてんの!?!?!?」
「連が他の奴とアンタのデートを許す訳ないでしょ」
「え」
「妨害が入っていない時点で、相手は連しかいないわよ」
(さすがまゆねえ……なんでもお見通しか)
まさか他の家族達にも連の独占欲を知られているとは夢にも思っていない波留斗は、心の中で繭子の鋭さに畏怖するのだった。
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