神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

79話 精霊の燭台

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  ゴブリンロードは岩から切り出した大剣をまるで木剣の様に自在に振り回す。
  その剣に切れ味などと呼べる様な物など殆ど存在しないが質量から生まれる圧倒的な暴力は人間の身体など鎧ごと真っ二つにしてしまうだろう。

「グゥボォォオ!」

  岩の大剣の横薙ぎを無視して距離を詰める。
  ゴブリンロードの大剣が俺を叩き斬る直前、俺と大剣の間にソフィアが飛び込んでくる。
  ソフィアが構えた獣王の大楯は水の精霊の力を纏い強化されている。
  大剣を受け止めてもビクともしないだろう。
  
「はっ!」

  光の精霊の力の宿った剣は高い防御力を誇るゴブリンロードの皮膚を斬り裂きダメージを与える。

「深淵より出でし闇よ 彷徨い 移ろえ アビススフィア」

  マーリンの周りに3つの漆黒の球体が現れる。

「行け!」

  マーリンが放った漆黒の球体はゴブリンロードの身体を抉って行く。
  
「ギェエ!」

  俺達の猛攻にゴブリンロードは堪らず数歩、後ろに下がる。

「へっ待ってたぜ!」

  ゴブリンロードの背後にはカートが回り込んでいた。
  カートの持つ父の形見の魔法剣は凝縮された炎によって真っ赤になっている。
  
「おぉぉお!」

  灼熱の刃がゴブリンロードの背中が深く焼き斬る。

「グゥギィィイ!」

「精霊剣!」

  俺の剣はゴブリンロードの首を切り落とす事に成功した。

「ふぅ、ふぅ」

「か、勝った!」

「やりましたね!」

「なんとかね」

  俺達が辺りの状況を確認すると、後ろに立っていたエレインさんの近くにはゴブリンナイトやゴブリンジェネラルなどのゴブリンの上位種を始め沢山の魔物の死体が積み上げられていた。

「お見事、だった数日の成果としては十分合格点だ」

「ありがとうございます」

  エレインさんは俺達を軽く労うと洞窟の奥を指差す。

「さぁ、最奥はすぐそこだ」

  エレインさんのさす方に進むと直ぐに行き止まりとなる。
  そして、そこには祭壇の様な物があり、燭台の様なものが置いてある。
  その燭台は淡い光を放っていた。

「これは……」

「精霊の紋章が宿っているわね」

「光っているって事は俺達の中に適合者がいるって事だよな」

「そうだな、マーリンかカートか……エレインさんの可能性もある」

「とにかく触ればわかるさ」

  カートが燭台に手を伸ばすが、その手は燭台に触れる事はなかった。

「あれ?
  どうなってんだこれ?」

  カートの腕はまるで見えない壁に阻まれる様に燭台に触れる事が出来ない。

「何やってんのよ?」

  マーリンも燭台に手を伸ばすがやはりその手は燭台に触れる事は出来ない。

「何かの封印かしら?」

「これは……精霊の力で封印されているな。
  エリオ君、燭台を取ってみてくれ」

「はい」

  俺はエレインさん指示で燭台に手を伸ばす。
  すると何にも阻まれる事なく燭台をつかむことが出来た。
  
「おそらく、精霊の紋章を持つ者だけがその結界を透過出来るのだろう」

「あ、本当です!
  私も弾かれません」

  俺の横でソフィアも結界の中に手を突っ込んで中にあった綺麗な石を掴み結界から取り出して見せた。

  パリン

 「お?」

「あれ?」

  カートとマーリンが声を上げる。
  何故か結界が消えた様だ。

「何で結界が消えたんだ?」

  俺の呟きにエレインさんが答えてくれた。

「先程、ソフィア君が取り出したのはただの石じゃない、多分あの石が結界の核だったんだろう」

「え、ど、どうしましょう!」

「まぁ気にする事はないよ」

  慌て始めたソフィアにエレインさんが直ぐにすかさずフォローをいれた。

「さて、結界はさておき今は紋章だ。
  エリオ、燭台を貸してくれ」

「ああ」

  俺は燭台をカートに手渡した。

「………………何も起きないな」

「じゃあ次は、私」

   マーリンがカートの持つ燭台に触れた瞬間光が溢れる。
  激しい光が治るとマーリンの右腕には精霊の紋章が刻まれていた。

「コレは確か……闇の紋章ね」

  マーリンは自分の腕を見つめ、そこにある紋章が闇の紋章である事を思い出す。
  
「コレで君達の目的は終わりかい?」

「はい、ここでの目的は達成です」

「そうか、では地上に戻るとしよう」

  エレインさんが軽く杖を振ると周囲に大きな光の魔方陣が浮かび上がる。

「「「「え?」」」」

転移ゲート

  


  俺達は夢でも見ているのか……数時間前に俺達が入って行った虚無の洞窟の入り口が視界に入る。

「ま、まさか今のは転移魔法ですか?」

「ん?そうだよ」

  さらっと言ったが転移魔法なんて普通は何人もの熟練の魔法使いか儀式を行い発動させる魔法だ。
  やはり、Sランク冒険者と言う奴は常識の外側の存在だな。

「あ、コレ持って来てしまいました」

  俺がエレインさんとの格の違いを再認識しているとソフィアが呟く様に言った。
  彼女の手には黒い輝きを持つ石が握られている。

「それは?」

  カートは結界の話を聞き流していた様だ。

「あの燭台と一緒に結界の中に入れられていた物です」

「コレは……」

  エレインさんがその石を見つめる

「……コレは闇のオーブだ」

「オーブ?」

  マーリンも知らない物なのか首を傾げている。

「非常に純度の高い魔宝石だ。
  そして、最近は魔族が集めているらしい」

「魔族が魔宝石を?
  何故です?」

「わからない。
  邪神の復活に必要なのか、それとも他に何か使い道が有るのか……それはわからないが、数ヶ月前、東方の島国で魔王によって水のオーブが奪われたそうだ。
  この闇のオーブも狙われるかも知れない」

  エレインさんは真剣な顔で忠告してくる。
  このまま、持っておくのは危険だろう。
  だが、すでに結界の無い洞窟に戻すのもダメだ。
  それなら……

「エレインさん、この闇のオーブを預かって貰えませんか?」

「私が?」

「はい、Sランク冒険者の手元にあるなら城の宝物庫よりも安全だと思います」

「…………わかった。
  闇のオーブは私が守ろう」

  エレインさんは少し迷っていた様だが俺の頼みを聞いてくれた。

「さて、君達は精霊の泉に向かうと言っていたな」

「はい。
  まず、王都に戻ってからロックドック王国を目指します。
  その途中で精霊の泉に寄ります」

「そうか、では私がこの国の王都まで送ってあげよう」

「え、本当ですか⁉︎」

「そんな事が…………」

「なに、転移魔法で直ぐだ。
  先程の洞窟からの脱出の様な座標無しでの転移は現在地から数百メートル以内で24時間の内に立ち寄った場所のみと限定されるが各国の王都には座標を固定してあるから王都にならいつでも転移できるよ。
  まぁ、魔力をかなり使うから数人が限界だけどね」

  つまり、エレインさんは各国の王都を自由に行き来出来るという事だ。
  規格外過ぎるだろう。

「それと、これもあげよう」

  エレインさんから2枚の魔方陣を受け取る。

「転移魔法の魔方陣だ。
  片方の魔方陣を設置してもう片方に乗り、発動させると設置した方に転移する。
  使い捨てだが持って行くと良い」

「あ、ありがとうございます」

  これって下手すれば国宝級の魔方陣では?
  俺は恐ろしい考えを忘れようと頭を振る。  
  視界に入った仲間達も似た様な状態だ。

「じゃあ、また会おう」

  軽くそう言うと、エレインさんの姿はあっさりと掻き消えて、俺達の視界には王都の防壁が写り込むのだった。

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