不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

森の中の襲撃者

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「ひひひっ……初めまして北聖将、俺の名前はブブと申します。以後、お見知りおきを……」
「お前の名前はどうでもいい、用件はなんだ?」
「おっと、これは手厳しい……ではレイビ様から頂いた手紙を届けに参りました」
「……手紙だと?」


ハシラの記憶の限りではレイビはわざわざ手紙を書いて寄越すような男ではなく、伝言があるとしても部下に口頭で伝えて他の者に知らせるはずだが、ブブと名乗る男はすぐに説明を行う。


「正確には私が聞き受けた話を私が紙に書いて将軍に渡すというわけです。なにしろ今回は説明が長くて覚えきるのに時間が掛かりそうでしたからね、忘れてしまいそうでしたので手紙にして書いてきました」
「そういう事か……手紙を読め」
「はい!!おい、それを寄越せっ!!」
「ひひっ……どうぞ」


配下の兵士がブブから手紙を奪い取るように回収すると、その手紙の文字の汚さに気付き、読み取れない事を告げる。


「も、申し訳ありません……この者の字が汚過ぎて内容が読み取るのが……」
「仕方あるまい、お前自分の文字なら読めるのだろう?この場で読め」
「いいんですかい?では一言一句欠かさず読ませてもらいますよ……事前に言っておきますが、これから俺が話す事はレイビ様の御言葉だと思ってください」
「いいから早く読め」


勿体ぶった言い方をするブブに対して配下達が苛立ちを抱く中、ハシラは早急に手紙を読むように命じると、ブブは待っていましたとばかりに口を開く。


「北聖将、貴様が軍を動かしたという事は遂にカレハ様がギンタロウを六聖将の座から降ろしたという事だな?ならば貴様は領地へ引き返し、討伐の任を俺に引き渡せ。そうすればお前は兵士を失わず、俺はギンタロウを討つ事が出来る。文句はあるまい……まあ、だいたいはこんな内容です。ひひっ!!」
「相変わらずだな……確かに俺達はカレハ様の命令を受けてこの地にまで訪れた。だが、貴様が出る幕ではない、下がっていろと伝えておけ。もしもカレハ様の許可なく、勝手に兵を動かした場合はこの俺が貴様を討つと伝えろ!!」


説明を聞き終えたハシラはレイビに忠告するようにブブに伝えると、ブブは薄気味悪い笑みを浮かべて頷き、ブタンを走らせて森の中へ消えていく。


「ひひ、分かりました……そのお言葉、しっかりとお伝えしましょう」
「さっさと消えろ!!次に俺達の前に姿を現したら魔物と間違えて殺してしまうかもしれんからな!!」
「これは怖い、では失礼させていただきます……ふひっ!!」


気味の悪い笑い声を上げながらブブは消え去ると、ハシラと他の兵士達は本当に彼が南聖将の元に戻ったのか疑問を抱く。


「将軍、もう間もなく東壁街です」
「ああ、だが今日の所はここで陣を張る。周囲の警戒を怠らず、陣を築け!!魔物除けの香草も焚け!!」
「はっ!!」


東壁街が見える距離まで辿り着いたが、兵士達もここまでの行軍で疲労が蓄積されているため、今日の所は兵士を休ませるためにハシラは陣の設営を命じる。明日以降から本格的に東壁街を攻め込むためにハシラは森の中でも休めるように魔物除けとして扱われている「香樹」と呼ばれる樹木の茶葉を使用させた。

この香樹は人間が扱う「腐敗石」と同様に魔物だけが嫌悪する特殊な香りを生み出すが、元々は茶葉として森人族に愛用され、腐敗石と異なって香樹の茶葉から生み出されたお茶は非常に味が強いが疲労回復効果を促すお茶として兵士には人気がある。ハシラの好物の茶葉でもあるため、部下が入れたお茶を有難く彼も受け取る。


「将軍もどうぞ、身体を休ませてください」
「ああ、ありがとう」


ハシラは兵士から渡されたお茶を受け取り、その強烈な刺激臭に鼻が少し痺れるが、慣れれば問題はなく味わえた。一口飲むだけで身体が芯まで温まると、やっと一息付けた。


「将軍、お疲れの様ですね。無理もありません、我々もここまで三日間は一睡もしていませんので……」
「そうだな、だがあと少しの辛抱だ。まずは使者を立ててギンタロウの元へ送り込む。これが最後勧告となるだろうが……」
「しょ、将軍!!」


側近の兵士と身体を休ませていると、後列の部隊に配置させていた兵士が慌てた様子で彼の元に駆け込む。その兵士は何が起きたのか背中に大きな傷を負い、顔色も悪かった。


「どうした!?一体何が起きた!?」
「て、敵襲です……敵の数は十数名、後方で運んでいた物資が狙いの様です!!」
「何だと!?ギンタロウめ、もう仕掛けて来たか……!!」


兵士の言葉を聞いてハシラは立ち上がると、まさかこちらが仕掛ける前にギンタロウが仕掛けてきた事に腹立ち、すぐに兵士に撃退するように命じようとした時に報告に訪れた兵士に異変が訪れる。


「お前……顔色が悪いぞ?どうした?」
「や、奴等……武器に、毒を……」
「おい!?」


伝令兵の顔色が青に染まると、そのまま泡を吹いて地面に倒れ込む。ハシラが駆け寄った時には既に事切れ、傷口に視線を向けると斬られた箇所が紫色に変色している事から遅効性の毒が仕掛けられている事が判明した。


「毒だと……ギンタロウ、まさか自分が生き残るためにそこまで使うか!?」
「将軍!!あ、あれを見てください!!煙が……!!」


ハシラは兵士の言葉に顔を見上げると、後列の部隊が存在する方角から黒煙が舞い上がっている事に気付き、即座に状況を理解した。敵の狙いは自分達の軍の物資である事を――




――時刻は10分ほど前に遡り、後列に配属されている物資の移送部隊の元に全身を黒装束で覆い隠した集団が出現した。敵はどのような方法を使用したのか感知系のスキルを所持している兵士達の探知を掻い潜り、1万の兵士の兵糧、武器、薬剤を搭載した荷車に向けて火矢を放つ。


「な、て、敵襲!!敵襲だぁっ!!」
「こいつら何処から現れたんだ!?」
「慌てるな!!相手はせいぜい10人だ!!冷静に対処しろ!!」


ハシラが率いる部隊には弓の名手が数多く、相手が火矢を射抜く前に兵士達がその何十倍もの数の矢を射抜く。樹木の枝の上で待機していた襲撃者たちは次々と射抜かれ、悲鳴をあげて地面に墜落していく。


「あぐっ!?」
「ぐあっ!?」
「きゃああっ!?」


襲撃者が次々と倒れていく中、最後に残った一人だけが剣を引き抜くと迫りくる矢を全て振り払い、地上へと着地した。兵士達は即座に取り囲もうとしたが、その襲撃者は剣を投げ捨てると黒装束を突如として脱ぎだし、そして全身に巻き付けた「火属性の魔石」を見せつけて叫び声を上げた。


「ギンタロウ将軍、万歳!!」
「なっ!?」
「いかん、こいつ自爆する気だ!!」
「止めろぉおおっ!!」


男は物資を搭載した荷車に向けて駆け出すと、兵士達は矢を放って止めようとしたが、男は全身に矢の雨を浴びながらも掌を胸元に構えて火属性の魔石を発動させて自らの肉体を犠牲にして爆発を引き起こす。


「ああああああっ――!!」
「やばい、逃げ――!?」


次の瞬間、多数の火属性の魔石が誘爆した事によって爆炎が周囲に拡散され、この爆発によって兵士は数百名、更に運び込んだ物資の荷車の半分以上が焼き尽くされてしまう――




――魔法によって発生した現象は長続きはせず、幸いと言うべきか森に火炎が燃え広がるという結果は免れたが部隊の被害は大きかった。数十名の兵士が死亡し、負傷者も多数続出。しかも彼等を治療しようにも運び込んできた物資が大損害を受けたため、ハシラはギンタロウとの戦闘前に大きな痛手を負う。
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