不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,045 / 2,091
真・闘技祭 予選編

ヨシテルの提案

しおりを挟む
「まさか和国の剣士も一刀両断を扱える奴がいるとは……正直、驚いたよ」
「や、奴!?レナ殿、この御方をどなたと心得ているのですか!!」
「いえ、良いのですよ。今は敵同士、立場など関係はありませんよ」


レナの言葉にカンエンは憤慨するが、そんな彼女をヨシテルは制すると改めてレナと向かい合う。それだけで二人の間に緊迫した雰囲気が漂い、他の者達も圧倒される。しばらくの間は互いに見つめ合っていたが、やがてレナは何かを思い出したように武器を収めると倒れているハルナの元へ向かう。

自分との戦闘の際中に剣を納めてハルナの元に向かったレナに対してヨシテルは意外そうな表情を浮かべるが、倒れているハルナの様子を調べ、彼女の切り落とされた腕を拾い上げてレナは傷口に繋げる。そして回復魔法を発動させ、治療を行う。


「ハルナ、生きているか?」
「うっ……くそ、あの男女め……」
「それだけ減らず口が叩けるなら大丈夫そうだな」


回復魔法によってどうにか腕を繋げる事に成功し、同時にハルナは意識を取り戻す。相当に血を流したようなのでこのままだと危険な状態だが、今はこれ以上に治療をする余裕はない。ちなみにレナの回復魔法は失った手足の再生は出来ないが、今回の場合は傷口を繋げるだけなので特に支障はなかった。


「何の真似ですか?彼女は敵なのでしょう?その方に情を抱いたのですか?」
「この予選の間は手を組む事を約束したからな。それにハルナのお陰であんたの剣技を見抜く事が出来た……次は俺も本気で行かせてもらう」
「本気?今までは本気ではなかったと?」
「嘘だと思うなら試してみるか?」


レナは背中の大剣に手を伸ばしてヨシテルと向かい合う。両者は対峙すると、先ほどよりも威圧感が増した二人に他の者達は冷や汗を流す中、やがてヨシテルの方が刀を鞘に納めて笑みを浮かべる。


「いえ、ここまでにしておきましょう……このまま貴方と戦うと我が「秘剣」までも他の人間に見られてしまいそうですね」
「……まだ奥の手があるのか」
「ええ、ですが今は見せるつもりはありません。皆様、お騒がせしました。我々はもうここを去ります、本選で会いましょう」
「何!?もう戦わんのか!?」


ヨシテルの発言にゴウライは驚き、彼女としてはヨシテルと戦うつもりだったのだが、レナが間に入ったので戦いに割り込む暇がなかった。そんなゴウライに対してヨシテルは笑みを浮かべ、他の者達にも振り返って提案を行う。


「皆様も闘技場に向かう事をお勧めしますよ。こんな予選で互いに潰し合うよりも、本選で堂々と武人らしく一騎討で戦おうではありませんか」
「武人らしく、だと?」
「勿論、私の提案が受け入れられないというのであればこのまま戦い続けても構いません。ですが、予選を開始されてから相当な時間が経過しています。このままでは本選に出場する前に失格となってしまいますよ。それでは各国の代表の皆様も恥をかく事になるのではないでしょうか?」
「むうっ……」


この場には国の代表選手も多く、もしも代表に選ばれ場ながら予選も突破できない事態に陥れば確かにヨシテルの言う通りに恥をかく事に等しい。また、各々が武人として敵と戦うのならば一騎討ちで仕留めたいという気持ちも少なからずあった。

自分の提案を聞いて他の者達が顔色を変えたのを確認するとヨシテルは微笑み、倒れているヨクヒをカンエンに任せて彼は闘技場へと向かう。その様子をハルナの肩を抱えたレナは見送ると、最後にヨシテルは告げる。


「そうそう、言い忘れていましたが……私は王妃サクラ殿とは良き友人でした」
「何だって……?」
「王妃殿の最期を聞いたときは悲しみましたよ。先代国王よりもあの御方の方が余程国を発展させたでしょうね」
「…………」
「では、失礼します」


まさか王妃の名前が出るとは思わなかったレナは闘技場へ向けて歩いていくヨシテルの姿を見送り、正直に言えばいけ好かない相手だと思った。しかし、ヨシテルの提案を聞いた者達は戦意を失ったらしく、ゴウライは真っ先に大剣を背中に戻す。


「うむ、決めたぞ!!吾輩もやはり一人で戦う方が好きだ!!それにお気に入りの兜を切り捨てられた借りを返さんとな、吾輩も本選に出場させてもらうぞ!!」
「……命拾いしたな」
「……こちらの台詞だ」
「レナ、ダイン……本選で戦おう」
「お、おう……あの、僕と戦う時は出来ればお手柔らかに」


ヨシテルの後を追うようにゴウライとクレナイも続き、ギガンとゴンゾウも武器を下ろして闘技場へと向かう。その様子を見てダインとジャンヌは安堵するが、レナとハルナの方はヨシテルに良いところを持って行かれた様に感じて気に入らない。


「……なあ、レナ。助けてくれてありがとうな」
「本当に感謝してるのなら離れろよ……おっぱいを押し付けるな」
「へへ、悪いな……闘技場まで運んでくれよ、まだちょっと本調子じゃないんでな。それと悪いんだけど、あれもついでに回収してくれるか……?」


ハルナはレナの背中にしがみつき、胸元を押し付けながらもサンドワームの死骸を指差す。彼女の行為にレナは不思議に思うと、サンドワームの死骸を確認して素材を回収して欲しい事を知る。どうやらハルナも諦めるつもりはないらしく、本選に出場するつもりらしい。
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。