不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭 予選編

最強の忍

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『中の様子をもう少し探るか……宿客に偽装したオチバの連絡はまだか?』
『…………』
『おい、どうした?早く連絡を……なっ!?』


緑影の隊長を務める「リド」は他の隊員の返事がない事に疑問を抱き、彼は自分の傍に控える副隊長に視線を向ける。しかし、そこには屋根の上で倒れる副隊長の姿が存在し、彼は驚いて腰に差していた剣に手を伸ばす。


(馬鹿な!?いったい何時の間に……!?)


自分が気づかないうちに傍に控えていた副隊長が倒されていたという事実に戸惑い、しかも他の隊員とも連絡が繋がらい。風の精霊を通しての連絡だったので他の人間に気付かれるはずがないはずだが、連絡が取れない以上は他の隊員もやられている可能性が高かった。

リドは短剣を引き抜き、周囲の様子を伺う。彼は「見隠しのマント」と呼ばれる隠密性を強化する魔道具を身に付けているため、仮に気配感知などの技能を持つ者でも見つける事は出来ない。仮にスライム以上の感知能力を持つ存在だとしても、一瞬の間に他の隊員を仕留めるなどの芸当が出来るはずがない。


(何処だ、何処に隠れている……?)


短剣を逆手に構えてリドは周囲の様子を伺い、撤退するか否かを考える。既に倒された緑影は見捨てる事になるが、暗殺者として育てられた以上は仲間を見捨ててでも入手した情報を主人に送り届けるように教育されたリドは撤退を選択した。


「くっ……」
『逃がすかよ』
「うおっ!?」


別の建物に飛び込もうとした瞬間、リドは足首を掴まれて屋根の上に引き留められる。そして彼は何時の間にか自分の背後に存在した男に気付き、恐怖を抱く。目の前に男が立っているのは確かだが、その男はまるで気配を感じさせず、それどころか風の精霊でさえも男の存在を認識していないかのようにリドに警告を送らなかった。

深夜の時間帯とはいえ、今夜は月の光が街を照らし、更に言えばリドは「暗視」の技能も備わっている。しかし、何故か目の前に立っている男の姿は輪郭しかとらえきれず、まるで人型の姿をした黒色の物体が目の前に立っているようにしか見えない。声は男性の声色なので男だと思われるが、正確な容姿は捉え切れないので断定はできない。


「な、何者だ……!?」
『それはこっちの台詞だ……と言いたい所だが、お前等のその恰好は緑影だな?どうしてヨツバ王国の隠密組織がここにいる?』
「くっ……離せっ!!」


リドは短剣を振りかざし、自分の足首を掴む男の腕を斬ろうとした。だが、どういう事か刃は男の腕に触れた瞬間に勢いを失い、それ以上に突き刺せない。リドは必死に短剣を何度も振りかざすが、何度切りかかろうと突き刺そうと男の腕には突き刺さらない。


「ば、馬鹿なっ……貴様、悪霊か?」
『怪異扱いとは酷いな……まあ、俺を初めて見た人間はいつもあんたみたいな反応をするよ』
「くっ、この化物がぁっ!!」


風の精霊を呼び集めたリドは掌を差し出すと、至近距離から魔法を発動させ、男を吹き飛ばそうとした。風の精霊の力を借りているので威力も強化されたが、リドの足を掴む男は真正面から強烈な突風を受けても怯まず、逆にリドの足を引き寄せる。


『無駄だ、俺にその程度の魔法は効かない』
『ば、馬鹿なっ!?有り得ん、精霊魔法が効かないなど……ぐふっ!?』
『大人しくしていろ』


男はリドの首元を掴むと、手首から先が形を変化させ、輪っかのように変形させるとリドの首元を締め付ける。その結果、リドは必死に暴れるが徐々に首元を締め付ける黒色の輪によって意識を失い、やがて力なく倒れ込む。

リドを気絶させた男は彼の身体を抱えると、傍に倒れていた副隊長の男の身体を持ち上げ、宿屋の路地裏に移動して横たわらせる。既に二人以外にも宿屋の周辺に待機していた他の者達も先に並んで倒れており、その様子を確認した男は自分の纏っていた「闇の魔力」を解除した。


「任務完了……今日は良い酒が飲めそうだ」


姿を現したのはまだ20代前半と思われる男性であり、彼は倒れている緑影の集団を見下ろすと、上司に報告すれば褒美が貰えるだろうと笑みを浮かべる。彼の服装はカゲマルの者とよく似ており、顔立ちの方も彼と酷似していた。彼の右肩には「手裏剣」を想像させる家紋が刻まれていた。



――彼の名前は「サスケ」和国に仕える忍びの中でも「最強」と謳われ、あのカゲマルの実の弟でもあった。ハンゾウとは兄妹弟子の関係でもあり、現在はヨシテルの直属の配下でもある。ヨシテルの身辺警護を行い、彼に近付く者は何者であろうと排除するのがサスケの役割だった。



ヨツバ王国の緑影は世界各国の隠密組織の中でも非常に優れた存在なのは間違いない。しかし、そんな緑影をまるで子供扱いするほどの高い実力を誇り、しかも彼は闘技祭の参加者でもあった。代表選手として選ばれたわけではなく、一般人として紛れて参加した彼の存在は未だに誰も知られていない――
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