神々の間では異世界転移がブームらしいです。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

41話 3対1000

「…………分かりました」

  沈黙の後、ローザさん？ロザリーさん？がつぶやく様に口にしました。
  その言葉を聞いた村長さん達は安堵の表情を浮かべました。
「では、すぐに逃げ……」

「アンデッドを討伐します」

「ろ、ロザリー教皇猊下！」

「やはり私には皆さんを見捨てる事は出来ません。
  私は愛する民を守る事も出来なかった愚かな君主です。
  大量の魔物を相手に、私は敗れました。
  多くの民が魔物に蹂躙され、また、私を逃す為に多くの騎士が命を落としました。
  私はもう、あんな思いはしたくないのです」

「しかし、討伐すると言ってもどうやって……」

「それは……」

  再び部屋に静寂が訪れました。

「「「………………」」」

「村に結界を張り、突破される前にアンデッドのボスを討伐するしかない」

  今まで空気だったレインさんが発言します。
  そろそろわたしも存在感を出して行くべきですね。

「ボスですか？」

「ああ、アンデッドの様に知能の低い魔物を使役するなら近くで指示を出す術師かリッチなどの司令塔となる高位のアンデッドが居るはずだ。
  そいつを討伐すれば後は烏合の衆となる。
  もし、従魔召喚ではなく、死霊術での召喚使役なら術師を倒した時点でアンデッドは消滅する」

「…………分かりました。
  ユウさん、今の私には支払えるお金は有りません。
  代わりに私の持つマジックアイテムを差し上げます。
  どうか戦闘に加わって下さい」

「良いですよ」

  見捨てるのは後味が悪いですからね。

「レイン……いえ、聖騎士レイネット・フォン・ブリッツ。
  今一度、私のために戦ってくれますか？」

  ローザさんの問いかけにレインさんは臣下の礼をとります。

「この命は既に貴女に捧げております。
  如何様にもお使い下さい」

「ありがとう。
  さぁ、哀れな亡者を解放致しましょう」



  村人を村の中心に有る数件の家に集めたローザさんはその家の周りに魔法陣を書き込んで行きます。
  30分程かけて完成した魔法陣を前にマジックバッグから大きな魔宝石がついた錫杖を取り出し、魔法陣を発動させたローザさんは、輝くミスリルの鎧に身を包んだレインさんと白雪姫スノーホワイトと雷鳴の鉈を手にしたわたしに付与魔法エンチェントを掛けます。

「癒しと光を司る者よ 我らに力を 神聖属性付与セイグリットエンチェント」

  わたしとレインさん、ローザさんを聖なる光が包み込みます。

「行きましょうか」

「はい」

  わたし達はアンデッドが来る方角に進み、少し開けた辺りに陣取ります。

「えーと、ロザリー様？」

「ローザで良いですよ。
  もう私は教皇では有りませんからね」

「ローザさんはイザール神聖国の『聖女』だったと言う事ですよね？」

「聖女ですか、今となってはタダの愚かな女ですけどね」

「ローザ……」

「良いのですよレイン、私は疲れてしまったのです。
  本当はこの田舎の村で貴方と2人、静かに暮らして行くつもりだったのです」

「そこに今回のアンデッド騒ぎですか」

「ああ、まったく、厄介な事だ」

  軽く雑談を交わしていると、わたしのマッピングにアンデッドがかかり始めました。
  
「来ましたよ」

「よし、この手の軍団を使役する奴は中心に居るのがセオリーだ。
  アンデッドを倒しながら中心を目指すぞ！」

「はい」

「わかりました」

  こうして、わたし達とアンデッド……3対1000の戦いの火蓋が切られたのです。