不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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S級冒険者編

仮想空間

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「やるなホネミン……なら、俺も久々にこれを使うか」


レナは大剣を手放すと両手に意識を集中させ、久々に氷塊の魔法を発動させて「氷の長剣」を作り出す。


「氷装剣!!」
「おおっ、久々に見たなそれ……シャドウ・スリップ!!」
「ギィアッ!?」


氷装剣を作り出す間、ダインは初歩の影魔法を使用してゴブリンの足元を振り払い、時間稼ぎを行う。その間にレナは両手に握りしめた氷装剣に「形状高速変化」を発動させ、刃に振動を加えて敵を切り裂く。


「はああっ!!」
「ギギィッ!?」
「わあっ!?凄いレナ君!!」
「……切れ味は中々ね」


元々手にしていた大剣ではなく、氷の剣を使用した瞬間にレナの剣の切れ味が増した事にミナとシズネは驚き、次々とゴブリンを切り払う。最初に深淵の森でゴブリンを倒していた時の事を思い出しながらもレナは剣を振り抜き、不意にある事に気づく。


(死体がない?どういう事だ?)


先ほどからレナ達は相当数のゴブリンを倒しているはずなのだが、何故かゴブリンの死骸は存在せず、切り捨てた瞬間にゴブリンが光の粒子と化して消えてしまう事を知る。レナはこの状況、それに自分たちの格好を見て何か違和感を感じ取り、ホネミンに振り返った。


「ホネミン、これってもしかして……」
「ええ、私も違和感を抱いていました……恐らくですけど、私達が存在するこの場所は現実世界ではありません!!」
「はあっ!?な、なにを言い出すんだよ急に……」
「現実ではない?なら、私達は幻でも見せられているというの!?」
「似たような物です!!恐らく、ここは仮想空間……今の私達はきっと本物ではなく、アバターです!!」
「あばたぁっ……それってどういう意味!?」
「要は分身みたいな物ですよ。ここは現実世界でないし、私達の肉体も本物ではありません!!」
「何を言っているのか全然分からないんだけど!?」
「ああもう、地球の知識がない人に説明するのは難しいですね!!」
「今は倒す事に集中しよう!!」


ホネミンの説明を受けてもシズネたちには理解できず、実際にレナもホネミンもこの状況を完全に把握しているわけではない。しかし、いくら倒しても死体さえ残さずに消えていくゴブリン、そして現在の自分たちの格好、更には空中に現れた武器、これらを踏まえた上でレナとホネミンの脳裏には「仮想世界」という言葉が思い浮かぶ。

レナが転生する前には既にVRゲームは一般的にも扱われており、精神を完全にゲームの世界に入り込むという技術はまだ到達していなかったが、現在の状況が正にVRゲームを遊んでいた状況と酷似していた。それに先ほどから脳内に聞こえてくる声の事もあり、レナとホネミンはここが現実ではないとい確信した。


「こいつでラスト!!」
「ギャアアッ!?」
『殲滅を確認、第一フェーズを終了します』


最後のゴブリンを倒した瞬間、再び脳内に声が響き渡ると、直後にレナ達の周囲の光景が一変した。先ほどまで草原に存在したはずのレナ達だが、今度は視界が真っ黒に包まれ、自分たちの姿だけが不思議と認識できた。第一フェーズが終了という言葉にレナとホネミンは顔を見合わせ、今現在の状況を話し合う。


「第一フェーズが終了ですか……レナさん、これはもしかすると」
「ああ、多分だけど……」
「お、おい……ここ、何処だよ!?何で真っ暗なのに皆の姿だけはっきりと見えるんだ?」
「変な感じがする……」
「皆、離れては駄目よ……そこの二人も傍に来なさい」
「ぬうっ……」
「な、何か怖いよ……」


レナとホネミン以外の者たちはこの状況についていけずに警戒心を高め、一か所に集まる。その様子を見てレナとホネミンは皆の元へ移動し、現在の自分たちに何が起きているのか推測を交えて説明しようとした。


「皆、聞いてほしい。多分だけど、さっきの奴らみたいにまた新しい敵が出てくると思う」
「は、はあ?なんでそんな事が分かるんだよ?」
「さっきの声は第一フェーズが終了したと言っていたからですよ。第一……という事は、これから「第二フェーズ」が開始されるんではないでしょうかね?」
「だいにふぇーず?ど、どういう意味なの?」
『しばらくお待ちください、第二フェーズへの移行を準備しています』
「うわ、また声が頭の中に響いてきたっ!?」
「……でも、この声少し変……抑揚がない」
「明らかに機械音声ですね……つまり、普通の人間の声ではない」



先ほどから聞こえてくるレナ達の声は機械音声のように感情が感じられなかった。そしてレナとホネミンの嫌な予感は的中し、第一フェーズだけではなく第二フェーズが開始されようとしていた。


『第二フェーズの移行の準備が整いました。これより、戦闘訓練を再開します』
「戦闘訓練!?ど、どういう意味だよ!?」
「喋っている暇はなさそうよ……来るわっ!!」


脳内に聞こえる声にダインは戸惑うが、シズネが剣を握りしめると、強烈な閃光が空間内に走った。そしてレナ達の視界が回復すると、そこには先ほどの草原とは打って変わり、今度は荒れ果てた廃墟の街が映し出された。周囲の風景の変化にレナ達は戸惑う余裕もなく、次の「戦闘訓練」の相手が現れる。
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