不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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世界の異変編

受け継がれし才能

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「少しいいか?」
「…………」


ゴンゾウが話しかけても少年は返事も返さず、最初は鍛錬に集中し過ぎて気付かなかったかと思ったゴンゾウだったが、ここで驚愕の事実に気付く。それは少年に近付くと寝息のような声が聞こえ、あろうこと少年は眠りながら鍛錬を行っていたのだ。


(馬鹿な……寝ているのか!?)


彼の行っている鍛錬は肉体にかなりの負荷を与えるはずだが、少年は眠りながら行っていた。眠った状態で鍛錬などゴンゾウですらも出来ず、彼は戦慄した、意識を失いながらも肉体を鍛え続ける少年にゴンゾウは冷や汗をかく。

眠っている少年に対してゴンゾウは気が引けたが、どうしても彼と話がしたいと思ったゴンゾウは少年に手を伸ばす。だが、彼の肩に触れた瞬間、思いもよらぬ行動を移す。


「はっ!!」
「ぐうっ!?」


少年の肩に触れた瞬間、彼は目を見開くとゴンゾウの手を振り払い、回し蹴りを放つ。その蹴りをゴンゾウは咄嗟に左腕で受けたが、思っていた以上に衝撃が走り、軽く腕が痺れた。仮にも巨人族である自分に痛みを覚えさせるほどの打撃を繰り出した少年にゴンゾウは更に驚かされるが、少年の方はゴンゾウを見て戸惑う。


「え?あっ……すいません。失礼しました、怪我はしてないですか?」
「あ、ああ……すまないな、鍛錬中に」
「いえ、起こしてくれてありがとうございます。最近は碌に眠れなかったのでついうたた寝しちゃって……」
「そ、そうか……」


鍛錬中に居眠りなど相当に疲労が溜まっているのかと判断したゴンゾウは少年を責めたりはしない。そもそも自分が勝手に触った事が問題であり、ゴンゾウは改めて少年と向かい合う。

外見はゴンゾウが出会ったばかりの頃のレナと同じぐらいの身長であり、の方も当時のレナと同じぐらいだと思われる。しかし、眠りながら鍛錬をしたり、ゴンゾウですらも痛みを覚える程の打撃を繰り出せるという点では当時のレナにも劣らない力を持っている。


「名前を教えてくれるか?俺の名前はゴンゾウだ」
「知ってますよ、牙竜の冒険者の中でも一番有名ですからね。S級冒険者にも最近昇格したとか……僕の名前はミレトです」
「ミレト、か……」


少年の名前を聞いてもゴンゾウは聞いた事もなく、これだけの力を持つなら存在なら少しぐらいは名前が通っていてもおかしくはないのだが、ミレトという名前に心当たりはない。


(この子供……どこかで見たような気がするな)


ミレトと顔を合わせるのはゴンゾウは初めてのはずだが、何故か彼を見ていると誰かと似ているような気がする。しかし、その誰かに関しては思い出す事は出来ず、少なくともゴンゾウとは親しい間柄の人間ではない。

一方でミレトの方はゴンゾウに起こされて少し眠たそうな表情を浮かべていたが、ここで彼は何かに気付いたように振り返り、槍に手を伸ばす。そのミレトの行動にゴンゾウは不思議に思うと、ミレトは叫ぶ。


「魔物だ!!魔物が来るぞ!!」
「何!?」
「ま、魔物だと!?」
「何処だ、何処から現れた!?」


唐突に大声で騒ぎ始めたミレトに周囲の者達は慌てて食事を中断すると、直後に草原の方から大量に動く影が出現し、夜闇に紛れて魔物の集団が現れた。


『プギィイイイッ!!』
「この声は……オークの群れだ!!オークが責めてきたぞ!!」
「ちっ、面倒だな……こいつらをぶっ倒して肉鍋にするぞ!!」


この城壁の守護を任されている牙竜の冒険者は強きな性格の人間が多く、オークの群れを見ても怯まずに対処を行う。ゴンゾウも戦闘の準備を行うが、ここでミレトは槍の刃先に包んでいた布を引き剥がすと、それを露にする。その槍を見た瞬間、ゴンゾウは思い出した。


(この槍は……まさか!?)



――ミレトが手にしていた槍の正体はかつて大将軍のミドルが所持していた「ロンギヌス」と呼ばれる魔槍で間違いなかった。聖剣に匹敵する力を誇り、これを扱えるのは世界でもミドルだけだと思われた槍をミレトは手にする。

どうして彼がロンギヌスを持っているのかとゴンゾウは混乱するが、その間にミレトは槍を手にした状態で城壁から躊躇なく飛び降りる。その行動にゴンゾウは驚き、慌てて声をかけた。


「何をっ……!?」
「先に行きます」


ゴンゾウが見下ろすと、そこには城壁に対してロンギヌスの刃を伸ばした状態で降下するミレトの姿が存在した。ミレトは刃を城壁の壁に食い込ませて降下速度を落とし、やがて地上へと降りたつ。

わざわざ城壁から下りてきたミレトに対してオークの群れは呆気に取られるが、すぐに獲物の方から下りてきた事に笑みを浮かべ、オークの集団が彼へと襲い掛かる。


『プギィイイイッ!!』
「いかん!!」


ミレトに向けて多数のオークが迫る光景を見てゴンゾウは自分も下りて彼を守ろうとしたが、その前にミレトはロンギヌスの槍を構えると、目つきを鋭くさせ、途轍もない速度で槍を繰り出す。


「刺突・乱」
「プギャッ!?」
「フガァッ!?」
「グエッ!?」


ミレトが繰り出した槍は残像を生み出す程の速度で放たれ、接近してきたオークの急所を貫く。心臓、頭部、喉を貫かれたオークの死体が地面に転がり込む光景を見たゴンゾウは戦慄した。今の彼の姿は大将軍であるミドルの姿と酷似していた。
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