神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

文字の大きさ
339 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

144話 ランスロット、怒りと絶望の日々

しおりを挟む
  キリナと結婚した俺は、静かで平穏な生活を続けていた。
  しかし、そんな暮らしはある日、突然終わりを迎えた。

  その日はいつも通り、ドーラさんと一緒に狩りに出ていた。
  森で大きなイノシシを仕留めた俺達は、いつもより早めに切り上げて村へと戻った。
  ドーラさんの家の庭でイノシシを解体して行く。
  俺は、キリナと結婚してからはドーラさんの家のすぐ裏に新しく小さな家を建て、2人で住んでいた。
  とは言え、ドーラさんの家はすぐ裏だ。
  結局ほぼ毎日、一緒に食事をしていた。
  
「じゃあ俺は肉をみんなに分けてくる。
  ついでに野菜を貰ってくるから、ランスは片付けを頼む」

  そう言い残すとドーラさんは立ち去って行った。
  その後、解体の後片付けを終えた俺は家に戻った。
  家に入るとキリナが食事の用意をしていた。

「あ、お帰り。
  今日は早かったのね?」

「ああ、大きなイノシシを仕留めてな。
  早めに帰って来たんだ」

「そうだったんだ。
  お父さんは?」

「ん?
  まだ、帰って来ていないのか?」

  いつもなら俺が後片付けをしている間に肉と野菜を交換して貰ったドーラさんが少し早く帰って来ている筈なんだが……

「誰かと話し込んでるのかな?」

  しばらく待ってみたがドーラさんは帰って来なかった。

「私ちょっと探して来るね」

「ああ、俺も一緒に行こう」

    俺とキリナが連れだって家を出ると、ドーラさん息を切らせて駆け寄って来た。

「あ、お父さん!
  もう、どこ行ってたの?」

「ランス!
  キリナを連れて逃げろ!」

  ドーラさんは叫びながら玄関の前に立て掛けてあった剣を手にする。

「おいおい、そんなに逃げなくてもいいだろぅ?」

  ドーラさんを追う様に男が1人、ゆっくりと歩いて来た。

「おぉぉお!!!」

  ドーラさんは雄叫びをあげながら男に斬りかかる。
  しかし、男は剣を簡単に躱し、ドーラさんを殴りつける。
  
「ぐぁぁあ!」

「お父さん!」

「キリナ……逃げろ!」

  男が1歩、1歩と近づいて来る。
  その男は額に小さな角を持ち、浅黒い肌をしていた。

「な、なんでこんな所に魔族が⁉︎」

「さぁなぁ?
  俺だってこんな面倒な仕事はしたくねぇんだよぉ。
  だから、オメェらさっさと死ねよぉ」

  男はニヤニヤとこちらを見つめてくる。

「ぐっ!あぁぁあ!!!」

「お父さん!」

「ドーラさん!」

  ドーラさんが急に苦しみだす。
  そして、俺とキリナが見ている前でドーラさんの身体は石になってしまった。

「お、お父さん……」

「な、何が起きたんだ⁉︎」

「くっはっはっは、安心しなお嬢ちゃん、お前も直ぐに殺してやるからよぉ」

 あまりの出来事な唖然としていた俺は、男の言葉で正気を取り戻す。
  
「逃げろ、キリナ!」

  ドーラさんの剣を拾い上げた俺は魔族に斬りかかった。
  魔族は俺の剣を軽々と躱す。

「ランス!」

「逃げろ!
  俺が時間を稼ぐ!」

「はっはっは、女を庇って俺に挑むってんのかぁ?
  その割には弱いなぁ、そんな剣じゃあ女は守れないぞぉ?」

「ごはっ!」

  魔族の拳を受けて吹き飛ばされる。
  
「おいおい、その程度か?
  ほら立てよ、立たないなら女を殺すぞぉ?」

「うっぐ!」

  俺は痛みをこらえて立ち上がった。
  キリナはまだ戸惑っている。
  
「キリナ、逃げてくれ。
  頼む!」

「ランス……っ!」

  キリナは涙を流しながら踵を返した。
  後はキリナが逃げる時間をどれだけ稼げるかだ。





「ごふっ!

  口から大量の血を吐き出した。
  戦い始めて……いや、奴が俺で遊び始めてどれくらいの時間が経ったのだろうか?
  何時間も経った気もするが、実際は僅か数分程度なのだろう。
  俺の根性無しな膝は体を支える事を放棄して地面へと投げ捨てる。

「はぁ、はぁ、はぁ、ごほっ」

「くっはっはっは!
  情けねぇ奴だなぁ。
  もう終わりか?」

「コルダール様、この娘で最後です」

  別の魔族が現れて魔族の男に話しかける。
  
「おお、ナイスだグラァ!
  その女を寄越せ」

  コルダールと呼ばれた魔族はグラァと言う魔族が捕まえて来た人間を俺の前に突き飛ばした。

「あぐっ……」

「キリナ!」

「ランス!」

  キリナは逃げる途中にあのグラァと言う魔族に捕まってしまった様だ。

「おい、小僧。
  よく見ておけ」

  そう言うとコルダールはキリナへと視線を送った。

「あぁぁぁぁあ!!」

「キリナ!」

  俺は身体が次々と血が流れ出すのにも構わずキリナの所まで這って行き、彼女を抱きおこした。

「うっ、ぐぅ、ら、ランス……」

「キリナ!キリナ!」

「に……げ……」

「キリナァァア!!!」

  キリナはドーラさんと同じ様に石になってしまった。

「くっはっはっは!
  こいつは傑作だなぁ。
  そうだろぉ?
  お前が情けないから女は死んだ。
  お前が弱いから女は死んだ。
  そうだろぉ?
  なぁ、教えてくれよぉ?
  今、どんな気持ちなんだぁ?」

「あぁぁあ!!!」

  俺は折れた足で無理やり立ち上がり、血塗れの拳を振るった。
  しかし、拳はコルダールに届く事はなく、コルダールは俺を蹴り飛ばす。

「ごほっ」

「はっはっは!
  いいねぇ、気に入ったぞ小僧。
  いい事を教えてやる。
  この村の連中は生きてはいないが、まだ死んでもねぇ」

「 ⁉︎ 」

「この俺を殺せば石化の呪いは解けて元に戻せる」

  コルダールはドーラさんの剣を拾い上げるとしばらく剣を見つめる。

「だか、お前の様な雑魚がこの俺を、魔王コルダールを殺すなんて不可能だ。
  そこで……」

  コルダールはドーラさんの件を地面に突き立てた。

「この剣に呪いを掛けた。
  その剣で人を殺せば、殺すほど強くなれる。
  そうだな……500人くらい殺せば俺ともいい勝負が出来ると思うぜ。
  せいぜい、同族を殺して強くなるんだな」

「コルダール様、そろそろ……」

「ちっ、分かってるよぉ。
  たくっ、勇者の始末くらい雑魚どもでやってろよ」

  苛立った声で文句を言いながらコルダールはグラァを連れて村から出て行った。
  
「うっ、ぐっ」

  俺は全身から血を流しながらキリナの所まで這って行った。

「キリナ…………」

  呼びかけるが、石になったキリナは何も答えない。

「キリナ……俺は……」

  俺は分かっていた。
  誰かを犠牲にして彼女を救っても彼女はそれを喜ばないと言う事を。

「でも……俺は……」

  俺はキリナをそっと寝かせるとコルダールが地面に突き刺した剣にまで這って行き…………魔王によって呪われた剣に手を伸ばすのだった。
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...