神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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もう少しだけブームは続きそうです。

最終話 夜空の星々

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「ウオッフ!!」

  雄叫びを上げて両腕を振り下ろすスティンガーエイプから1歩だけ距離を取り攻撃を避ける。
  その動作から流れる様に身体を回転させて、遠心力の乗った尾をスティンガーエイプの身体に叩きつけた。
  硬く鋭い体毛で覆われたスティンガーエイプだったが強力な一撃を放った尾には傷1つついてはいない。
  リザードマンとして、強靭な鱗を生まれ持っていると言ってもAランクの魔物であるスティンガーエイプの体毛を弾く程ではない。
  ならば、何故彼女の尾は無事だったのか、それは彼女の尾を包む鎧の性能がずば抜けて高いからである。
  彼女の祖父が最後に戦ったSランクの魔物、マンティコアの尾から作った尾鎧は、驚く程軽く、アダマンタイトに匹敵する程硬い。

「ウグゥ……」

  フラつきながら立ち上がったスティンガーエイプにリザードマンの女性が声を掛ける。

「あんたに恨みはない。
  けど、あんたが此処にいるのは迷惑なのよ」

  リザードマンの女性はチラリと背後に視線をやる。
  そこには、魔族の男達が鍬や鎌などを手に震えている。
  魔境の中にある小さな魔族の農村で、暴れていたスティンガーエイプをたまたま近くを通りかかった冒険者が親切心から討伐を申し出たのだ。

「獅子戸流、疾風」

  一瞬、リザードマンの姿が掻き消えた様にぶれる。
  すると、一拍置いてからスティンガーエイプの首が落ちた。

「「「わぁぁあ!!」」」
  
  喜びの声を上げる村人達にリザードマンの冒険者は笑みを浮かべる。

ガサッ!

「 ⁉︎ 」

  草を踏む事に敏感に反応したリザードマンは村人達を庇う様に剣を構える。
  その姿を見て、村人達も慌てて身構えた。
  しかし、こちらに向かって来ている者の正体を見てリザードマンは構えを解く。

「やぁ、待たせたねモミジさん」

「レス、そっちはどうだった?」

リザードマンの冒険者モミジは同じパーティに属する魔族の男レスに尋ねた。

「森で1匹、スティンガーエイプが居たよ。
  多分つがいだったんじゃないかな?  
  一応、始末して置いたけど」

「そうか、可哀想だが放置すると村人に被害が出るかも知れないしな」

「あ、あの……この度は大変お世話になりました。
  しかし……その……我々の村は貧しく……ろくにお礼も……」

「ああ、気にする事はない。
  たまたま近くに用が有っただけだからな。
  高ランク冒険者として当然の事だ」

  モミジは村長であろう男に軽く告げる。
  
「このスティンガーエイプは置いて行くから、素材を売って次に何かあった時に冒険者を雇ったりする資金にでもすると良い」

「そ、そこまでして頂いて宜しいのですか?」

「ああ、レスが倒したスティンガーエイプだけで十分な収入だ」

  そう言って素材の権利を譲ったモミジとレスは村人達に大変感謝された。

「では僕達はこれで」

「しかし、もう直ぐ暗くなりますよ?
  今晩は村に泊まって行かれた方が……」

「いや、少々寄り道をしてしまったからな。
  私達ならば心配は要らない」

  そう言うとモミジは懐から取り出した角笛を吹いた。
  すると、目の前に大きな魔方陣が現れて蝙蝠の羽を持つ巨大な蛇、幻獣であるケツァルコアトルが現れる。
  モミジがパーティメンバーでもある友人から借りている幻獣である。
  ケツァルコアトルに跨った2人は手を振る村人達に答えながら空へと舞い上がって行った。





  まるで貴族が住む様な大きな屋敷の廊下をモミジとレスは歩く。
  この屋敷はモミジとレスが所属する冒険者パーティの拠点だ。

「お帰りなさいませ、モミジ様、ネームレス様」

「ただいま、ハル」

「ただいま戻りました」

  2人に声をかけたのはメイド服を着た何処か儚げな女性だった。
  
「ハルにお土産があるんだ、ほら」

  モミジはマジックバッグから取り出した髪飾りをハルに付けてやる。

「似合うじゃないか」

「ありがとうございます、モミジ様」
  
  彼女のお陰でこの屋敷はいつも心地よい状態が保たれているのだ。
  パーティメンバーは偶にこうしてお土産を持ち帰る。

「2人とも帰って来てるのかな?」

「はい、お二人とも既に戻られております」

  ハルにお礼を言って居間に向かう。

ガチャ

「ん、ああ、モミジとレスか。
  お帰り」

  ソファに座っていた黒髪に黒い瞳の男が2人に気付く。

「ああ、コースケ。
  そっちはどうだったんだい?」

「問題なく手に入れたぞ」

  孝介はいくつかの木の実を取り出してテーブルに置く。

「流石だな」

モミジとレスもそれぞれ木の実や鉱石などをテーブルに並べた。

ガチャ

「おや、モミジ、レス、戻っていたのですね」

  新たに部屋に入って来たのはモミジ達のパーティのリーダーである少女だ。
  孝介と同じ黒髪、黒眼であり、薄いキャラメル色の肌と額に小さな角を持つ半魔族の少女ユリも懐から自分が手に入れた素材を取り出す。

「ユリ、これで優香への土産は十分じゃ無いか?」

「そうですね、これだけあればお母さんも喜んでくれるでしょう」

  数年振りに会いに行く母へのお土産を集めていたのだ。
  父への土産が無いが、何時もの事なのでユリも孝介も特に気にした様子はなかった。
  旅支度を整えたユリ達は屋敷から出る。
  
「では……」

  ユリはマジックバッグから馬車を取り出す。
  見るからに普通とは違う力を感じる馬車だ。
  ダンジョンの奥で手に入れた物で、この馬車自体がマジックアイテムである。
  そして、この馬車を引くのは…………

「契約により顕現せよ  天翔ける白馬よ  幻獣召喚『天馬ペガサス』」

  孝介の幻獣召喚魔法によって呼び出された異界の存在、ペガサスである。
  
「向こうに帰るのは久しぶりだね」

「はぁ、また優香とザジに会うのか……」

「良い加減諦めて下さい、コースケ。
  レスさんは向こうについて何か思い出したりはしませんか?」

「う~ん、どうだろう?
  でも、ミルミット王国と言う名前には何だか聞き覚えがある気がするんだよね?」

  レスはかつては額の角が有ったであろう傷跡をなでる。

「じゃあ、もしかしたら何か記憶を取り戻す切っ掛けが掴めるかも知れませんね」

  口々に言いながら馬車に乗り込んで行く。
  
「じゃあ行くぞ?」

  御者席に座った孝介はペガサスの手綱を握る。

「皆様、行ってらっしゃいませ」

  ぺこりと頭を下げるハルに手を振りペガサスは走らせる。
  すると直ぐに足場が消える。
  魔境の空高くに存在する小さな浮遊する島に立てられた屋敷から飛び出した馬車は、牽引するペガサスに引かれ空を進む。
  Sランクパーティ《夜空の星々》を乗せて……

ー完ー



【おまけ:人物紹介】


○ハル
  古代魔法文明の時代に立てられた、とある科学者の隠れ家であった屋敷に住み着いた屋敷精霊シルキー
  主人が外出中屋敷を守る。
  

○モミジ
  Aランク冒険者、獅子戸流剣術皆伝。
『嵐刃のモミジ』と呼ばれる女。
  リュウガ王国出身。
  偉大な剣士であった祖父を尊敬している。
  300年前、勇者と共に戦った女傑アマンダの血を引いている。
  グラマー。


○ネームレス(レス)
  Aランク冒険者、名無しの男ネームレス
『双刃のレス』と呼ばれる片角を失ったの魔族の男。
  パーティでは斥候役を担当。
  大怪我をして死に掛けていた所を山奥の村に住む人々に助けられるが、記憶を失い自らの名前すら思い出せない。
  記憶を失ったまま十年以上村で暮らしていたが3年程前に村を訪れたユリ達と出会い冒険者になった。
  自らの記憶を探している。


○高橋 孝介
  Aランク冒険者。
『幻魔のコースケ』と呼ばれる異世界から来た男。
  神から貰ったチートで無双しちゃった幻獣使い。
  幼馴染である優香の娘、ユリと色恋沙汰に発展してしまった事に何となく罪悪感がある。


○ユリ
  Sランク冒険者、Sランクパーティ《夜空の星々》のリーダー。
『星空のユリ』と呼ばれる半魔族の少女。
  少女とは言えない年齢だが少女としか言えない容姿。
  親譲りのフットワークの軽さで世界を巡り、数々の功績を挙げた。
  戦斧や剣、刀を始め、槍や鞭、、棍、戦輪、鎌などの数多の武器を使いこなす。
  最近は魔境の上空で見つけた空飛ぶ小島の屋敷を拠点に活動している。
  
完ー
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みんなの感想(890件)

斑鳩斑/イカルガ・マダラ

誤字?
第2部 91話
【使命】依頼
【指名】では?

2022.06.17 はぐれメタボ

ご指摘ありがとうございます。
修正しました。
m(_ _)m

解除
八神 風
2020.09.29 八神 風

神々の間でメタボがブームらしいです❗️


ユウ
「暑苦しい❗️」


解除
リアナ
2020.05.03 リアナ

完結おめでとうございます。
ユウいつの間に結婚?子供?話の転回にビックリ!!
戦争が終わってからの話が楽しみだったのですが…
そこのところ読みたかったです!


解除

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