両片思いの幼馴染

kouta

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読書の秋編

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(こっ、これはすごく面白いぞ……!!)

図書委員の上島からおすすめされたホラー小説は、とても面白かった。特に推理小説作家の書いた上下本は面白すぎて徹夜で読んでしまい、月曜日に借りた本を金曜日までに読破してしまった波留斗は、授業が終わるやいなや、図書室に駆け込んだ。残念なことに受付にいたのは上島ではなく学校の司書だった。彼女に本を返却し、波留斗は本棚の前に立ちながら、ちらちらと図書室の出入り口を見ていた。そして、上島が顔を出すといそいそと彼の元に向かった。

「ああ、宇佐美君こんにちは」
「上島先輩っ、あの本めちゃくちゃ面白かったです!」
「ははっそっか。とても嬉しいけど、図書室の中だからちょっと声の大きさ落としてね」
「あ……す、すみません……」

興奮のあまり、知らず声が大きくなっていたようだ。かぁっと顔を赤くして口を閉ざした波留斗を見て、上島が小さく笑う。

「ねぇ、少し話そうよ。こっちにおいで」

誘われたのはカウンターの中だ。委員会の人間じゃないのにいいのだろうかとちらりと司書を顔を伺ったが、彼女はにっこりと笑って、止めるどころか今まで座っていた場所を波留斗に譲ってくれた。

「私は奥で作業しているから。おしゃべりするのはいいけど、受付の仕事はちゃんとしてね」
「はい。任せてください」

上島はそう答えて、波留斗を受付の椅子に手招きした。波留斗は恐る恐る彼の隣に座る。

 授業が終わって間もないからか、偶々なのか、図書室を訪れる生徒はおらず、暫く図書室の中は司書と波留斗、上島の三人だけだった。それを良い事に波留斗は読んだばかりの小説の感想を熱たっぷりに上島に語った。波留斗の興奮した様子におすすめをした上島本人は相槌を打ちながら嬉しそうに話を聞いてくれて、更に新しい情報をくれる。

「実はこの作品は実写映画化もアニメ化もしているんだよ」
「えっ!? これアニメになっているんですか!? 文章だからこそのミスリードかと……」
「うん。でもちゃんとミステリー要素も残っていたよ。結末はちょっと違うけどね」
「そうなんですね……先輩は推理小説も好きなんですか?」
「大好きだよ。この先生の館シリーズは全部読んだよ」
「えぇ!? ぜ、全部ですか」
「うん。どれも面白かったけど、僕は一番最初の作品が好きかな」
「あ、わかります! 最後の展開が良いですよね」
「そうなんだよ。犯人の動機も結構好きで……」

それからはホラー小説関係なく、色々なジャンルの本の話になった。図書委員をやっているだけあって、上島は読書家らしく、波留斗が読んだことがある本を上島は全部読んだことがあり、話は弾んであっという間に夕方になってしまった。

「そろそろ部屋を閉める時間だね」
「え、あ……もうそんな時間なんだ……」
「ふふっ、あっという間だったね」
「はい……」

名残惜しく思いながら波留斗は席を立つ。そして、先ほど上島からおすすめしてもらった推理小説を何冊か手に取ってカウンターに向かった。

「また一緒に話そうか……と言っても、今日は運が良く誰も図書室に来なかっただけで、いつも話せる訳じゃないけど」
「そうですよね……」
「……ねぇ、次の木曜日の放課後って暇?」
「暇ですけど……」

『もしよかったらさ』上島は、貸し出しの手続きをしながら軽い口調で波留斗を誘う。

「今度の木曜日の放課後、一緒に本屋に行かないか?」
「本屋?」
「ほら駅前に大きな本屋あるだろ。ここの図書室は充実しているけど、それでも置いてない本もあるし」

『本屋に行った後、喫茶店に行けば、話もゆっくり出来るだろ?』と言われて、波留斗はぱぁっと顔を明るくして頷いた。

「はい! 行きます!!」

その一連の会話を聞いていた司書の女性がふはっと小さく吹き出した。

「まるでデートの誘いみたいだね」
「え?」
「……バレましたか」
「ええっ」

目を見開く波留斗の反応をみて、司書だけではなく上島も笑いだした。そこでからかわれたと気づいた波留斗はバツが悪そうに顔を逸らす。

「ごめんごめん。機嫌損ねないで。木曜日楽しみにしてるから」
「……今日、おすすめされた小説が面白かったら行きます」

波留斗の返事を聞いて上島は嬉しそうに微笑んだ。そして、『面白い小説しか紹介していないから』という自信に溢れた言葉を乗せて、波留斗に手続きを終えた本を手渡すのであった。

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