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読書の秋編
⑦
しおりを挟む「遅くなっちゃったね。今日はそろそろ帰ろうか」
上島の一言で、その場で解散となった。帰る家がほぼ誤差がない単位で一緒の為、波留斗と紬が一緒に歩いて帰路に着いた。
「……波留斗にあんな仲が良い先輩がいるなんて知らなかった」
「ああ。誠先輩とは知り合ってまだ一か月も経ってないからな」
「え、その短期間であんなに仲良くなったの?」
「うん。話がめちゃくちゃ合うんだ。来週も一緒に本屋に行く約束したし」
そう答えると紬の眉間に皺が寄っていく。
「どうしたの? 紬」
「……あー……上手く言語化出来ないんだけど、俺あの先輩、苦手かも」
それは意外な返答だった。紬の人間関係は『好き』『嫌い』『どうでもいい』の三択が主であり、『苦手』という表現を聞いたのはこれが初めてのことだった。
「どの辺が?」
「だから、上手く説明出来ねぇんだけど……何を考えているかわかんねぇっていうか。なんか腹黒っぽい? 気がする」
「そうかなぁ? とっても、いい人だよ」
「……まぁ、波留斗にとってはそうかもね」
そう言って紬は話を打ち切った。どうもこれ以上は上島の話をしたくないようだ。
その日も結局、波留斗の両親の帰りが遅くなる連絡が入ったこともあって、紬の家で誘われるがまま夕食を御馳走してもらい、波留斗は自分の部屋に帰ってお風呂に入ると、髪をかわかす手間を惜しんで、雑にタオルで髪を拭き、すぐさま今日買ってきた文庫本を手に取った。
それは、上島からおすすめされたエッセイ本だった。大学教授が書いた本なので固い文面かと思いきや知的なユーモアに溢れていて面白い。
(すごいな誠先輩は……本当に色々な本を知ってるんだ)
波留斗は本を読みながら、今日のことを振り返る。
(油絵が描けるなんてすごい。お願いしたら、見せてもらえるかな……)
多彩な才能を持ち合わせる上島のことに想いを馳せる。同時に紬のことを思いだす。
(そう言えば、紬は誠先輩のことを腹黒っぽいって言ってたな。全然そんなことないと思うんだけど……)
『ああ、でも……』と波留斗はもう一人の己の幼馴染の顔を思い浮かべる。
(連と先輩が仲良くなるヴィジョンは全くみえないな)
そもそも、連の場合は相手が誰であろうと親しくなるのは難易度が高すぎるのだが。
(……しばらく、連には先輩の事黙ってようかな)
幸い、先輩と会っているのは平日の放課後である。平日はほぼバイトを入れている連とはそもそも会うタイミングがない。
…………そのはずであった。
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