不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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S級冒険者編

帝国の英雄と呼ばれた初級魔術師

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「おおっ、レナ殿も帝国の英雄に興味を抱いてくれたでござるか?では拙者が彼の事を説明するでござる」
「よろしい、説明したまえ」
「何故、急に尊大な態度に……まあ、拙者が知る限りの話だと、ともかく凄い人物だったそうでござる」



――数百年前、まだ帝国が平和だった頃に「勇者召喚」と呼ばれる儀式が行われたという。この勇者召喚は異世界から「勇者」の素質を持つ人間を呼び出すという召喚魔法なのだが、呼び出された4人の人物の中に一人だけ勇者の証を持たない存在が居た。



これまでに召喚された勇者は必ずステータスに勇者の証が記されていたのだが、たった一人だけ勇者の証を持たない少年が居た。その名前は「ルノ」と呼ばれ、後に帝国の英雄と呼ばれる存在として諸国から恐れられ、同時に尊敬もされる存在へと成長する。


「ん?ルノ……?」
「どうしたのでござる?」
「いや、ちょっと従弟と同じ名前だったから気になって……」
「……レナ殿は従弟がいたのでござるか?」
「なんでもない、気にしないで」


こちらの世界ではレナの従弟は存在せず、ハンゾウは不思議そうな表情を浮かべるが説明を促されて話を戻す。その一方でレナの方は過去に何度か「ルノ」の名前を耳にしており、帝国の英雄と呼ばれる人物がレナの知る従弟と同じ名前である事が気にかかる。


(まさか同一人物とは思えないけど……でも、ルノ君はちょっと不思議な所があったよな。前に交通事故が起きた時も本人は怪我一つ負ってなかったし、逆に車の方がぶっ壊れた事もあったような……)


レナの知る地球の「ルノ」という人物は転生前のレナと同い年ぐらいであり、少し変わった少年だった。具体的には高校入学した辺りから急に奇妙な「腕輪」を装着するようになり、その頃から妙に大人びた雰囲気になっていた。実際に本当に同い年なのかと思うぐらいに成長が早く、それに変わった友人も多かった。


「帝国の英雄は言葉通りに何度も帝国の危機を救った凄い御方でござる。火竜を打ち滅ぼし、地竜を圧倒的な力で粉砕し、果てには水竜や白竜さえも滅ぼしたと言われている御方でござる」
「竜種にいったい何の恨みがあったのその人は……」
「他にも紛争状態だった国を救ったり、魔王軍と呼ばれる存在を殲滅し、遂には異世界へ戻る手段を見つけ出して自分の国へと帰ったそうでござる」
「へえ、そうなのか……え、ちょっと待て、今なんて言った!?」
「え?えっと、自分の国へ戻った……?」
「それだ!!異世界へ渡る方法があるの!?」


ハンゾウの言葉にレナは立ち上がると、彼女は戸惑いの表情を浮かべ、他の客たちも何事かと視線を向ける。だが、レナとしては地球へ戻る術を見つけ出したという話に無視できるはずがなく、彼女の両肩を掴んで顔を近づける。


「ハンゾウ!!その帝国の英雄の事をもっと詳しく教えて!!」
「か、顔が近いでござるよ!?」
「いいから早く聞かせて!!その英雄はどうやって元の世界へ戻った!?」
「あううっ、落ち着いて……」
「おいおい、兄ちゃん落ち着けよ。そこの姉ちゃんが困ってるだろ」
「そうだぞ、こんな公衆の面前で何をおっぱじめる気だ」


レナに顔を近づけられたハンゾウは珍しく頬を赤らめると、顔を反らす。このようにレナと接触する機会など実は初めてだった彼女は照れているらしく、仕方なくレナはハンゾウを落ち着かせるために離そうとした時、不意に出入口の方角から怒声が響く。


「あ~!!て、てめえっ!!こんな所にいやがったか!!」
「えっ?誰、あんた?」
「くそ、忘れたとは言わせないぞ!!お前のせいでこっちは大損だ!!」


姿を現したのはレナの見覚えのない人物であり、スキンヘッドの頭に金剛力士像のような刺青を掘った男が近寄ってきた。レナは顔をよく見ても思い出す事が出来ず、ハンゾウが代わりに答えた。


「この男、さっきの武芸小会でレナ殿が敗北する方に賭けていた男でござる」
「くそ、そういう事だよ!!お前がカンエンの奴に勝っちまったせいでこっちは大損だ」
「知るか、喧嘩なら後にしろ。こっちは取り込み中だ」
「何だとてめえ……ひっ!?」


絡んできた男性に対してレナは瞳を鋭くさせると相手の男はたじろぎ、あまりの気迫にまるで大型の肉食獣に睨まれているような感覚に陥る。今のレナはハンゾウから元の世界へ戻る手がかりを聞くのが重要であり、ハンゾウに振り返ろうとすると、再び出入口の方向から声が響く。


「おいおい、ガキ相手に何をびびってんだ」
「ひっ!?お、親分……!!」


居酒屋の出入口の方から野太い声が響き、巨人族の男性が頭を下げて天井にぶつからないように入り込む。身長は3メートル程度で随分と年老いており、片足が義足なのか木の棒を括りつけていた。木造製のパイプを抱えており、先にレナにちょっかいをかけていた男の頭を掴む。


「悪いね兄さん、うちのもんが迷惑をかけたようだ」
「……いや、気にしてません」
「そうかい?だが、こっちとしても謝らないと気が済まねえ。おい、さっさとこの兄さんに謝れ!!」
「す、すいませんでした!!」


親分という男の言葉にスキンヘッドの男はその場で土下座を行い、その様子を見たレナは眉を顰め、一方で巨人族の男性は面白そうな表情を浮かべた。
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