神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

130話 エンシェントドラゴン

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「よっと!」

  龍族の聖地に到着し、わたしとリゼさんはサーリスさんの背中から飛び降り、それを確認したサーリスさんも人の姿に変身します。
  浮遊島に上陸です。

「バ○ス!」

「は?」

「なに?どうしたのユウちゃん?」

「いえ、何でも有りません……」

  当然ですが何も起こりませんでした。
  訝しむ2人をごまかして、神殿風の建物に向かいます。
  真っ白なアーチを通り抜け、中に入ります。
  神殿風の建物の中は天井が無く、所々に瓦礫が落ちています。
  どうやら遺跡の様です。

「こっちだな」

  遺跡の中をサーリスさんの案内で歩きます。
  サーリスさんはお姉さんの魔力を頼りに進んでいるそうです。
  遺跡となった神殿の中庭に出ると、綺麗な花畑と小川、東屋の様な小さな建物がありました。
  東屋のベンチには髪の長い優しげな女性が座っています。

「姉さん」

「サーリス、久し振りね」

  どうやら彼女がサーリスさんのお姉さんみたいですね。

「そちらの方達は?」

「ああ、人間の冒険者だ。
  姉さんも龍仙境で戦士達の間で広がっている病の話は知っているだろ?」

「ええ、話は聞いているわ」

「その病を彼女達が解決してくれたんだ」

「そうだったの……」

  サーリスさんのお姉さんは立ち上がると丁寧に頭を下げました。

「人間の冒険者さん、私の同胞を救って頂き感謝致します」

「い、いえ、頭を上げて下さい」

  わたしは慌ててそう伝えます。
  
「薬を調合したのは飽くまで取引です。
  ですから気にしないで下さい」

「取引……それはサーリスがお二人をここにお連れした事と何か関係が有るのですか?」

「ああ、実は彼女らはエンシェントドラゴンの血を求めているそうなんだ」

「もう直ぐ、人間と魔族の戦争が始まります。
  魔族を率いるのは、邪神を信奉する魔王です。
  魔王を、そして邪神を倒すと言われている勇者の魂の傷を癒す薬を作るためにはエンシェントドラゴンの血が必要なのです」

「だから俺は2人に取引を持ちかけたんだ。
  龍族の病を治療してくれたらエンシェントドラゴンの血を分けて貰える様に頼むってな。
  頼む、姉さんの血を分けてやってくれないか?」

「…………分かりました。
  故郷の仲間をお救い頂いたお礼です。
  私の血をお譲りしましょう」

  そう言うとサーリスさんのお姉さんは懐から短剣を取り出すと自らの手首に走らせました。
  傷跡から赤い雫が流れ出ます。
  私は慌ててガラス瓶を取り出すとサーリスさんのお姉さんに血を入れて貰います。

「あ、これくらいあれば十分です」

  そう伝えるとサーリスさんのお姉さんは傷口に軽く触れます。
  すると治癒魔法でみるみる内に傷がふさがり、数秒後には元どおり白い手首に戻りました。
  腕に残った血を小川で洗い流したサーリスさんのお姉さんに誘われてベンチに腰を下ろします。
  
「…………」

「…………」

  何と無く気まずいです。

「あー姉さんの方は変わりは無かったか?」

  沈黙に耐えられず、サーリスさんが話し始めました。

「ええ、此処は平和だもの」

「そう……か」

「…………」

「…………」

  うーむ、気まずいです。

「姉さん、人間の国で何が有ったんだ?
  そろそろ、話してくれても良いんじゃないか?」

  おお、サーリスさんが火蓋を切りました。
  しかし、そう言うプライベート話はわたし達の居ない時にして欲しいです。
  隣を伺うとリゼさんも微妙な顔をしています。

「そう……ね、もう大分時間もたったからね」

  そう前置きしたサーリスさんのお姉さんは話し始めました。

「私はもう20年以上前、人間の国で吟遊詩人として旅をしていたの。
  数年間、彼方此方と巡り、話を集めて唄い歩いたわ。
  そんな私に、いつしか共に旅をする友人が出来た。
  一緒に旅をする内に私とその人は恋人になり、私達の間に子供も産まれたわ」

「え⁉︎」

  お姉さんに子供がいた事は知らなかったらしく、サーリスさんが驚きの声を上げます。
  ちなみに異種族間で子供ができた場合、子供は両親のどちらかの種族か、両方の性質を受け継いだハーフとなります。
  わたしの知り合いで言うと、人間のフレイド様と、ホビット族のミッシェル様の子供のアルさんは人間、ユーリア様はハーフホビットです。
  サチ様はまだ小さいのでよく分かりません。
  エルフや獣人なら、小さくても種族の特徴が分かりやすいのですけどね。
  サーリスさんによると、龍族と人間の間に産まれは子供のほとんどは、ドラゴニュートとなるらしいです。
  ドラゴニュートは非常に珍しい少数種族で、見た目は人間に角と翼が生えた感じです。
  そのドラゴニュートも昔、龍族と人間の間に産まれた子供の子孫なのだとか。
  エルフとハイエルフの関係に似ています。
  サーリスさんのお姉さんのお話に戻ります。

「しかし、幸せな日々は長くは続かなかったわ。
  私の夫となったあの人が病に倒れてしまったのよ。
  私は夫の病を治す為に幼い娘を友人夫婦に預けて大陸中を回ったのだけれど、夫の病は悪化して行き、とうとう亡くなってしまったの。
  夫の遺体を弔った私は、娘を預けた友人夫婦の住む村に向かったのだけれど……
  その村はすでに跡形もなくなっていたわ。
  近くの街で調べたら私が戻ってくる半年程前、大規模な盗賊の襲撃を受けて壊滅した事が分かったのよ。  
  夫と娘を失った私はそのまま人間の国を出て龍仙境へと戻ったの」

「…………」

「…………」

  随分と重い話です。  
  何と声をかけるべきか分かりません。
  わたしが悩んでいると、リゼさんがサーリスさんのお姉さんに声を掛けます。

「娘さんを捜さないの?
  村を襲ったのが盗賊なら珍しいドラゴニュートの少女をむざむざ殺したりはしないと思うわ。
  違法奴隷として高く売れるでしょうし」

  リゼさん、流石にデリカシーと言うものが有りませんよ。
  しかし、サーリスさんのお姉さんは、無遠慮なリゼさんの言葉に怒る事もなく答えました。

「それも難しいでしょう。
  娘はドラゴニュートでは無いのです」

「え?
  龍族と人間の間に産まれた子供はドラゴニュートになるのでは無いのですか?」

  わたしの疑問には、サーリスさんが答えてくれました。

「いや、必ずドラゴニュートが産まれる訳では無い。
  ごく稀に龍人が産まれる事も有るんだ」

「龍人?」

「見た目は人間と変わらない。
  しかし、その性質は龍族に近い珍しい存在だ」

「そう、私の娘は龍人だった。
  私には、盗賊に攫われた見た目は人間と変わらない娘を探し出す事は出来なかったわ……」

  綺麗な花が咲く中庭は、重たい空気で満たされています。
  しかし、サーリスさんのお姉さんの話は何処かで聞いた事がある様な気がしますね?
ん?
ん~?
⁉︎

「あの…………ちなみに娘さんのお名前は?」

「名前ですか?
  『リゼッタ』ですよ。
  亡くなった夫が娘につけてくれた名前です」

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